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聖女のやる事じゃない件について  作者: 無月公主


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35話【俺は…心から君を…】

翌朝、爆発音が王城内に響き渡り、アビスの叫び声が空間を震わせました。彼の声はまるで狂気に取り憑かれたかのように響き渡り、その悲痛な叫びが城の至る所に反響しました。


「アメリア!!アメリア…アメリア…アメリアーーーーー!!!」


王城内では慌ただしく騒ぎが広がり、人々が動揺と恐怖に包まれました。


王城内での混乱が続く中、ティアンナは必死にアビスを追いかけました。彼女は周囲の人々が傷つかないようにバリアを張りながら、アビスの後を追い、彼を止めようとしました。


「待って!お義兄様!待ちなさい!!」


ティアンナの声は震えながらも決然としたもので、その決意が彼女を駆り立てました。彼女はアビスの悲痛な叫び声を聞いて、彼の心情を察し、その苦悩を共有しようとしていました。


アビスは追いつめられたようにしていたが、ティアンナの声が彼の耳に届き、一瞬だけ足を止めることができました。


ティアンナは息を切らしながら言葉を紡ぎました。「真夜中に…天使を見ましたわ!クラリアス家の…メーベルですわ。」


彼女の言葉にアビスは狂気に満ちた表情を浮かべ、「クラリアス…だと?」と呟きます。その時、ルティーが駆けつけました。


ルティーが息を切らせながら駆けつけ、アビスの前に立ちふさがりました。「アビス!何をしているんだ?」と問いました。彼はその姿に深刻な懸念を抱いていました。アビスの狂った様子から察するに、恐らくアメリアに何かが起こったのだろうと推測していました。


ティアンナが悲しみに震えながら告げる。「今朝、目を覚ますと、アメリアお義姉様がいなくなっていましたの。」というと、ルティーは驚きを隠せません。「散歩か何かじゃないのか?」と問い詰めますが、アビスは憤りを込めて返答します。「そんなはずがないだろう…アメリアには幾重にも魔法を施してある。それが全て途絶えたんだ。唯一の血に刻み込んだ追跡魔法ははるか遠くの北をさしている。」彼の声は震え、まるで精神が崩壊しそうなほどか細くなっていました。


ルティーは深く考え込んだ後、「北か…北と言えば、ハイドシュバルツ領か?」と問いました。しかし、アビスは首を横に振ります。「いや…さらに奥だ。」と答えると、ルティーは頭を下げて謝罪しました。「すまない、愚問だった。」彼は理解しました。アビスが指す場所は、一瞬で移動できない、つまり国外よりさらに遠い地を指しているのです。


その時、アビスの姿勢が急に崩れ、何かが彼の中で切れる音が聞こえました。アビスは無力な体勢で床に倒れ込みました。ルティーが急いでアビスの身体を支え、ティアンナも心配そうに駆け寄ります。


「アビス、大丈夫か?」ルティーが心配そうに問いかけます。


アビスは息を切らしながら苦しそうに言います。「なんだ…これは…?」


ティアンナは驚いた表情でアビスの様子を見つめ、「お義兄様!?」と尋ねますが、アビスはただ苦しそうに目を閉じたままでした。


-どこだ…、何処に…アメリア-


――――――――――

――――――――


アメリアは目の前に広がる不思議な泉のほとりで、ノエルの姿を見つめました。彼は大量の鼻血にまみれ、耳からも血が流れ、体中に傷が散らばっていました。


『どこここーーーー!!何ここー!?誘拐された!?この人誰!?キルエルさん・・・ではなさそう。あ、そうだ!アビス!!アビスーーーー!!!』


突然、アビスの分身体が姿を現しました。彼の存在は威厳に満ち、力強いオーラが泉の周囲を包み込みました。


「アメリア。傷を癒してやれ。」アビスの声は厳かで、命令的でした。アメリアは一瞬驚きながらも、彼の言葉に従い、ノエルの傷を聖なる力を使い治療し始めました。


『え!?ちょ、ちょっと…。』


アメリアは心を震わせながら、彼のそばに身を寄せ、手早く傷を手当てしました。


ノエルは苦しみながらも、アビスの行動に疑問を抱きました。「どうして...助けるんだい?」とノエルは問います。


アビスの分身体は冷静な表情を崩しませんでした。彼は静かな声で答えます。


「あの部屋に施した俺の結界をすり抜け、俺は今になるまでお前を危険人物だと判断できなかった。アメリアが起きて、俺を求めて、やっと出て来たくらいだ。これが何を意味するか…、言ってもいいのか?」


「待ってくれないかな。」とノエルは困ったような笑みを浮かべます。


アメリアは「傷が治りました。まだどこか痛みますか?」と淡々と尋ねると、ノエルは微笑みながら「大丈夫だよ。」と答え、彼女の頭をそっと撫でました。


アビスは「本体に報告する。」と言うと、ノエルは勢いよく立ち上がり、アメリアとアビスを抱き上げて、泉の中にザブンと身を投げ込みました。


泉の中で無数の気泡がぶつかり、その鮮やかな光景が次第に消えると、彼らはいつの間にか大きな国の前に立っていました。その国は壮大な城や美しい庭園、そして高くそびえる塔で彩られ、まるで幻想的な絵画の中にいるようでした。


分身体のアビスが石畳の上に足を踏み出した瞬間、胸を押さえ、苦しみながら膝をつく姿に、アメリアは驚きました。


『ちょっと!?アビス!!大丈夫なの!?どこか痛いの?』


「アビス、大丈夫ですか?」アメリアが心配そうに尋ねますが、アビスは苦しみながらも必死に息を整えようとします。ノエルも不安そうな表情でアビスの状態を見つめます。


その痛みを感じながら、アビスは思いを巡らせました。この異変は一体何なのか?自分の体が何かを知っているのか?


石畳の上で苦しみに耐えるアビスに対し、ノエルは深い呟きとともに説明を続けました。「この国はね、聖女の力を封印してしまうんだ。」


アビスは耳を疑い、苦しみながらも不思議そうに顔をしかめました。「それと俺に何の関係があるっていうんだ。」


ノエルは静かに微笑みながら続けます。「わからないかい?何かを喪失して苦しい気持ちになっているだけだろう?」


アビスは言葉に詰まり、頭を抱えるようにして苦悩の表情を浮かべました。


『どういう事!?てか、この人誰よ!!何言ってるかわかんないよ!!』


ノエルは静かな声で続けました。「聖女の力には魅了が含まれているんだ。その魅了が解除されただけという事だよ。」


『魅了ー!?そういえば、そんな小説いっぱいあった気がする!!私にもあったって事!?』


アビスはその言葉に驚きを隠せませんでした。彼は知らないうちに魅了されていて、その影響を受けていたことを理解し始めました。


ノエルは冷静な視線でアビスを見つめました。「これでも君はまだアメリアに執着するかい?」


アビスはしばらく考え込んだ後、「アメリアへの思いは変わらない。彼女は私の全てだ。」と胸の内を語りました。


『アビス・・・。』


アビスの答えに、何故かノエルは少し安堵したような表情を浮かべた。まるでその言葉が聞きたかったかのようでした。しかし、アビスはその表情の真意が分からずに顔をしかめました。


ノエルは微笑みながら、「本体の君がここへ辿りつくまでの間、君たちはここでゆっくり過ごしてみないかい?」と提案しました。


アビスはノエルを睨みつけ、「何のメリットがある?俺はアメリアと一刻も早く帰るべきだ」と言いました。


ノエルは静かに問いかけました。「ここには君のお父さんとお母さんが滞在しているところだと言ったら…どうする?」彼の言葉に、アビスの表情が一変しました。


アビスは驚きと不信を隠せませんでした。「なんだと?俺の?・・・お前は何を知っている?」と問うと、ノエルは微笑んで答えました。


ノエルは微笑みを浮かべながら、アビスの疑問に答えました。「君は、はここで生まれ、ここの輪廻から外されて神の国へ送られた。ここで過ごせば君のルーツを少し知れるけど、どうかな?」


アビスはその言葉に苛立ちを隠せませんでした。「何故、本体ではなく分身体の俺なんだ。そもそもアメリアだけをここへ連れてこようとしていただろう!」と怒鳴りました。


ノエルは静かな口調で言いました。「君がややこしくさせたんだ。君がルティー王子と関わらなければ、本体ごと連れてくるように誘導したさ。とにかく、本体がくるまでの間はここで過ごしてほしい。もう色々と気付いてる君なら僕の事を絶対に殺せない。アメリアを軟禁して嫌でも滞在してもらう。」

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