■第122話 戦国無双編 戦火の跡に
激しい戦火が去った。
残ったのは、瓦礫と、仲間たちの顔だった。
ここから始める。それだけだった。
■静寂
戦場に、しばしの静寂が広がっていた。
三国連合軍の旗は焼け落ち、兵たちは散り散りになって退却していった。残されたのは、風に舞う砂煙と、地面に刻まれた深い亀裂だけ。
城壁は半ば崩れ、瓦礫が辺り一面に散らばっていた。しかしジュウベェたちは、すでに動き始めていた。瓦礫を片付ける者、崩れた壁を確かめる者。千人が、それぞれの場所で動いている。
■別れ
駅のホームに、レッドの100人とチュール一家が揃っていた。
さくやが歩み寄った。
「レッド、ほんまにありがとうな。あんたらがおらんかったら、どうなってたかわからん」
「ヒャッホー。またいつでも呼んでくれ」
100人のレッドが次々と列車に乗り込んだ。チュール一家も続く。チュールさんが乗り込む時、一瞬だけ振り返ってジュウベェを見た。ジュウベェが静かに頷いた。チュールさんが鼻を鳴らし、車内へ消えた。奥さんと子トラ三匹が、その後に続いた。
扉が閉まった。
「シュウウウウ——」
列車が動き始めた。さくやが手を振った。車窓からレッドの顔が、100人分並んで見えた。
ホームの端まで、千人のジュウベェが一列に並んでいた。列車がゆっくりと加速していく。それに合わせて、千人が一斉に深々とお辞儀をした。
顔を上げた時には、列車の姿はもうなかった。線路の向こうに、煙だけが残っていた。
さくやはしばらくその煙を見ていた。
「行ってしもたな」
「かたじけなかったでござる」
ジュウベェの声が、千人分重なって響いた。
■復興
さくやとジュウベェは、東の村の復興計画を練り始めた。
「まずは畑や。食うもんがなけりゃ、村は立ち直らん」
「水路の整備も急務でござる。城壁の再建はその後でいい」
図面に言葉を書き込んでいく。農地の確保、水路の整備、住居の建設。ジュウベェたちが瓦礫を片付けながら、次々と報告を上げてくる。千人が動けば、情報も早い。
「みんな、もう動いてるな」
さくやが呟いた。
■和平の文
数日が経った頃、さくやが言い出した。
「三国に文を送ろか。戦はもう終わりにしよう、って」
ジュウベェが頷いた。
「そうでござるな。拙者が筆を取るでござる」
ジュウベェが丁寧に文をしたためた。三国それぞれへ、一通ずつ。ヤマネコがその文を口にくわえ、三国へ向かって走っていった。
数日後、ヤマネコが返事を持ち帰ってきた。
紀州、奥州、甲斐——三国とも、和平に賛同していた。返事にはそれぞれ、同じようなことが書かれていた。
「あの爆弾はもうこりごりゆえ、謹んで和平を受け入れ申す」
さくやが息を吐いた。
「よかったな」
ジュウベェも静かに頷いた。千人が、どっと声を上げた。
その隅で、レイナとエレナが並んでにこにこしていた。
「よかったですね」
「ええ、計算通りです」
さくやがそちらをちらりと見た。何も言わなかった。
■調子に乗ったさくや
その夜、さくやが図面を眺めながら言った。
「なあジュウベェ、三国が和平に賛同してくれたんやったら……」
「何でござるか」
「鉄の馬で、三国とつなげへんかな」
ジュウベェが目を丸くした。
「鉄の馬を……三国と結ぶでござるか」
「物資も人も行き来できるようになったら、また争う理由も減るやん。同盟の証にもなるし、ええと思うんやけど」
「……それは、また大きな話でござるな」
「和平もいけたんやから、いけるやろ」
ジュウベェが苦笑いを浮かべた。
「さくや殿、少し調子に乗っておらぬでござるか」
「乗っとる」
さくやがあっさり認めた。
「でも、乗った勢いで行こうや」
■設計図
レイナが呼ばれた。
さくやが図面の上で路線を指差しながら説明すると、レイナは静かに頷き、筆を取った。路線図に沿って、各地の風景や駅の絵を丁寧に描き込んでいく。紀州の山並み、奥州の川、甲斐の盆地。設計図というより、絵図のように美しいものができあがった。
「きれいやな」
さくやが覗き込んだ。
「少しでも伝わりやすい方がいいと思って」
レイナが微笑んだ。
ジュウベェが文をしたためた。設計図とレイナの絵図を添えて、三通。ヤマネコが口にくわえ、また三国へ向かって走っていった。
数日後、ヤマネコが返事を持ち帰ってきた。
紀州、奥州、甲斐——三国とも、鉄道建設に合意していた。
さくやが拳を握った。
「よっしゃ」
ジュウベェが苦笑いしながら言った。
「全く、さくや殿の勢いには敵わないでござる」
隅でエレナがそっと呟いた。
「計算通りですね」
レイナがにこにこしながら頷いた。
二人は図面を広げ直した。次の話をするために。
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