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聖女のやる事じゃない件について  作者: 無月公主


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38話【腐っても親だな…。】

アメリアはアビスの分身体と共に、メリアライト帝国のハイドシュバルツ公爵家を訪れていました。彼女の出身国であるメロウト王国にもハイドシュバルツ家が存在しており、その一族は分家として知られていました。この国は不思議な魔法が溢れ、空や太陽など、すべてが魔法によって形作られた箱庭のような世界でした。


応接室は高貴な雰囲気に包まれ、エレガントな家具が配置された広々とした空間でした。壁には美しい彫刻や絵画が飾られ、部屋全体が優雅な光で照らされています。入り口近くには、立派な大理石のテーブルがあり、その上には花瓶や贈答品が飾られています。応接室の奥には、豪華なソファーと椅子が配置されています。今、アビスとアメリアはその応接室の中央に位置するソファーに座り、ノエルが戻ってくるのを待っていました。


『どうしよう、帰り辛い雰囲気だよね。』

「そうだな。本体が来るまで待つしかないな。」

『ところで、あの白い人は誰なの?キルエルさんの関係者ってくらいの事しか分からないけど…』

「ノエル・クラリアス。キルエルの孫だそうだ。」


その様子を見守るように、執事らしき人物とノエルが入ってきました。


応接室の扉がゆっくりと開き、凛とした雰囲気を漂わせるノエルが優雅に入室しました。彼の姿勢はまっすぐで、瞳には深い知性が宿っています。その隣に立っているのは、黒い髪を少しオールバックにした執事風の男性でした。彼の目元には怪しげな微笑が浮かび、その赤い瞳がアビスと同じ輝きを放っていました。


『凄く怪しそうな人入って来たー!!あの笑み絶対何か企んでそうー!!』


アビスは微笑みながら、アメリアの頭を手の甲で軽くコツンと小突きました。その仕草には、少しの呆れと共に、落ち着けという意味も含まれているようでした。


執事は恍惚な笑みを浮かべながら、アビスを見つめ、「貴方が私奴(わたくしめ)とペルシカ様の愛の結晶・・・いえ、息子ですか。大きくなりましたね。」 と語りました。 その言葉には愛おしむような視線が込められていました。


『えー!!いきなりお父さん出て来ちゃうの!?アビスのお父さんなの!?大人になったアビスとちょっと似てないような…。』


アビスは呆れた口調で続けました。 「愛の結晶なら、しっかり面倒をみるべきじゃないか?俺を神の国とやらに預けていただろ。」 その言葉には、やや皮肉めいた表情が宿っていました。


アビスの父親は微笑みながら言いました。 「すみませんでした。少し長い話をしても宜しいですか?」 その微笑みには、穏やかで親しみやすい雰囲気が漂っていました。


アビスはふと、父親の言葉に耳を傾けました。 「どうせ、助けがくるまで暇だからな。話くらいは聞いてやろう。」 その言葉には、少しの皮肉と冷ややかさが込められていました。


アビスの記憶には、白い宮殿で黒い長い髪をした男性と金髪の少し荒々しい女性によって育てられたという断片的な記憶が残っていました。 だからこそ、今目の前に現れた父親が本当の父親なのか、疑念がわいてきました。


アビスの父親はゆっくりと目の前のソファーに座り、ノエルはその隣に位置を取りました。 静かな部屋の中で、緊張が漂っていました。


アビスの父親はゆっくりと口を開きました。 「ペルシカ様と私奴(わたくしめ)の間にこんな息子がいたなんて、少しゾクゾクしますね。おっと、失礼致しました。 創造主から賜った私奴の名前はプレイヤード。 何度生まれ変わっても、この名前だけは変わらないもので、少し不思議な感覚がしましたよ。この屋敷ではヤードと名乗っておりますので、宜しくお願いします。」


アビスは父親の言葉に、一瞬だけ心がざわめきました。 創造主という言葉には、自らの存在に関わる何かが含まれているように感じました。 しかし、その詳細を求めることは今の段階では適切ではないと考え、静かに話を聞き続けました。


ヤードは穏やかな口調で語りました。 「そうですね、私奴(わたくしめ)は先程、ノエル様のお力により前世を思い出しました。長い時を妻と共に生きるために、このような国を建てて魂を循環させ、過ごしてきました。 ですので、初代メリアライト王であった時の私奴(わたくしめ)の子供ですね。 アビスは、私奴(わたくしめ)の父上に似すぎていたので、祖国の父母に預けてしまいました。 寂しい思いをさせてしまいましたね。 すみません。」


アビスは、父の語る言葉に耳を傾けながら、内心でひとつの納得を感じました。かつての曖昧な記憶が、少しずつ明確になりつつありました。


ヤードは穏やかな口調で尋ねました。 「しかし、アビスの歳のとりかたを考えると、絶命しているはずですが、どのようにして生きながらえているのですか?」


アビスは語り始めました。 「不老不死のクラリアス家の人間に呪いをかけて、寿命を吸って800年は生きた。父上の話を聞くまで歳をとりにくい事に気付けなかった。 確かに、30歳を超えても皺1つなかったように感じた。 途中で創造主とやらに記憶を奪われてしまったようでぼんやりとしか覚えてない。」


ヤードは心苦しそうに言いました。 「すみませんね。 とても迷惑かけてしまったようで。 まさか最初の息子が長い時を苦労していたなんて。 私奴(わたくしめ)は父親失格です。 妻は人間でしてね。 私奴よりも寿命が短く、このような空間に閉じ込めて、生まれ変わりながら魂と寄り添い続けているのが現状です。 よければ後ほど、アビスを産んだ時の絵姿をお見せしましょう。」


「それはどうも…。寿命があるという事は俺の祖父母のどちらかが人間という事か?」


「はい。母が人間ですね。母は異世界の人間ですから、長い時間を父上と共に今も生きておられるはず。 よければ神の国への行き方をお教えいたしますよ。」


アビスは軽く微笑んで言いました。

「頼む。色々と確認しなければいけない事がある。」


そして、ヤードは不思議そうな表情を浮かべながら問いました。

「ところで隣のお嬢さんは恋人ですか?」


アビスは愛おしそうにアメリアの頭を撫でながら、「あぁ、そうだ。」と答えました。 ヤードはじっとアメリアを見つめながら、「とても複雑な魔法が幾重にもかけられていますね。私奴が妻にかけている魔法とそっくりです。」 と言い、ニッコリと微笑みました。


アビスは心の中で謎の照れくささに包まれました。 初めて経験するこの感情に、彼の心臓は高鳴り、照れくささが内側から滾るように感じられました。


(なんだこの感情は!?アメリアに生足を見られている非じゃないくらいに気恥ずかしいぞ!!)


彼の目は大きく見開かれました。 これほどまでに新しい感情に包まれることに驚きながらも、アビスはその心地よさを受け入れることにしました。


静かな控えめなノックの音が部屋に響き渡りました。 その音に応えて、ヤードが喜びに満ちた表情を浮かべながら席を立ちました。 その瞬間、アビスの脳内に、ヤードの声が直接届きました。 「妻にはまだ記憶が戻っていないので、今の話は内密にしてください。わがままを言ってしまい、申し訳ありません。」


アビスは自分よりも上の魔法の使い手であることに気づき、不思議なほどに少し嬉しい気持ちになりました。



扉が開くと、銀髪の前髪を綺麗に整えられた、素敵なドレスを身にまとった女性が現れました。 その黄金の瞳はまるで星を閉じ込めたような輝きを放ち、彼女の美しさはまるで宝石のようでした。


「ヤード、こんなところで何を… あっ!?」 と、驚きの声を上げる女性。 ヤードは穏やかな笑みを浮かべながら、「お嬢様、この方々は王家の遠い親戚です。今から王城へお連れしようとしていたところですよ」と説明します。


驚きが去り、女性は優雅に身をかがめ、綺麗なカーテシーを行います。 「ペルシカ・ハイドシュバルツと申します。どうぞよろしくお願い致します」と、公爵家に相応しい気品ある言葉で挨拶をします。


アビスも立ち上がり、王族らしい気品を湛えた挨拶を返します。 目を見開き、優雅な動作で身を正し、深々と頭を下げながら言葉を述べます。


「ペルシカ様、光栄に思います。グローリア・アビス・メリアライトと申します。 この度はお会いできて光栄です。 どうぞよろしくお願い致します」と、アビスは誠実な言葉を込め、王族の品位を示すような挨拶を行います。 その場に相応しい気品と風格が漂い、会話は雅やかな雰囲気に包まれました。


ヤードは満足そうに、その光景を静かに眺めながら、丁寧な口調で言いました。


「さて、それではお客様を王城へお連れしたいと思います。ペルシカ様、私奴が外出する間、くれぐれも外出はしないようにお願いしますね」と。 その言葉には紳士的な気配りが漂い、ヤードの深い思いやりと丁寧な心遣いが感じられました。 ペルシカは頷きながら、控えめな微笑みを浮かべ、その約束を確かめるようにヤードに向けます。

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