表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
175/201

■第172話 王都奪還編 街の問題と計画書

問題は、見ようとすれば見える。

見ようとしなければ、見えない。

四人は、見ようとした。


■探索

翌日、四人は手分けして街に出た。

さくやは城下町のインフラを調べて回った。石畳の大通り、橋、建物の基礎。道路や橋はしっかりしていた。軍の荷車が通るせいか、整備が行き届いている。

「道はええな」さくやが頷く。「でも……」

路地に入ると、様子が変わった。排水溝が詰まりかけている。建物の壁に水染みが広がっている。地下に潜ると、配管が複雑に入り組んでいた。古い管と新しい管が混在し、継ぎ目が傷んでいる箇所が何カ所もある。

「水回りが、全然追いついとらへん」

エレナは医療施設を回った。設備は揃っている。診療の体制も整っている。施設自体に問題はなかった。ただ、話を聞くうちに気になることが出てきた。

「上水道と下水道、問題は別々です」エレナが静かに言う。「上水道はろ過設備が不足しており、配管の老朽化で供給量が落ちています。病院や学校といった施設への供給が特に足りていない。下水道は老朽化による詰まりと逆流が主な問題です。汚水管は深い位置にあるので上水とは別系統ですが、雨水処理管が老朽化で上水管と合流している箇所があります。大雨の後に水質が急激に悪化するのはそのためです」

「施設は問題ないけど、水が足りていないということですか」レイナが確認する。

「そういうことです」エレナが頷いた。「設備があっても、水の質と量が伴わなければ意味がない」

レイナは市民の声を聞いた。井戸の前で並ぶ者、路地で洗濯する者、食堂で静かに食事をとる者。一人ひとりに声をかけると、皆が少しずつ話してくれた。

「昔はもっと水が綺麗やった」

「修繕を頼んでも、いつも後回しにされる」

「井戸の水が最近濁っている」

ユーリは街の高台から全体を見渡した。城を中心に放射状に広がる街の構造、水路の流れ、人の動き。高いところから見ると、水回りの問題がある場所が地図のように浮かび上がってくる。

夕方、四人は宿に戻り、情報を持ち寄った。

「道路や橋は問題ない」さくやが地図に書き込みながら言う。「問題は全部、水や。上水道の老朽化、雨水管の合流、施設への供給不足。予算が来んから整備が追いつかへん、それだけや」

「修繕予算が流用されているからです」エレナが続ける。「設備も人手もある。ただ、お金が来ない」

「ファリダさんが三年間言い続けてきたことや」レイナが静かに言う。

ユーリは地図を見つめたまま言った。

「解決策を作ろう」


■計画書

その夜から、四人は作業を始めた。

さくやが全体設計を担当した。老朽化した配管の交換ルート、雨水管と上水管の分離工事、ろ過設備の増設場所、修繕の優先順位。地図に線を引き、数字を書き込んでいく。

エレナが解析を担当した。上水道と下水道それぞれの問題を分けて数値化し、修繕コストと工期を見積もる。施設への供給量回復にどれだけの工事が必要か、優先度を整理していく。

レイナは市民への影響をまとめた。どの地区が最も水不足に苦しんでいるか、どこから手をつければ最も多くの人が助かるか。

ユーリは高台からの視察データをもとに、全体の優先順位を整理した。

夜が明ける頃、計画概要書が完成した。

「これ、ファリダさんに見せよう」さくやが言った。


■ファリダの反応

翌朝、四人はファリダを訪ねた。

さくやが計画概要書を差し出す。

ファリダは受け取り、黙って読み始めた。最初の一ページ、二ページ、三ページ。どんどんページをめくっていく。途中から目が大きくなった。

しばらくして、顔を上げた。

「……これ、わたくしが三年間言い続けてきたことです」

「知っとります」さくやが言う。「ファリダさんから聞きましたから」

「でも、こんなに具体的に、上水と下水を分けて、施設への影響まで数字で整理されたのははじめてでして、わたくし、こういうものが欲しかったんです、王様に見せるには感情論ではなく数字が必要で、でもわたくし一人では手が回らなくて、それが三年間で、あの」

ファリダは少し黙った。

「ありがとうございます」

「これから一緒に具体の計画を練りましょう」エレナが言う。「概要書はあくまで出発点です」

ファリダは書類を胸に抱え、大きく頷いた。

「はい、やります、全力でやります、正直に申し上げるとこんなに心強いと思ったのは生まれて初めてです」

さくやは笑った。

城下町の朝が、静かに動き始めた。




#小説 #ショートショート #ファンタジー #創作 #冒険 #王都 #陰謀 #ほっこり #キャラクター小説 #読書好きと繋がりたい


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ