第23話「喜怒哀楽」
家にたどり着く前に、父さんと合った。父さんの顔は殴られたような跡があった。
畑から帰ると母さんが寝室で倒れており、何かうなされてるようだったため、びっくりして体をゆすったらしいが、すぐに起きて足をバタつかせながら「イヤーッ!気持ち悪いッ!!!」と父さんの顔を思いっきり蹴ったらしい。
しばらく父さんはショックを受けていたみたいだが、母さんが正気に戻るとリリーがいなくなったことが分かり、家の周りを探していたそうだ。
「おおーーーい!ルーネーーー!!!リリーがいたぞー!!!」
父さんがでっかい声で呼ぶと、家からちょっと離れた裏手からものすごい勢いで母さんが来た。
「リリー!何やってたの!!心配したじゃない、どこかで魔物にでも襲われたらどうするの!!!」
「ごめんなさい、にいにとあそびたくて……」
リリーはうつむきながら母さんに謝った。
「ラクス!あなたが遊びに行くからリリーが行きたがるじゃない!」
(ええぇぇぇええ!?なんで僕に飛び火!?)
「ルーネ、ラクスは村長に頼まれて…」
「あなたは黙ってて!!!」
父さんも僕も直立不動後、うなだれた。
「ラクス、魔法をみんなに教えているなら、リリーも連れて行きなさい」
「え?良いの?小さい子もいるけど一番小さくても5歳くらいだよ」
「またいなくなるより良いわ、5歳の子ならカーシーやミュールもきてるでしょう?」
カーシーとミュールは僕の家の隣(と言っても結構離れているが)と、さらに隣の家の子だ。僕の1つ下。
2人とも女の子で、リリーとよく遊んでくれる。青空魔法教室にも来ていて、その親も来ている。
「そうだね、親もきてるから安心だね。あぁそうか、あの二人が魔法習うようになったから遊べなくて寂しくなったんだね」
「うん、カーねーもミューねーもいない」
「私も時間があったらリリーと行くわ。あなたがどんなことしてるのかも興味あるし」
(えー、母さん来ると色々めんどくさそうだなぁ。あれはダメ、これはダメとか言ってきそう……)
「うん!来てね!」
僕は精一杯空元気を出して答えた。
その夜、秘密はあっという間にばらされた。
「まま、にいにがね、あったかいおみずにはいってね、おそとなのにふくきてなかったよ」
「ラクス、どういうことかしら?」
母さんは笑顔でこちらを振り向いた。
(ちょっとリリー!そんなこと言ったら、僕お婿にいけないじゃないか)
「まま、これはいっちゃいけないんだよ?にいにとリリーのひみつ。ままだけにおしえてあげる。
リリーもはだかではいったんだよ、きもちよかったー」
「ラクス、どういうことかしら?」
母さんはもう笑っていない。
僕はしどろもどろになりながら、魔法で『風呂』なるものを作り、入っていたらリリーに見つかったことを話した。いつも水で体を洗う時に、冷たくて寒かったので、魔法で温かいお湯が出せないかなぁと試したら出来たと伝えると、
「良いわねそれ、すぐにできるの?家の裏にできる?」
母さんはノリノリだった。
「すぐに作ります」と、僕は母さんの機嫌が悪くならないよう、家の裏に向かった。途中、父さんが母さんに見つからないよう親指を立ててきたので、僕もそれに答えた。男同士、心がシンクロした瞬間だった。
家の裏に出て「この辺かな」と地面を70㎝ほど隆起させ、中をくり抜いていく。くり抜いた表面を固く滑らかにしたあと、排水のことも考えて裏の小川に流れるよう溝を作った。簡易的に壁を作りあげていく姿を見て、父さんと母さんはドン引きだった。
「お前……なんでもできるな、家も簡単に建てれるんじゃないのか?」
「魔法ってこんなこともできるの?ちょっとラクス、気絶しないわよね?」
「家はまだちょっと難しいかな、魔力は全然大丈夫だよー」と言いつつ、作業は続く。




