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37 ある日の主

この話を読んでくださる全ての皆様に、感謝いたします。

ありがとうございました、

 ファルナス皇国の皇帝は、この国最高位の神官である事を義務付けられている。


 皇帝が祈る祭殿は、周りは木に囲まれ、木の外は深い堀が張り巡らされている。

 そこは、建国の時から変わらずありつづけ、女神の力が最も強く残された神聖な場所なのだ。


 シュミーゥレレイが、住んでいた屋敷も現存する。それは、皇帝になった者だけが知る事実だ。そして、シュミーゥレレイが、不定期で甦る事も。

 

 不思議な事に、甦るのはいつもファルナス皇国以外で甦るのだ。


 甦りを知るには、常にこの祭壇で祈り続ける事が大切となる。

 すると、初代のシュミーゥレレイの眷属となった精霊が甦った事を、知らせてくれるのだ。


 精霊というには、あまりにも大きな力を持つという。

 怒らせる事と、国が無くなる事は同義だ、と伝えられている。


 15代皇帝のファルコ・ズゥワーキ・ファルナスは、不定期で現れる女神(生まれ変わり)と、力が偉大すぎる精霊もどきにうんざりしていた。


 ファルコは、女神を信仰しているし、教えも守っている。

 だが、女神の生まれ変わりという人物は、今ひとつ信じきれていないのだ。


 皇帝のみが継承する文書には、歴代の生まれ変わりなる人物の人となりが記されている。紐解いてみると、初めの頃こそ、流石に生まれ変わりだと思える奇跡が記されてあったが、最近(といっても前回は150年ほど前だが)は、記憶こそあったものの、奇跡を起こす事も無く、静かに過ごし儚い一生を終えたという。女神が甦る事こそが、ファルナス皇国たらしめん、と信じて止まない皇帝もいた様だが、ファルコにとって、信奉するべき女神は、初代のシュミーゥレレイのみであって、甦ったとされる人は、信奉すべき女神ではないのだ。


 皇国は、出来たばかりの村の様だった時と違い、国民も増え、周辺国の中でも力を持つ様になって来ている。皇帝は、神官でもあるが、その前に民を潤す為の礎とならねばならない。民あっての皇帝であり、神官であるのだ。たまに甦る女神に右往左往していては、周辺国にいい様にされてしまう。


 そうは、思っているのだが…ファルコは祭殿で、何度目かのため息をついた。


 事は、8年前。

 日課である、女神への祈りの時に、精霊もどきが突然現れた。コモヘルンデス国に、シュミーゥレレイの生まれ変わりが生まれた、という。8年後に迎え入れよと言い残し、消えていった。


 それから、ファルコはこの神殿で、ため息ばかりついている。


 8歳の子どもにどうしろというのだ?その子どもから、こちらが教えられ、学ぶのか?

 文句を言おうにも、精霊に人の常識は通じないだろう。

 その子どもが本当にやってきたら、あのシュミーゥレレイの屋敷で、適当に過ごさせよう。何か一つでも、奇跡を起こしてくれたら、僥倖だ。


 そう考えを固めたら、気が楽になった。


 そう考えていた矢先、またあの精霊が現れた。


 「スミレは…もういなくなってしまった…これからは、現れる事はないだろう。そして、私もこの国にやってくる事は、ない。ファスナスの子孫よ。さらばだ」


 そう言って、消えていった。




 ファルコは、心の重荷が無くなり、晴れ晴れとした気分だった。


 



************




 ファルナス皇国に、スミレが現れなくなる事を伝えた主は、その足でフルアの父である、メルゴールド伯爵の元に向かった。




 主の言葉は、契約であり、反故にされる事は断じて許されざる事なのだ。


 『大切に慈しむ様に。沢山の事を学ばせる様に。そう申したであろう。私を謀ったか』


 怒り心頭の精霊を前に、メルゴールド伯は平伏したまま答えた。


 「と、とんでもございません…私は、た、大切に慈しんで…育てて…お、おりました……シャライナは…ひ、人見知りゆえ、1人で過ごすのを…好んでいたので、無理に…人前に出さない様にと、心を…砕いておりました…恐れ入りますが…どうか…身体の拘束を…お解きくださいませ…」


 『お前の考えは、よくわかった。ーーーお前の子であり、女神の生まれ変わりのスミレは、もういなくなってしまった…』


 「あの子が…死んだのは、盗賊…のせいでして。迎え…が来ないので、私どもで、馬車…を仕立てて、送り出した途中に…悲しくも…あの、い、息が…く、くるし……」


 『お前を殺しても、スミレは戻らない。そうだ、スミレを育てた礼はしてやろう。お前の領地のタンジェル領は、鉱石が取れるのであったな。楽しみにしとくが良い。それが、私の礼だ』


 そう言って、さっさとノアの森に戻ってきた。


 あの子はスミレではなく、フルアという名で新たな家族の元で、笑って過ごしていた。だから、あの男の命の灯を消す事なく、領地の鉱石を消した。跡形もなく。もう、あの土地で鉱石の採掘は出来ないだろう。譲歩してやったのだ。有難いと思っているだろう。


 昔は、風の力しか無かったが、他の精霊が消えそうになる度に、私に力が移行されて、地の力、火の力を持つ様になってしまった。私が欲しかったのは、そんな力ではなく、スミレと過ごす時間だけだったのにーーー


 フルアは、スミレとは違うが、あの子と過ごす時間は楽しいかもしれない。




 あの子がノアの森で楽しめるよう、森を見廻らねば。


 

最後まで、読んでくださってありがとうございました。

 

感謝いたします

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