■第123話 戦国無双編 四国鉄道
線路が、山を越え川を渡る。
四つの国が、一本の鉄路でつながった。
鉄の馬が、煙を吐いて走り出す。
■師匠への相談
翌朝、さくやとジュウベェは師匠のコテージへ向かった。
設計図とレイナの絵図を広げ、さくやが説明する。東の村から三国それぞれへ路線を延ばす。物資と人が行き来できるようにする。同盟の証にもなる。
師匠は静かに設計図を眺めた。
「すぐに始めなさい。爆音社長の援助も借りるといい」
即答だった。
ジュウベェが目を丸くした。
「よろしいのでございますか」
「いい計画だよ」
さくやが拳を握った。
「よっしゃ、行くで」
■爆音社長との打合せ
南西の拠点に着くと、爆音社長がすでに大きな図面を広げていた。
「話は聞いとるで。四国をつなぐ鉄道やな」
「そうです。列車の製造もお願いできますか」
「当たり前やろ。アタシ抜きで誰がやるっちゅうねん」
社長が図面の上に路線を引いていく。東の村から紀州、奥州、甲斐への三路線。山の勾配、川の位置、トンネルが必要な箇所。エレナが横から数字を確認した。
「勾配はここが最大になりますね。蒸気機関車の出力で登れる角度か計算します」
しばらくして、エレナが顔を上げた。
「理論値を超えました」
「超えたらあかんやろ」
さくやが突っ込んだ。
「設計を修正します」
エレナが淡々と答えた。
設計図が固まると、社長が資材の一覧を広げた。
「鉄のレールはアタシのとこで調達する。木材は紀州から出してもらえ。石材は奥州や。甲斐には人手を頼め」
「わかりました」
「列車の製造には三ヶ月かかる。その間に各国で路盤を整備しておくこと。線路を敷く前に地面を固めんと、レールが歪むで」
社長がさくやを見た。
「各国への指示はあんたが出せ。資材の調達スケジュール、路盤整備の工程、駅の建設場所。全部段取りしてから動かんと、現場がぐちゃぐちゃになるで」
さくやが手帳に書き込んでいく。
「路盤整備の完了期限は二ヶ月後。それまでに各国が整えておくこと。遅れたら列車の完成に間に合わんようになるからな」
「了解です」
「測量は先にやっておけ。山の勾配を現地で確認せんと、設計図通りにならん箇所が出てくるで」
社長が図面を丸めてさくやに渡した。
「これ持って各国を回れ。説明して、段取りして、確認して戻ってこい」
「はい」
「急ぎすぎたらあかんで。丁寧にやれ」
さくやが立ち上がった。ジュウベェも続く。
「では、行ってまいります」
「ああ、しっかりやりや」
■四国を回る
さくやとジュウベェは三国を訪ねた。
紀州でノブナガに木材の調達を依頼した。奥州でマサムネに石材の手配を頼んだ。甲斐でシンゲンに人手の確保を求めた。
「鉄の馬が来るとは……面白いな」
シンゲンが豪快に笑った。
測量も同時に進めた。山の勾配を現地で確かめ、川の幅を測り、トンネルを掘る箇所を確認する。エレナが数字を記録し、設計図を修正していく。
「ここの勾配、設計図より急でしたね」
「修正します」
エレナが手帳に書き込んだ。レイナが現地の風景を素早く描き留めた。
■建設
二ヶ月後、各国の路盤整備が整った。
爆音社長から列車完成の報せが来た。南西の拠点に引き取りに行くと、黒光りする蒸気機関車が鎮座していた。
「でかい」
さくやが見上げた。
「当たり前やろ。四国をつなぐんやから」
社長が腕を組んだ。
線路を敷く作業が始まった。四国から人手が集まり、一本ずつレールを固定していく。ジュウベェたちが千人総出で動いた。
最初の難関は奥州への山越えだった。トンネルを掘り進める作業が難航し、何度も崩落した。
「また崩れたでござる……」
ジュウベェが額に手を当てた。
「補強材を増やしましょう」
エレナが設計図を広げた。
次の難関は甲斐への川越えだった。橋の基礎工事が流れに阻まれ、何度もやり直した。それでも、線路は少しずつ伸びていった。
■四国、つながる
工事が完了したのは、始めてから数か月後のことだった。
東の村の駅に、四国の代表が集まった。ノブナガ、マサムネ、シンゲン——三将が揃ってホームに立っている。その隣にジュウベェとさくや。
「では、参りましょうか」
さくやが言った。
蒸気機関車の煙突から白い蒸気が勢いよく吐き出された。
「ゴオオォォ」
力強い音を立てて、列車が走り出した。ホームから歓声が上がる。
列車は東の村を出て、紀州の山並みへ入っていく。トンネルを抜けると、奥州の川が見えた。橋を渡り、甲斐の盆地へ降りていく。
車窓から流れる景色を、さくやは黙って見ていた。
「つながったな」
「そうでござるな」
ジュウベェが頷いた。
しかし最初の橋を渡ろうとした瞬間——
「わわっ、傾く……!」
線路の一部がわずかに歪んでいた。
社長の声が飛んだ。
「慌てるな。支柱を固定するで」
作業員が素早く駆けつけ、応急措置を施す。列車は大きく揺れながらも、なんとか橋を渡り切った。
安堵の拍手が沸き起こった。
エレナが手帳にメモを取っていた。
「修正点、記録しました」
レイナがにこにこしながら車窓を眺めていた。
「きれいな景色ですね」
「そっちかい」
さくやが突っ込んだ。
■走り続ける
初走行のトラブルを乗り越え、四国鉄道は順調に運行を始めた。
物資を積んだ列車が四国を行き来する。紀州の木材が東の村へ、東の村の農産物が奥州へ、甲斐の産物が紀州へ。人も行き来するようになった。
ノブナガが東の村の駅に降り立った時、ジュウベェたちが千人一列に並んでお辞儀をした。ノブナガは少し面食らってから、深く頷いた。
さくやは駅のホームから、走り去る列車の煙を見ていた。
「戦でできた溝を、鉄の馬で埋める、か」
ジュウベェが隣に立った。
「さくや殿の勢いのおかげでござる」
「乗った勢いやけどな」
二人は顔を見合わせて、笑った。
四国鉄道は今日も走り続けている。
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