■第169話 オアシス救出編 砂漠に別れを告げる
旅は続く。
でも、ここで出会ったものは消えない。
砂漠の風が、それを教えてくれた。
■朝
完成から一夜明けた朝。
四人は荷をまとめていた。白きラクダが砂の上に伏せ、ポニーが鼻を鳴らす。ドーベルマンはユーリの隣で静かに座っていた。
ハリムが近づいてきた。
「もう行くんか」
「ああ」さくやが荷を背負いながら答える。「王族の都市を目指す。マルコナの問題、根っこから断たんとあかんからな」
ハリムは頷いた。
「俺はここに残る」
「分かっとる」さくやが言う。「この砂漠、ハリムさんがおらんと回らへん」
■ハリムの言葉
村を見渡せる高台に、五人で立った。
四つの村を繋ぐ道路が砂漠を走り、各村の井戸から朝の光が反射している。砂壁の見張り台に村人が立ち、穏やかな朝が始まっていた。
「お前たちが来る前、この砂漠に希望なんてなかった」ハリムが静かに言う。「マルコナに脅され、仲間を失い、村人から憎まれながら、それでも諦めへんかったのは……いつかこんな景色が見られると信じとったからや」
誰も何も言わなかった。
「お前たちのおかげで、夢が形になった」
さくやは砂を踏みしめながら言う。 「ハリムさんが諦めへんかったからや。ウチらはちょっと手伝っただけや」
「ちょっとやないやろ」ハリムが苦笑する。「地下道掘って、爆弾作って、井戸四本掘って」
「言われてみたら結構やったな」さくやも笑った。
■ドーベルマン
荷を整え終えた時、ドーベルマンがユーリの前に来て伏せた。
ユーリはしばらく黙って、その頭に手を置いた。
「一緒に来るか」
ドーベルマンは鼻を鳴らした。
「……ここに残れ」ユーリが静かに言う。「この村を守ってくれ」
ドーベルマンは動かなかった。ユーリは目を細め、もう一度頭を撫でた。
ハリムが静かに言う。 「俺が面倒見る」
ユーリは頷いた。
■別れ
村人たちが見送りに集まった。
さくやが振り返り、村人たちを見回す。 「また来るで。その時はもっとええ土産持ってくる」
村人たちが笑った。
レイナが手を合わせる。 「神様が、この村をずっと守ってくださいますわ」
エレナが静かに言う。 「データは全部置いていきます。次の工事の時に使ってください」
ユーリは何も言わず、ただ一度だけ振り返った。
ハリムはさくやの前に立った。
「王族の都市は手強いで。マルコナも向かうかもしれへん」
「分かっとる」さくやが答える。
「気をつけてくれ」
「ハリムさんこそ」
二人は短く笑った。
白きラクダが立ち上がり、ポニーが歩き出した。四人は砂漠の道を進む。ドーベルマンが吠えた。一度だけ、大きく。
さくやは振り返らなかった。ただ、少しだけ歩く速度が落ちた。
砂漠の風が吹き、道路の向こうに陽炎が揺れた。王族の都市は、まだ遠い。
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