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■第120話 戦国無双編 にこやかな兵器庫

北の拠点に、穏やかな声が響く。

手元では、とんでもないものが完成していく。

二人は終始、にこやかだった。


■爆音社長、帰還

北の拠点の扉が重々しく開いた。

ドン、ドン、ドン。

重たい足音が作業場に響く。現れたのは爆音社長だった。両腕を腰に当て、仁王立ちしている。

「おいおい……ちょっと海外行っとる間に、何やこれは」

作業台の上を見回した。部品、火薬、金属の塊、そして孔雀の背に積み込む籠。作業台が完全に埋まっている。

レイナとエレナが振り返った。二人とも、にこやかに微笑んでいた。

「社長さん、お帰りなさい」

「海外出張はいかがでしたか」

「くそっ、あっちもこっちも勝手に好き放題しとるやないか。ほんま腹立つわ」

社長は足を踏み鳴らしながら作業台に近づき、二人の作品を一つ一つ手に取って確かめた。職人の目が、一瞬で技術水準を見抜いていく。

「……まあまあやな。でも、まだ甘いわ」

机の下から巻物のような設計図を取り出し、乱暴に広げて二人の前に叩きつけた。

「ほら、これや。本気の設計図や」

レイナとエレナの目が同時に輝いた。

「面白そうですね」

「ぜひ作らせてください」

社長の口元に、微かな笑みが浮かんだ。


■爆風で吹き飛ばす

「ただし」と社長が言った。

「殺すんやない。吹き飛ばすんや。戦意を失わせれば、それで十分や」

レイナが頷いた。

「それの方が好きです」

「ええ、その方がずっといいですね」

エレナも静かに微笑んだ。

設計が始まった。エレナが計算式を書き込みながら説明する。

「爆風弾は着弾と同時に強烈な爆風を発生させます。周囲の敵を吹き飛ばして陣形を崩しますが、命には関わりません」

「まあ、よくできましたね」

レイナが覗き込んだ。

「こちらは連鎖爆風弾です。一つが爆発すると周囲の三つが続いて爆風を起こします。広い範囲の陣形をまとめて崩せます」

「素敵ですね」

「ええ」

「それ、素敵って言うもんちゃうで……」

社長が額に手を当てた。

「それからこちらは煙幕弾です。爆発と同時に濃い煙が広がって、敵の視界を完全に塞ぎます」

「こちらは閃光弾です。強い光と音で一時的に混乱させます。怪我はしません」

レイナが一つ一つ丁寧に説明した。まるで新しいお菓子の種類を紹介するような口調だった。


■時限式の設計

エレナが表を仕上げた。

「高度によって導火線の長さを変える必要があります。落下速度と爆発タイミングを合わせないと、地上で爆発しません」

「高度50mなら導火線3秒。低空での精密投下に使います」

「高度100mなら5秒。これが標準です」

「高度200mなら8秒。広い範囲を崩したいときに」

「高度300mなら12秒。安全圏からの投下になります」

「投下前に私が高度を確認して、レイナさんに秒数をお伝えします。レイナさんはその秒数の導火線がついた爆風弾を選んで投下してください」

「わかりました」

レイナが微笑んだ。

社長が横から覗き込んだ。

「……お前ら、もうちょっと緊張感持てへんのか」

二人が振り返った。にこやかに笑っている。

「緊張していますよ」

「全然そう見えへん……」


■バズーカ砲の登場

社長が作業場の奥から大きな筒を引きずり出してきた。

「これも持っていけ。バズーカ砲や。着弾すると爆風が起きる。大砲ごと吹き飛ばせる」

エレナが筒を持ち上げ、重さを確かめた。

「なるほど。地上からの大砲の射程を潰すのに使えますね」

「理にかなっています」

レイナが頷いた。

「これも吹き飛ばすだけですか」

「ああ、吹き飛ばすだけや。大砲も兵士も、まとめてふっ飛ばして戦意を喪失させる」

「それは優しいですね」

「優しいて言うもんでもないけどな……」

社長がバズーカ砲の使い方を説明し始めた。二人は頷きながら聞いている。

「ここを押して、狙いを定めて、引き金を引く。それだけや」

「簡単ですね」

「簡単言うな……」


■コックピット風の籠

社長がもう一つ、設計図を広げた。

「孔雀の背にこれを固定する。コックピット風の籠や」

図面には風よけのガラス板、爆弾の仕分け棚、バズーカ砲の固定台が細かく描かれていた。レイナとエレナが顔を近づけて覗き込む。

「よく考えられていますね」

「風で導火線が消える心配もありませんね」

「そういうことや。それからこれも」

社長が棚から二つのゴーグルを取り出して、二人の前に置いた。

「高度が上がると風が強い。目を守れ」

レイナがゴーグルを手に取り、顔に当ててみた。

「似合いますか」

「それどころやないわ……」


■積み込み

白い孔雀が、作業場の外で待機していた。

その背には、コックピット風の籠が固定されている。風よけのガラス板、爆弾の仕分け棚、バズーカ砲の固定台。爆音社長の設計した特注品だった。

レイナとエレナが爆弾を一つずつ丁寧に仕分け棚へ収めていく。

「3秒用の爆風弾はこちら」

「5秒用はこちら」

「8秒用はこちら」

「12秒用はこちら」

「連鎖爆風弾はこちら」

「煙幕弾はこちら」

「閃光弾はこちら」

棚がきれいに埋まっていく。社長が横で見ていた。

「お前ら、ほんまに大丈夫やろか」

「大丈夫ですよ」

「計算通りです」

二人が同時に答えた。にこやかに笑っている。

バズーカ砲が固定台に据え付けられた。レイナとエレナがゴーグルを装着した。籠に乗り込む。続いて仲間たちが次々と乗り込み、合わせて十人が籠に収まった。

「では、行ってまいります」

「行ってらっしゃい。無茶するなよ」

レイナがゴーグルの上から振り返って微笑んだ。

「無茶ではないですよ。計算通りです」

「計算通りの無茶や……」


■飛び立つ

地を蹴った瞬間、孔雀が空へ舞い上がった。

コックピット風の籠が風を切る。ゴーグル越しに、エレナが高度を確認した。

「現在高度50m。上昇します」

「はい」

レイナが仕分け棚を確認した。3秒用、5秒用、8秒用、12秒用。きれいに並んでいる。

眼下に砲煙が見えてきた。大砲の砲声が、遠くから聞こえてくる。

「ジュウベェ、待っててや」

レイナが呟いた。

エレナが前を向いた。

「では、始めましょう」

白い孔雀が、戦場へ向かって飛んでいく。

作業場に残った社長が、その姿を見送った。

「……あいつら、ほんまに大丈夫やろか」

上空から、レイナの声が風に乗って聞こえた気がした。

「計算通りですよ」

社長は額に手を当てた。



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