■第114話 市街地再開発編 笑いも忘れずに
湖の拠点に、緊張が漂う。
市庁舎の会議室で、静かな攻防が始まる。
黒装束の影が、夜に紛れて動いていた。
■朝の作戦室
湖の拠点の会議室に、朝の光が差し込んでいた。
さくやが机の上でぴょんぴょんと跳ねながら資料を覗き込んでいる。
「めちゃくちゃ悪そうですやん」
マダムが資料の束を静かに整理しながら口を開いた。
「情報はまだ不十分です。潜入させたSPから、危険人物の動きが逐一報告されています」
「とにかく、わたくしの事業にも影響しますし、即刻抹殺したい気分ですわ」
さくやが手をぺしぺし叩いた。
「作戦ってワクワクしますね。忍者部隊もヒリヒリしてるし」
師匠が微かに微笑んだ。
「うん……そうだね」
■市庁舎
午後の協議に備え、師匠たちは午前中に市庁舎へ向かった。
市の担当者が小走りで現れた。
「今日の議題は……コンペの白紙撤回要求になりそうです」
「そうですか」
師匠は椅子に腰を下ろし、穏やかに笑みを浮かべた。さくやとOLさんがその隣でハラハラしながら資料を並べている。
午後、再開発委員会による協議が始まった。委員たちはにこやかに話すが、その内容は師匠の計画に反対するものばかりだった。
師匠が静かに口を開く。
「皆さん、この計画は市民のために行うべきものです」
委員の一人が笑顔のまま返した。
「コンペは委員会の合意が前提でしょう。委員会のお墨付きなしに、市は動けませんよ」
会議室を見渡す委員たちの顔に、師匠は見覚えがなかった。市の人間は、一人もいない。
「今、この委員会メンバーにこの市の方はいませんよね」
笑顔が、一瞬固まった。
OLさんが小さく呟いた。
「師匠、ヒリヒリさせるな……」
さくやは椅子に座ったまま足をぶらぶらさせながら、小声で言った。
「師匠、どこまで演技なんやろ……」
■コンペの白紙撤回
議長が重々しく口を開いた。
「本日の協議はここまでといたします。ただ——市の声も踏まえ、再度コンペを行うことも視野に入れるべきではないでしょうか」
会議室にざわめきが広がった。
さくやが身を乗り出しかけた瞬間、OLさんが隣で静かに微笑んだ。
「落ち着いて。ここは市役所——舞台を間違えちゃだめよ」
さくやは口をつぐみ、頬をふくらませるだけにとどめた。
師匠はそのやり取りを横目で見て、わずかに口角を上げた。
■夕方の拠点
夕方、湖の拠点に戻ると、マダムがパソコンの画面を睨みつけていた。
「SPからの報告です。黒装束の影がオフィス周辺に出没しています」
マダムが続ける。
「監視は続けていますが、オフィスには近づかないように。必要な荷物があればSPに伝えて下さい」
師匠が資料を広げながら言った。
「次の一手は慎重かつ大胆にいきたい」
マダムが頷く。
「お願いします。準備を怠らず……さくやちゃん、笑いも忘れずに」
「はい」
さくやが元気よく返事をした。
湖の拠点に、緊張と期待と、少しの笑いが漂っていた。
#小説 #ショートショート #ファンタジー #創作 #冒険 #戦国 #陰謀 #ほっこり #キャラクター小説 #読書好きと繋がりたい




