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38 ピシィ街へ

この話を読んでくださる全ての方に感謝いたします。

ありがとうございます。

 今日は、先日採取した薬草を卸しに、生産ギルドにやってきた。

 フルアも、輪ゴムを卸している。フルアの足元に寄り添って立っているピシィに、マールが気が付いた。


 「もしかして、森の猫の子ども?可愛いわね。大人になった森の猫は、ちょっと怖いのにね〜」

 

 「大人の森の猫は、怖いんですか?」

 

 「ん〜〜、なんて言ったらいいのかしら〜?その辺にいる猫に比べたら、大きいっていうのもあるんだけど、ちゃんと飼われている猫なのに、“オレの近くに来たら、怪我するぜ!”みたいな?そんな雰囲気を醸し出してる猫が多いのよね〜だから、私はちょっと近くには寄れないわね〜」

 

 フルアは、ピシィを抱き上げ「大きくなったら、そんなに怖い子になっちゃうのかしら?」そう言って見つめた。人前でのピシィは猫に徹してるのか、ニャーンと鳴き声をあげ、ぺろりとフルアの頬を舐めた。それを見たマールは「まるで、そんな事ないよって、言ってるみたいね」と言って笑った。


 「森の猫は、強くて賢いって言われてるから、フルアちゃんを守ってくれるわね。頼もしいわね」


 その時、後ろから荒げた声を掛けてきた男がいた。


 「おい!その猫、俺が捕まえて飼ってた森の猫じゃねぇか!おい!そこのちっせいの!盗んだのはお前か!」


 突然の怒鳴り声に驚いたフルアは、何も言えなくて見つめるだけだ。

 すぐに、ウールスが間に入って来た。


 「あんたの猫は、どこで捕まえたんだ?この猫は、俺の家の近くで保護した猫だ。この子に懐いたから、飼う事にしたんだが」


 「ウ、ウルッカの森で捕まえたんだ。俺は、ウルッカの森の近くに住んでるからな!」

 まだ強気の男に、ウールスは静かに答えた。


 「ウルッカの森近くで飼ってた猫が、俺の家に来るなら、ノアの森を抜けて来た事になるな。この猫は、魔物か?どう見ても、違うだろ。お前の家で飼ってた猫が逃げて、ノアの森に入ったなら、もうすでに魔物化されてるかもな。最近逃げたのなら、まだ間に合うかもしれないがな。大切な猫なら、ノアの森に入って探したらどうだ?」


 「お前がさっさとその猫を渡したら、俺に文句はねぇんだよ!」

 男は、ウールスの話を聞かずに、フルアに怒鳴った。


 「渡す理由がないだろ」

 

 「お前に話してないんだよ!そこのちっせいのに言ってんだ!お前は、関係ないだろ」


 「あるから話してる。俺が保護者だ」


 その時、受付の奥からウールスと同じ程の背の高さの大柄な女性が現れた。


 「キリスさん、さっきから何言ってるんですか?あなた、言いがかりも甚だしいですよ。大体、猫どころか生き物なんて、飼った事ないじゃないですか…子ども相手なら、何をしても良いって事無いんですよ。先程の話がわかってなかったんですか?さっきも言いましたけど、私と同じ村だからって、優遇なんてないんですよ。ギルドは公正が命なんですから。先程、ギルド長の権限で、最後通告しましたよね。この件でキリスさんとうちのギルドの付き合いは終わりました。もう、うちに来てもらっても、何も買いません。これ以上、居座ってまだトラブルを起こすなら、見回りの騎士に突き出しますよ」


 ギルド長にそこまで言われ、言いがかりを付けていたキリスはすごすごと、ギルドを出ていった。


 ギルド長は、フルアの方を向き座って目線を合わせた。


 「怖い思いをさせてごめんなさいね。こんな事がない様に、気を付けるから、これに懲りずにまた来てね」


 「大丈夫です。師匠も守ってくれましたし、ピシィ…この猫は、誰かの物を盗んだんじゃないって、自分が一番知っています」


 「ありがとう。そう言ってもらえると、助かるわ」


 「ウールス君、ごめんなさいね。あなたの大切なお弟子さんに、怖い思いをさせてしまったわ」


 「悪いのはあの男で、コモアラさんじゃないですから。それに、あの猫はフルアから離れませんからね。フルアから、無理に離そうとしたら、引っ掻かれるだけじゃ済まなかったかもしれませんよ」


 コモアラの目が、ピシィに向いた。

 見定める様な視線に、フルアの心臓が跳ねた。


 ふっと視線を緩め、ウールスに向いた。


 「良い森の猫ね。私でもわかるわ。あの猫は、もう誰がパートナーか知ってる顔ね。パートナーというより、フルアちゃんを守るって顔をしてるわ」


 「流石、Aランク冒険者のコモアラさんだ。何を考えててるのか、わかるんですね」


 「いやね、元冒険者よ。もう、引退して何年も経つわ。今は、このギルドを盛り上げて、より良くして行くのが目標なの。私は、いつでも目標に向かっていくのが好きみたいなのよね」


 「俺とフルアもこれからも、このギルドでお世話になります。よろしくお願いします」


 「それは、こちらのセリフよ。これからも、沢山良い品を持ってきてね。待ってるわ」



 

 街では、ただの猫のフリをしていたせいなのか、ピシィは少し疲れた様だった。

 

 《あの男、近づいてきたら、引っ掻きまくって、噛みちぎって再起不能にしてやろうと思ったのに。ウールスは、あの男を守ったな》


 「師匠は、私を守ってくれたのよ。あんな男を守ってなんかないわ」


 「ピシィはなんて言ってるんだ?」


 「あの言いがかりをつけてきた男を、引っ掻きまくって、噛みちぎって再起不能にするつもりだったって。師匠が、あの男を守ったっていうんです」


 「あの男を守るつもりはなかったが、ギルド内で流血沙汰は困るな。ピシィを連れてくるなと言われたら、困る」


 「それにしても、ギルド長のコモアラさんがピシィを見た時、本当は猫じゃないって、バレるかと思いました」


 「あの人は、長く冒険者をしてた人で、数少ないAランクの人だ。ノアの森にも入って、魔獣なんかも狩ってたぞ。魔力はそんなに高く無いって聞いてるから、補助の魔道具を持ってたんだろうがな。だが、これで、フルアがピシィを連れ歩いても、大丈夫だな。ピシィがフルアの猫だって、認知させられたしな」


 「そうでしょうか?また、違う大人の人が、ピシィを取り上げようとしたら、どうしよう」


 「あんな大騒ぎがあったんだ。噂はあっという間に広がるぞ。あの男の情けなさも一緒にな。街の者は、噂が好きだからな。数日もしたら、この噂を知らないヤツなんて、いなくなるぞ。あの男も、この街では、過ごせないだろうな」


 怪我はしなかったあの男、噂によって、再起不能となっていた。

 噂では、南の街に逃げたらしい。

 


 

 

 

最後まで、読んでくださってありがとうございました。

感謝いたします。

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