■第124話 市街地再開発偏 消えるSPたち
深夜のマダム邸に、不穏な風が吹く。
仲間が、一人ずつ消えていく。
それぞれが、闇の中へ動き出した。
■深夜の報告
深夜2時を回ったマダム邸。
応接間でマダムが資料と格闘していた。いつもの優雅な佇まいはどこへやら、鋭い眼差しで一枚一枚のページを食い入るように見つめている。
部屋の四隅に部下たちが控えていたが、誰もが緊張で身体を強張らせていた。
「……マダム」
古株の部下が、震え声で報告書を差し出した。
「SPが、また一名行方不明になりました」
マダムの手が止まる。
「それで何名目?」
「……今週だけで、三名です」
SPたちはマダムの指示で動いていた。海外企業の周辺を調査し、市長との接触を監視し、資金の流れを追う。地道で危険な仕事だった。それが裏目に出た。
「昨夜、OLさんも危険な目に遭われました。帰宅途中、何者かに車で追跡されていたとのことです。なんとか振り切ったそうですが」
マダムはゆっくりと椅子に身体を預けた。
「もう大人しく詮索している場合じゃないわね……」
■爆音社長、現る
そのとき、応接間の扉が静かに開いた。
「おつかれさん」
爆音社長だった。ポケットに手を突っ込み、いつもの笑顔で入ってくる。
「こっちも大変やな。アタシも手伝うで」
マダムが呆れたような、それでいて安堵したような表情で社長を見た。
「協力していただけるなら助かりますわ」
「で、何があったんや」
マダムが状況を説明し始めた。SPの連続失踪、OLさんへの追跡、海外企業の影。社長は話を聞きながら時折「ほうほう」と相槌を打つ。
「新しい鉄道の車両設計もしたかったんやけどな」
「それはいずれね」
マダムの口元に、久しぶりに微笑みが浮かんだ。
■さくやの報告
ドアが勢いよく開き、同時に窓からも小さな影が飛び込んできた。
「師匠、大変やで」
さくやだった。小さな体を震わせながら、息を切らして部屋の中央に駆け寄る。
師匠が静かに声をかけた。
「落ち着いて。まず深呼吸をして」
さくやは大きく息を吸い込み、震える声で報告を始めた。
「SPのお兄さんたちも、OLさんも……みんな狙われてます。今夜、街の向こうで黒い車がうろうろしてて、みんなを見張ってるみたいで」
■一同の見解
マダムが資料を広げ、全員を見回した。
「SPたちが失踪した理由を考えると……」
「海外企業やろな」
社長が静かに言った。
「SPたちは企業の周辺を調査しとった。向こうもそれに気づいて、動いたんやないか」
「失踪するような理由が他にない。あの企業が関与している可能性が高いです」
部下の一人が頷いた。
さくやが唇を噛んだ。
「お兄さんたち、どこにおるんやろ……」
師匠が静かに口を開いた。
「まず居場所を探すことが先決です。ただ……」
師匠が資料の一点を指した。
「この企業の背後に、もっと大きな何かがある気がします。アタシはそちらを追います」
マダムが頷いた。
「わたくしは企業の関与を調査し続けます。証拠を固めないことには動けませんから」
■役割分担
社長がさくやを見た。
「さくや、アタシと一緒にSPを捜しに行くで」
さくやが目を丸くした。
「社長と、二人でですか」
「何や、不満か」
「い、いえ。よろしくお願いします」
社長が片眉を上げた。
「アタシの言う通り動けば大丈夫や。ただ……」
社長がさくやの頭のてっぺんから足先まで眺めた。
「ちっさいな、あんた」
「それが武器なんです」
さくやが胸を張った。
社長が少し考えてから、口元を緩めた。
「……使えるかもしれんな」
師匠が全員を見回した。
「それぞれの持ち場で動きましょう。情報はこまめに共有して」
マダムが立ち上がった。
「では、始めましょう」
窓の外では夜風が木々を揺らしていた。深夜のマダム邸から、それぞれの闘いが静かに動き出した。
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