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聖女のやる事じゃない件について  作者: 無月公主


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36話【交渉と選択】

朝日が射し込む王城内の医療室で、アビスはゆっくりと目を覚ました。その目はまだ眠気に濡れていたが、少しずつ周囲の光景が彼の意識に浸透していく。


アビスは自らにかかっている魔法を確認する。追跡魔法、決められた相手とのみ下心を許される魔法、そして自分の約20年分の時間が切り取られている魔法。彼はこれらの魔法が聖女と呼ばれる生き物に与えられているという情報を再確認した。その事実は彼を少し悩ませた。


窓から差し込む暖かな光を浴びながら、自分が彼女にどれほど執着していたのかを実感しました。彼女の存在は彼の心に深く根付いており、彼女なしの世界は考えられないほどだった。これほどまでに彼女に心を奪われていたことに、アビスは不思議に思いました。


アビスは、アメリアと過ごした時間が、彼にとって非常に楽しいものであったことを思い返しました。彼女とのひとときは、彼の心を温かい幸福感で満たしてくれた。その思い出は、彼にとって貴重であり、心の支えとなっていました。


孤独な時が最も心地よく、失うものもなく、無敵であると感じていた。しかし、アメリアと共に過ごした時間は、そのどれもが何物にも代えがたいほど楽しいものだった。


アビスは昔、聖女に関する文献でいくつかの興味深い情報を得ていた。その中には、聖女は無意識のうちに魅惑や魅了の術を発動させることがあるという記述があった。自らもその影響を受けていたことに気付いた。その甘美な感情は、彼を狂わせるほどだった。また、軍の総司令官であるアズレイという男も、教会の関係者でありながら、アメリアと接してからは彼の側についているように見えた。襲撃が起こった日には、彼は本来ならばアメリアを見捨てなければならなかったはずだ。しかし、彼は軍を率いてアメリアとティアンナを守り抜いてくれた。

アズレイもおそらく、自らの行動について疑問を抱いていることだろう。アビスはそう考えた。


アビスは魅了の術が解けた今も、アメリアと過ごしたあの楽しい日々を思い出しては胸が熱くなるのを感じた。1日中彼女のことを考え、はしゃぐ日々は彼にとって至福の時間だった。その想いが激しく渦巻き、一筋の涙が彼の頬を伝った。


「アメリア…。」


アビスがそう呟くと、シャッとカーテンがめくられ、ティアンナがフンと鼻を鳴らしながら現れた。「起きたようですわね。」とティアンナは偉そうな口調でアビスに言った。


アビスが「悪い、心配をかけたな。」と言うと、ティアンナは「心配なんてどうでもいいわ。それよりも、早くアメリアお義姉様を探しに行ったらどうです?半年後には婚約式が控えていますのよ。」と厳しく言った。


アビスは重い眉を寄せ、「ティアンナ、何かおかしなところはないか?アメリアのことを思い出すと…そうだな、感情が湧いてこないとか。」と問いました。


ティアンナは微笑を浮かべ、「お義姉様のことですか?確かに、私も感じますわ。まるで心の重荷が軽くなったような感じです。以前は、少し…違った感情がありましたわね。」と答えました。


アビスは深いため息をつきながら、理解が追いつかない感情に苦しむ心情を抱えていました。彼は静かに頷きながら、「そうか。」とだけ口にしました。それでも彼の心は揺れ動き、自分がアメリアに惹かれていたのは、ただの魅了の影響だけではないと感じました。結局のところ、彼はアメリアの傍にいたいし、彼女を愛したいのです。


「さっさと探しに行きなさい。これは王女からの命令よ!」とティアンナが厳しく言うと、アビスは静かに頷きましたが、彼の表情には深い考えが浮かんでいました。


「いや、先にやる事がある。」とアビスが答えると、ティアンナは不満げに眉を寄せます。「こうしている間もお義姉様の身に何かあったらどうしますの?」と問いかけました。


アビスは静かながらも断固とした口調で語りました。「アメリアには俺の20年分の時間を切り取った分身体をアメリアの魂に刻み込む形でつけてある。安全だけは保障できる。俺がついているのと変わりないからな。俺がついていながら今ここにいないという事は、やらねばいけない事があるようだな。」


ティアンナはアビスの言葉に不快感を隠そうともせず、顔に現れました。「流石に気持ち悪いですわ。」とドン引きしますが、その直後に興味津々な表情に変わり、「それよりもやらないといけない事ってなんですの?」と尋ねました。


アビスは深い溜息をつきながら、ティアンナの興味津々な視線に応えました。「お前とルティーの身の安全だ。少し国を変えてやらないとな。俺が正気でいるうちに。」彼の声には、強い使命感と同時に、深い不安が滲んでいました。



アビスは椅子から服を取り、身にまとう。その姿勢は、まるで重い使命を背負う者のようであった。ティアンナは彼の後ろに近づき、不安げに問うた。「どういう事ですの?正気でいるうちとは。」


アビスは深い溜息をつきながら、ティアンナに向き直った。彼の眼には、決意が宿っていた。


「聖女には特殊な能力、人を魅了する力がある。治癒を施すと同時にな。それが解けた今、俺はまともな思考でこの国を改革しようってだけだよ。アメリアが帰って来ても安全な国であるようにな。こんな話を子供が聞くべきではない。ティアンナは大人しく守られてなさい。」


その言葉に、ティアンナは戸惑いを覚えながらも、アビスの決意に感心しました。


アビスは、ティアンナが同じ歳なら、もしかしたら自分の心の内をより正直に打ち明けることができたかもしれないと考えました。彼は再び、アメリアの魅了に溺れ、愛を手に入れたいと強く願ったのです。それが作り出された愛であっても、それを感じることが真実の愛であると信じたのです。


――――――――

―――――――


アビスは慎重にティグルス王の部屋に足を運びました。その部屋は王城内でもっとも堂々とした雰囲気を醸し出しているようで、彼の歩みは静寂の中に響き渡りました。


「入ります」とアビスが扉を軽くノックすると、内から許可の声が返ってきました。彼は部屋に入ると、ティグルス王が座る椅子の前に丁寧に一礼しました。


「アビスよ、何のご用か?」王は心底から好意的な笑みを浮かべ、アビスを迎え入れました。


アビスは真摯な表情で答えました。「陛下、私は今後の方針についてお話したいのです。」


アビスは王の前で背筋を伸ばし、周囲の目もあるで懸命に言葉を選びました。


「陛下、私の婚約者であるアメリアが何者かに攫われてしまいました。この事件について陛下と相談させていただきたく存じます」とアビスは重々しく語ります。


王は冷静に「ルティーから聞いておる」と言いました。


アビスは次に、側妃についての問題を取り上げました。「では、側妃の件も深刻です。彼女の行動は国家の安全に直結する可能性があります。この問題は私の情報によりますと、王妃コレット様に対する強い敵対心がある事が原因だと判明しました。」


王は真剣な表情でアビスを見つめ、「コレットか…。まだ何か言いたそうだな?」と述べました。


最後に、アビスはノエル・クラリアスの関与についても話しました。「ノエル・クラリアスについても、何らかの関わりがあるように思えます。」とアビスは言いました。


王は深く考え込んだ後、「ノエル・クラリアスか。確かにな。何か解決策はないものか。」と深い溜息をつきます。


アビスは王に対して、慎重に考えられた提案を述べました。「陛下、私からの提案は2つございます。」


王は興味深げに耳を傾けました。


「まず1つ目は、側妃を王妃とし、第三王子を立太子とすることです。そして、コレット様の血筋を王室から追放することです。これによって、王国の安定と王位継承の問題を解決することができます。」


王はうなずきましたが、アビスの提案の続きを聞くために静かに待ちました。


「2つ目の提案は、側妃と第三王子を国外追放するか、もしくは私の魔法で側妃を洗脳することです。この方法ならば、王室と国民の安全が保障されるでしょう。」


王はアビスの提案を真剣に考え、深くため息をつきました。彼は重大な決断を迫られていることを理解していました。

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