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■第119話 戦国無双編 砲煙の中の救出

大砲の轟音が、広場を揺らす。

煙の中で、仲間が倒れていく。

白き虎が、砲煙を切り裂いて走った。

 

■大砲、現る

土煙の向こうから現れたのは三人の将だった。

ノブナガが紀州犬に跨り、鎧が太陽光を鋭く反射している。マサムネは秋田犬の背で無言のまま立つ。シンゲンは甲斐犬と並んで薙刀を携え、一歩一歩前に進んでくる。

しかし今回は、それだけではなかった。

三国の後方に、見慣れない鉄の塊が据え付けられている。前回の敗戦から学んだのだ。紀州、奥州、甲斐——それぞれが大砲を引っ提げて戻ってきていた。

「前回の借りを返しに来たぞ」

ノブナガの口元が歪んだ。


■砲撃開始

「撃て」

号令とともに、三国の大砲が一斉に火を噴いた。

轟音が広場を揺らした。着弾のたびに地面が割れ、土煙が空へ巻き上がる。チュールさんが突進を試みたが、着弾の衝撃で足元が崩れ、大きく体勢を崩した。前回通じた白虎の突撃が、大砲の前では封じられている。

孔雀の爆撃も同じだった。上空から爆弾を投下しようとするが、大砲が仰角を変えて砲撃してくる。レイナとエレナが孔雀を急旋回させ、辛うじて回避した。

「これは……前と違う」

さくやが砲煙の中で呟いた。


■崩れる前線

砲撃が続く中、三将が前線を押し上げてきた。

ジュウベェの千人が城壁沿いに展開していたが、大砲の着弾が列の真ん中に炸裂するたびに、何十人もが一度に吹き飛ばされていく。立て直そうとした列に、また砲弾が来る。砲煙が晴れるたびに、さっきまでいた者たちが消えていた。

レッドの百人がマシンガンで応戦するが、大砲の横からの砲撃に何人もが宙を舞い、瓦礫の山に叩きつけられた。

さくやの百人はチュールさんと共に踏みとどまっていたが、三方向からの砲撃に追い込まれ、身動きが取れなくなった。

広場のあちこちに、砲煙の中で倒れた仲間たちが散らばっていた。


■チュールさん、出動

チュールさんが吠えた。

砲煙の中へ飛び込んでいく。最初に見えたのは、瓦礫に半分埋もれたさくやの仲間たちだった。

「助けてください」「ここです、ここ」「足が挟まって……」

チュールさんが体を低くした瞬間、我先にと背中によじ登ってくる。十人、二十人、三十人。背中がみるみる埋まっていく。

城壁まで戻ると、背中の仲間たちを城壁内へ放り込んだ。

どさどさどさ。

「いたたたた」「生きてる……」「あ、踏まれてる、踏まれてる」

チュールさんはそのまま振り返り、砲煙の中へ戻っていった。

二往復目。今度は倒れたまま動けない者たちがいた。チュールさんが鼻先で一人ずつ突いて起こし、背中へ乗せていく。

「起きてください、乗ってください」

突かれた者がむくりと起き上がる。

「あ、はい、すみません」

三往復目。砲弾が近くに着弾した。爆風でチュールさんの耳がぺたんと倒れた。それでも足を止めなかった。


■奥さんと子トラの救出劇

奥さんが右方向を担当した。

瓦礫の山に登っては仲間を引っ張り出し、背中に乗せて走る。乗せすぎてよろけながらも、城壁まで運んでは放り込む。

どさどさ。

「ありがとうございます」「あの、もう少し丁寧に……」「贅沢言うな」

子トラ三匹は左方向へ散った。一匹が一人ずつ咥えて走る。

「ちょ、ちょっと待って」「首が、首が締まってる」「我慢してください」

城壁まで運ぶと、ぽいっと放り込む。

「いたっ」「ありがとう……」

また砲煙の中へ戻っていく。子トラの小さな足が、広場を何度も往復した。


■ヤマネコと柴犬

ヤマネコは瓦礫をかき分けていた。

埋もれたジュウベェの仲間を一人ずつ掘り起こし、首の後ろを咥えて城壁へ運ぶ。

「拙者、今日は散々でござるな……」

咥えられたまま呟くジュウベェ。ヤマネコは無言で走り続けた。

柴犬たちも砲煙の中を走り回っていた。一人咥えては走り、放り込んでは戻る。砲弾が近くに着弾しても、足を止めない。

ある柴犬が二人同時に咥えようとして、うまくいかずに一人を落とした。

「あ」「あ」

お互いに顔を見合わせた後、柴犬がもう一度咥え直した。

「ありがとう……」

城壁の内側では、運び込まれた仲間たちが次々と積み重なっていく。

「いたい」「生きてる」「ありがとう」「足の上に乗らないでほしい」「すみません」

声があちこちで重なった。


■限界

最後にチュールさんが城壁内へ駆け込んだ。

門が閉まる。砲撃の音が、外で続いている。

さくやは荒い息のまま、城壁の内側に座り込んだ。ジュウベェの仲間たちが、あちこちで呻いている。レッドの仲間たちも、壁際に倒れ込んでいた。

チュールさんが鼻を鳴らした。さくやはその首に額を押し当てた。

「ありがとう」

砲撃の轟音が、外でまだ響いていた。

城壁の内側を見渡したジュウベェが、静かに口を開いた。

「このままでは……次は持たないでござる」

誰も否定しなかった。

夜が来ようとしていた。



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