■第165話 オアシス救出編 四つのオアシスを結ぶ
砂漠に道を刻む者がいる。
水を求めて、仲間を求めて。
小さき者たちの計画が、動き出した。
■ハリムの構想
ハリムの告白から数日が経った。
天幕の中に地図が広げられ、四人とハリムが囲むように座っている。ランプの灯りが揺れ、地図の上に四つの印が浮かび上がる。
「この地域には四つのオアシス村がある」ハリムが指で示す。「俺の仲間と一緒に商売を始めた村や。どこも水不足が深刻で、村同士の行き来もほとんどない」
「道がないから物資も人も動かへん」さくやが地図を覗き込む。「孤立したまま、それぞれが限界を迎えとるんやな」
「そうや」ハリムは頷いた。「四つの村を道路で繋ぎ、大規模な井戸を各村に建設する。それがずっとやりたかったことや」
エレナが地図に定規を当てながら言う。 「村と村の距離、地盤の硬さ、水脈の深さ。全部計算し直す必要があります」
「レイナは各村の現状を把握してほしい」さくやが続ける。「住民の声を聞いて、何が一番必要か整理してくれるか」
レイナは静かに頷いた。 「神様が与えてくださった水を、みんなで分かち合えるようにしたいですわ」
■掘削機
「それと」ハリムがランプの灯りに目を細める。「もう一つ、話がある」
全員が顔を上げた。
「仲間が捕らえられている牢は、ここから一番近いオアシス村からそう遠くない場所にある」ハリムは地図の一点を指した。「井戸工事と並行して……地下道を掘りたい」
沈黙が落ちた。
「地下道」さくやが繰り返す。
「そうや。表向きは井戸工事や。でも同時に横穴を掘り進め、牢の地下まで繋げる」ハリムの声は静かだが、揺るぎなかった。「そのために、これを用意した」
ハリムが天幕の外へ案内すると、砂漠の端に巨大な機械が鎮座していた。高さは四人の背丈を軽く超える。鉄の塊が砂漠の朝日に鈍く光っている。
「大型掘削機や」ハリムが言う。「仲間を助けるために、ずっと前から手配していた」
さくやは機械を見上げ、しばらく黙っていた。
「……ハリムさん、ずっと諦めてなかったんやな」
ハリムは何も言わなかった。
■役割分担
天幕に戻り、四人は役割を決めた。
さくやが地図に線を引きながら言う。 「道路と地下道の設計はウチがやる。二つを同時に進めるには、段取りが全てや」
「解析はわたしが担当します」エレナが手帳を開く。「地盤の強度、水脈の位置、掘削角度。数字で全部裏付けます」
「模型を作りますわ」レイナが静かに言う。「設計図だけでは分からない部分を、形にして確認できるようにします」
三人の視線がユーリに向いた。
「現地踏査」ユーリが短く言う。「牢の周囲の地形、警備の動き、地下道の出口になる場所。自分の目で確かめる」
「危険や」ハリムが言う。「マルコナの軍が周囲を巡回している」
「分かっとる」ユーリは立ち上がった。
天幕の外で、ドーベルマンが静かに伏せていた。ユーリはその背に手を置く。
「こいつと行く」
ドーベルマンは鼻を鳴らした。
■出発
夜明け前、ユーリとドーベルマンは砂漠へ出発した。
さくやは見送りながら、小声で言う。 「気をつけてな」
ユーリは振り返らなかった。ドーベルマンの背に揺られながら、砂丘の向こうへ消えていく。月明かりが二つの影を砂漠に伸ばし、やがて闇に溶けた。
天幕に戻ると、さくやは地図に向かった。エレナが数字を並べ、レイナが小さな模型の材料を広げる。ハリムは掘削機の整備を始めた。
砂漠の夜が明けようとしていた。
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