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■第128話 市街地再開発偏 JVってなんや

委員会の騒動から、一週間が経った。

街は表向き平穏を取り戻していた。

しかし、巨大な歯車が静かに動き始めていた。


■一週間後

市役所前には以前の静けさが戻っていた。しかし街路の向こうでは測量機器を肩に担ぐ作業員たちが動き回り、遠くから工事車両のエンジン音が聞こえてくる。

委員会が解散し、再開発計画は国の正式事業として引き継がれることになった。


■国家プロジェクト始動

湖の拠点の会議室に、書類の山と設計図の束が積まれていた。

師匠が静かに言った。

「国の正式発注として、詳細設計が動き出します。委員会の解散に伴い、すべてが国家事業として進行することになりました」

さくやが設計図を一枚一枚確認しながら言った。

「師匠……これ、全部チェックせなあかんの?」

「そうだね。みんなの力が必要です」

OLさんが資料の束をトントンと整えた。すでに整理が始まっていた。

社長が腕を組んで壁にもたれた。

「知った風な口を……」

全員が社長を見た。

「……なんでもない」


■三つの戦場

師匠が全体の構成を説明した。

国道改良工事は師匠が直接担当する。鉄道改良は大手鉄道会社とのJVで進める。球場と駅舎の改良は建築設計会社とのJVで進行する予定だった。

さくやが首を傾けた。

「JVって……なんや。二人組のことか」

師匠が口を開こうとした瞬間、社長が割り込んだ。

「知った風な口を……」

「社長、説明できますか」

さくやが聞いた。

社長が少し黙った。

「……できる」

「じゃあお願いします」

また少し黙った。

「……師匠、頼む」

師匠が微笑んだ。

「Joint Ventureの略です。複数の会社が協力して、一つの大きな事業を進めることです」

「なるほど……チームワークですね」

「その通り」

さくやが社長を見た。

「社長、知ってましたか」

「知っとった」

「ほんまですか」

社長がさくやをぽいっと上に放り投げた。

「わわっ」

さくやが落ちてきた。社長が片手で受け止めた。

「余計なこと聞くな」


■コンペ

事業の受注は三段階のコンペで決まる。一次で10社、二次で5社、三次で最終決定。

OLさんが冷静に言った。

「技術力だけでなく、政治的な配慮や複雑な利害関係も考慮しなければなりません」

「油断は禁物ですね」

さくやが続けた。

社長が鼻を鳴らした。

「知った風な口を……」

「社長も同じこと思ってたんですか」

社長がさくやをまたぽいっと投げた。

「わわっ」

マダムが静かに微笑んだ。表立った関与は控えるつもりだった。しかしJV候補の多くが、実はマダムの企業グループと深い関係を持っている。それを師匠はまだ知らなかった。

さくやが落ちてきながら言った。

「ふふ、これからどうなるか楽しみやな」


■人手が足りへん

OLさんは連日、資料整理と日程管理に追われていた。国家事業レベルの書類の量は膨大だった。

さくやも必死に手伝っていたが、30cmの体で扱える資料の量には限界がある。書類の山に埋もれながら、小さな声が聞こえた。

「人手が足りへん……」

社長が書類の山を覗き込んだ。さくやが埋もれていた。

「……なにしてんねん」

「手伝ってます」

「役に立っとるか」

「立ってます」

社長がさくやをつまみ上げてぽいっと投げた。

「わわっ」

「邪魔や。アタシがやる」

社長が書類の山を豪快に仕分け始めた。その手際が恐ろしく早い。

さくやが落ちてきて、呆然と社長を見た。

「……できるんですね」

「当たり前や」

「じゃあ最初からやってください」

社長がさくやをまたぽいっと投げた。

「わわっ」

「うるさい」


■列車模型

その頃、社長の工房には列車模型が並んでいた。

小型から大型まで、様々なサイズが整然と並んでいる。実際の走行を想定した本格的な仕様だった。

さくやが模型を覗き込んだ。

「これ、本当に走るん?」

「走る」

「乗れますか」

「乗るな」

「なんでですか」

「壊れる」

「30cmしかないんですよ」

「それでも乗るな」

さくやがじっと模型を見た。

「……鉄道JVで使うんですか」

「そのつもりや」

「知った風な口を……」

社長がさくやをぽいっと投げた。

「わわっ」

「アタシの言葉を真似するな」


■夜の会議室

夜が訪れても、作業は続いていた。

師匠が最後の書類に目を通しながら言った。

「明日から本格的なコンペが始まります」

さくやが机の上から顔を上げた。

「勝てますか」

師匠が静かに答えた。

「勝ちます」

社長が腕を組んだ。

「知った風な口を……」

さくやが社長を見た。

「社長も勝てると思ってますよね」

「……ああ」

社長が珍しく素直に答えた。

さくやがにやりとした。

「知った風な口を……」

社長がさくやをぽいっと投げた。

「わわっ」

窓の外では夜の虫の声だけが聞こえていた。




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