■第168話 オアシス救出編 砂漠の基地
証拠は消えた。
でも、戦いはまだ終わっていない。
次の一手を、どう打つか。
■爆発の余波
爆発から一時間が経った。
砂漠の向こうから、砂埃が上がった。マルコナ軍の兵士が様子を見に来たのだ。
四人とハリムは工事現場で何事もなかったように作業を続けた。白きラクダが荷を運び、ドーベルマンが砂の上に伏せている。
兵士が近づいてくる。
「近くで爆発があった。お前たち、何か知らないか」
ハリムは顔を上げ、少し考えるそぶりを見せた。
「爆発か。掘削中に地下のガスに引火することがある。井戸に影響がなくて良かったわ」
「そうか」兵士は周囲を見回した。「あの方向に何かあったか」
「何かあったんか?」ハリムが聞き返す。「砂漠やと何があっても不思議やないけどな」
兵士はしばらく黙っていた。
「……いや、砂漠や」
それだけ言って、引き返していった。
ハリムは背中を見送り、静かに息を吐いた。
さくやが小声で言う。
「……向こうも言えへんのやな」
「言えるわけがない」ハリムは静かに答えた。「牢があったことを認めたら、何を隠しとったか全部バレる」
■直談判の提案
天幕に戻ると、さくやが地図を広げた。
「マルコナの悪事を王に直接訴えに行こう。帳簿もある。証言もできる。王が真実を知れば、マルコナを切り捨てるはずや」
沈黙が落ちた。
ハリムが首を振った。
「無理や」
「なんで」
「王はマルコナを信じ切っとる」ハリムは静かに言う。「命の恩人やと思っとる。俺たちが何を言っても、マルコナの言葉一つで全部ひっくり返される。下手に動いたら、また村が焼かれる」
「今は力を蓄える時期や」ユーリが短く言った。
さくやは地図を見つめたまま、しばらく黙っていた。
「……分かった」
■四つのオアシスを繋ぐ
「ほな、やることは決まっとる」さくやが顔を上げた。「四つのオアシス村のインフラを整備する。道路、井戸、防衛。全部や」
エレナが設計図を広げる。
「四つの村を道路で繋ぎ、物資と人が自由に動けるようにする。井戸は各村に大型のものを一基ずつ。水が確保できれば、村の自立度が上がります」
「防衛はどうする」ユーリが聞く。
「マルコナ軍が来ても対応できる構造にする」さくやが設計図に書き込みながら言う。「村の外周に砂壁、見張り台、緊急時の避難路。攻めるんやなく、守れる拠点を作る」
ハリムが頷く。
「予算は心配いらん。四人の商人の資金を合わせたら、相当な額になる。仲間が逃げる前に全部預けていった」
さくやが目を丸くする。
「……それも手配済みやったんか」
「商人やからな」ハリムは静かに笑った。
■工事
それから数日間、四つのオアシス村で同時に工事が始まった。
道路は砂丘を避けながら最短距離で結ばれ、掘削機が唸りを上げて井戸を掘り進める。村人たちも加わり、砂漠に活気が満ちた。
さくやは現場を走り回り、段取りを組む。エレナは数字で全てを裏付け、レイナは村人の声を聞きながら設計に反映させる。ユーリとドーベルマンは道路の測量と周囲の警戒を担った。
ハリムは物資の調達と配分を仕切った。長年砂漠で培った商人の目が、無駄なく資材を動かす。
「この井戸、岩盤が硬すぎる。掘削刃がすぐ磨り減る。交換のペースが追いつかへん」さくやが叫ぶ。
「手配済みや」ハリムがすぐに答えた。「替えの刃は十分ある。明朝また届く」
「さすがや」
「商人やからな」
工事が進むにつれ、村人たちの表情が変わっていった。水が出るたびに歓声が上がり、道路が繋がるたびに隣の村から人が訪れた。
「こんなに人が来たのは初めてや」村人の一人が目を潤ませる。
■完成
十日後、四つのオアシス村が繋がった。
道路は砂漠を縦横に走り、各村に新しい井戸が完成した。砂壁と見張り台が村の外周を囲み、緊急時の避難路も整備された。
夕暮れ、高台から四つの村を見渡すと、それぞれの村にランプの灯りが灯り始めた。
さくやは腕を組んで眺める。
「……できたな」
「理論値を超えました」エレナが静かに言う。
「神様のお導きですわ」レイナが手を合わせる。
ユーリは何も言わず、ただ砂漠を見渡していた。
ハリムが隣に立った。
「この景色を、ずっと夢見とった」
「仲間と一緒に見られてよかったな」さくやが言う。
ハリムは頷いた。それだけだったが、十分だった。
砂漠の風が吹き、ランプの灯りが揺れた。
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