■第148話 白銀の冒険編 図面ができた
測って、計算して、描いて。
それでもまだ、紙の上の話だ。
でも紙の上に描けた時、初めて夢が形になる。
■計画立案
北の拠点に戻った翌朝、さくやが机に向かった。
測量データがある。三次元の地形モデルがある。中心杭の位置がある。ユーリの勘で修正したルートがある。材料は揃っていた。
「まず全体の計画を整理する」
さくやが地形図の上にルートを引いた。北の拠点からユーリの村まで。谷を越える区間、支柱を立てる三か所、ゴンドラの発着点。大まかな規模と概要をまとめていく。
「支柱はここ、ここ、ここ。ゴンドラは両端に駅を作って、中間に一か所停車できるようにしたい」
「中間停車は荷重計算が複雑になります」エレナが即座に言った。
「できる?」
「……やってみます」
エレナが計算を始めた。ワイヤーの張力、支柱にかかる荷重、風速ごとの揺れ幅。三次元データを参照しながら、数字を積み上げていく。
しばらくして顔を上げた。
「実現できます。ただし中間支柱の基礎を深くする必要があります。ユーリが言っていた春の雪の動きも考慮済みです」
「よし、進める」
■設計図の作成
エレナの検証結果を受けて、さくやが設計図を描き始めた。
支柱の高さ、ワイヤーの角度、ゴンドラの大きさ、駅舎の配置。測量データと計算結果を一枚の図面に落とし込んでいく。線を引いては消し、また引く。
「ここの支柱、もう少し高くした方がワイヤーの角度が安定する」
「同意します。三メートル上げれば張力が均等になります」エレナが答えた。
「じゃあこれで」
さくやが線を引き直した。
図面が形になってくると、エレナが再び計算を始めた。
「安全検証、します」
積雪荷重、地震荷重、風荷重。想定される最悪の条件を全部かけて、それでも耐えられるかを確かめる。
「……安全率、十分です。この設計で問題ありません」
さくやが大きく息を吐いた。「よかった」
■レイナのデザイン
「次はアタシの番ですね」
レイナがスケッチブックを開いた。
さくやの設計図を眺めながら、ゴンドラのデザインを描き始める。丸みを帯びた形、窓の大きさと配置、扉の位置。雪山の中で浮かび上がりすぎないよう、色は白を基調に温かみのある木目を差し込んだ。
「支柱の色はこれで」
レイナが雪原の白に近い色見本を指さした。
「遠目には景色に溶け込みます。でもゴンドラは少し温かみのある色がいいかと。白だけでは寂しいので」
「なんで設計図に色の話が出てくるん」
「画家なので」
さくやは何も言えなかった。
デザインが仕上がると、レイナは模型を作り始めた。
小さな木片を削り、ワイヤーの代わりに細い糸を張る。ゴンドラは紙を折って形を作り、窓を小さく切り抜いた。支柱には雪に見立てた白い粉をまぶした。
「……できました」
机の上に、手のひらに乗るほどの小さなロープウェイが現れた。
さくやとエレナが覗き込んだ。
「ちっちゃ……!」
「でも、ちゃんとロープウェイや」
「ゴンドラ、動きます」
レイナが糸をそっと引くと、小さなゴンドラが模型の谷を渡った。
三人はしばらく黙ってそれを見つめた。
■師匠への提出
「師匠に提出してきます」
さくやが設計図、エレナの計算書、レイナの模型をまとめて持った。
師匠は静かに設計図を広げ、計算書と照らし合わせながら確認した。支柱の位置、ワイヤーの張力、ゴンドラの荷重。それからレイナの模型を手に取り、ゴンドラをそっと動かした。
しばらく沈黙が続いた。
「よく仕上げました」
師匠が静かに言った。
「承認します。爆音社長に資材の依頼を出してください」
「やった!」
さくやが飛び跳ねた。
■爆音社長へ
設計図と計算書と模型の写真を添付して、爆音社長に連絡を送った。
返事は早かった。
『図面と模型見たで。ええやんけ!資材はアタシが手配したる。雪山仕様で寒冷地対応、全部込みで揃えたるわ。待っとき!』
「さすが社長!」
さくやが叫んだ。後発隊がざわめいた。
エレナは返事を読みながら静かに頷いた。「寒冷地対応の資材なら強度の計算も変わってきます。仕様が届いたら確認します」
レイナは模型をそっと棚に置いた。
窓の外では、雪山が静かに白く光っていた。
#小説 #ショートショート #ファンタジー #創作 #日常 #ほっこり #コメディ #キャラクター小説 #冒険 #読書好きと繋がりたい




