■第121話 戦国無双編 高度100m、5秒
白い孔雀が、戦場の上空に現れた。
エレナの声が、静かに落ちた。
計算通りに、爆風が広がった。
■上空から
「現在高度200m。降下します」
エレナがゴーグル越しに空を確認しながら言った。孔雀が翼を傾け、滑空を始める。コックピット風の籠が風を切り、十人が身を低くした。眼下に三国の陣形が広がっていた。整然と並んだ大砲、犬部隊の隊列、将たちの旗印。
「高度150m。爆風弾、8秒用をお願いします」
「はい」
レイナが仕分け棚から爆風弾を取り出した。導火線に火をつけ、静かに手を離した。
八秒後。
ドォォォン。
三国の前衛に爆風が炸裂した。兵士たちが一斉に宙を舞う。犬たちが爆風に押されて横転する。整然としていた陣形が、一瞬で崩れた。
「高度100m。5秒用をお願いします」
「はい」
レイナが次の爆風弾を手に取った。穏やかな顔のまま、手を離した。
五秒後。
ドォォォン。
今度は中衛が吹き飛んだ。
「まあ、きれいに崩れましたね」
レイナが下を見ながら言った。
「計算通りです」
エレナが頷いた。
■大砲を潰す
「大砲が仰角を上げています。こちらを狙っています」
エレナが冷静に報告した。
「バズーカ砲を使いましょう」
レイナがバズーカ砲を構えた。孔雀が一瞬だけ水平飛行に移る。
「少し左です」
「はい」
照準を合わせ、引き金を引いた。
着弾と同時に爆風が炸裂した。大砲が土台ごと吹き飛び、周囲の兵士たちが波のように弾け飛ぶ。
「あら」
レイナが首を傾けた。
「思ったより飛びましたね」
「威力の計算が少し甘かったかもしれません。次は修正します」
エレナがすかさずメモを取った。
紀州の大砲が一門、沈黙した。
「次は奥州の大砲です。高度50m、3秒用をお願いします」
「はい」
孔雀が急降下した。レイナが爆風弾を投下する。三秒後に着弾し、奥州の大砲が爆風で横倒しになった。
「甲斐の大砲はバズーカ砲で」
レイナが再び構えた。引き金を引く。
ドォォォン。
甲斐の大砲が吹き飛んだ。周囲の兵士たちが四方へ散る。
三国の大砲が、全て沈黙した。
「大砲の制圧、完了しました」
エレナが静かに言った。
「では次は連鎖爆風弾ですね」
レイナが仕分け棚を確認した。
「高度200m、12秒用です」
「はい」
孔雀が上昇する。レイナが連鎖爆風弾を手に取り、静かに手を離した。
十二秒後。
ドォォォン、ドォォォン、ドォォォン、ドォォォン。
四つの爆風が連鎖した。三国の後衛が丸ごと吹き飛んだ。旗印が宙を舞い、甲冑が四方へ散らばる。
「きれいに連鎖しましたね」
「ええ、設計通りです」
二人が満足そうに頷き合った。
■地上から
城壁の内側で、砲声が変わったのを感じた。
さくやが立ち上がった。
「大砲が止まった」
ジュウベェが城壁の隙間から外を覗いた。三国の陣形が、あちこちで崩れている。爆風の跡が広場に広がっていた。
「今でござる」
門が開いた。
「全員、前進でござるぞ」
千人の声が重なった。城壁から波が溢れ出す。レッドがマシンガンを構え、側面から敵の残った隊列を削っていく。
「ヒャッホー。おれら、ここで終わらせるで」
さくやがチュールさんの背で敵の中心へ突き込んだ。
三国の兵士たちは、もはや戦う気力を失っていた。大砲を失い、陣形を崩され、上空からは白い孔雀が旋回している。
「退けい」「逃げろ」「もう終わりだ」
声があちこちで上がり、三国軍が崩れ始めた。
ノブナガが紀州犬を走らせ、立て直そうとした。しかし上空からレイナの爆風弾が落ちた。
ドォォォン。
爆風でノブナガが紀州犬ごと吹き飛ばされた。着地したノブナガは、しばらく動かなかった。
マサムネが秋田犬で踏みとどまっていたが、レッドのマシンガンが盾を次々と吹き飛ばし、ついに踵を返した。
シンゲンが最後まで残っていたが、チュールさんが正面から突進した。爆風で揺らいだ足元に、白虎の体当たりが炸裂する。シンゲンが甲斐犬ごと吹き飛んだ。
広場が、静まり返った。
「おれら、勝ったで」
レッドが空に向かって叫んだ。
■和平交渉
三将が揃って頭を垂れていた。
ジュウベェが歩み出た。
「休戦でござる。これ以上、無益に争う必要はないでござろう」
ノブナガが長い沈黙の後、口を開いた。
「……分かった。誓おう。二度と東の村には手を出さぬ」
マサムネが静かに頷いた。
「我らもまた、休戦を望む」
シンゲンが肩を落とし、観念したように言った。
「甲斐もまた、東の村とは争わぬ」
さくやがその様子を見ながら、小さく息を吐いた。
上空では白い孔雀がゆっくりと旋回している。レイナが眼下を見下ろしていた。
「終わりましたね」
「ええ」
エレナが頷いた。
「計算通りでした」
孔雀が北の拠点へ向かって飛んでいく。夕陽に照らされた白い翼が、金色に輝いていた。
広場に残ったのは、爆風の跡と、立ったままの仲間たちだった。
チュールさんが鼻を鳴らした。さくやがその首を軽く叩いた。
「お疲れさん」
夜が来ようとしていた。
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