第22話「お婿にいけない」
僕は焦っていた。
魔法を見られたことではない。急に妹が茂みから現れ、すっぽんぽんを見られたのである。
「キャア!!!」
僕は思春期の女の子が着替えを見られた時のような声で胸と息子を手で隠していた。
「リリー、何してんだ!父さんと母さんは一緒じゃないのか?」
「うん、ひとりできたよ。ぱぱはおしごとしてて、ままはねてる」
(ん?母さんが寝てる?どうしたのかな?疲れたのかな?)
「にいに、いっしょにあそぼ!」
リリーはおもむろに服を脱ぎだした。
「いやいや、待て待て!」
「だって!にいにだけみずあびしててずるい!!!」
「違うんだ、これは魔法の練習で…」
リリーが泣き出そうとしていた。
(あぁもう……)
「遊ぶから!遊ぶからちょっと待ってて!」
リリーに見えないようにそそくさと服を着て、待ってもらった。
「これはね、お風呂と言って、これに浸かると気持ちいいんだ!」
「リリーもはいる!リリーもはいる!!」
「うんうん、分かった。でも普通はお外では服は脱がないんだよ?」
「にいにはぬいでた!」
「ぐっ……そうです。でもこれは魔法の練習だったんだ。」
「リリーもまほうのれんしゅうする」
「分かったから、ちょっと待ってて。壁を作って見えないようにするから」
(囲いを作る感じでいいか。よし!)
「フンッ!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
「にいに、すごーい!」
(妹よ、もっと褒めたもれ)
「ここで服を脱いで、それでこのお湯に入るんだ」
「うん!」
リリーが風呂に入っている間、びちょびちょのまま服を着たため乾かそうと思い、火と風魔法の応用で温風を出した。
(おー良く乾く良く乾く、リリーもあとで乾かそう)
「リリー、お風呂気持ちいい?」
「うん、いつもみずあびちょっとつめたいけど、あったかくてきもちいいよ!」
しばらくお湯につかって満足したのか「もういいー」と言ってきたので、服を着せて温風魔法で乾かした。
「うわー、にいにすごいねー」
(僕は褒められて伸びる子です)
「リリー、今日見たことはみんなに内緒にしてほしいんだけど」
「うん、リリーだれにもいわないよ」
(良かった、外ですっぽんぽんで遊んでたなんで恥ずかしくてお婿にいけない)
「母さん寝てたっていったよね?疲れちゃったのかな?」
「んーん、リリーがね、ピョンピョンをままにみせたらねちゃった」
(カエルみたいなのを見て寝た?気絶した?…大丈夫かな?)
「リリー、今日はもう帰ろう。父さんも母さんもリリーがいなくなってびっくりして探してると思うよ」
「リリーね、ままにちゃんとあそびにいくっていったよ?」
「でも母さん寝てたんでしょう?」
「……うん……」
帰り道を歩いていると、大きい毒蛇が潰れて死んでいた。近くにはカエルも毒にやられたのか死んでいる。
(んん?なんじゃこれ。ここだけ濡れてるし。どうやってこうなった?分からん)
リリーはこちらを見ることなく、楽しそうにスキップしている。
更にしばらく進むと、サムが茂みで気持ちよさそうに寝ていた。
「サム、何やってるんですか?」
僕はサムの方をたたき、起こしてあげた。
「!!!水が押し寄せてきたぞ!逃げろっ、逃げろー!!!」
全身をバタつかせて必死に泳ごうとしている。
「何してるんですか?夢でも見たんですか?」
「えっ…」
「え?」
「…水が押し寄せてきたんだ。逃げようとしたけど足が滑って……あれ?夢?」
「魔力枯渇でも起こして気絶してたんじゃないですか?」
サムは「???」と頭を傾けながら起き上がり、帰って行った。
「サム、大丈夫かな?」
リリーはニコニコしながら手を伸ばしてきたので、僕は手を繋いて家路についた。




