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34 最後のスミレ

土曜日の投稿分を寝落ちによって、変な時間に投稿したので、本日分投稿いたします。

よろしくお願いいたします。


この話を読んでくださる全ての皆様に感謝いたします。

ありがとうございます。

 「最後のスミレ、こちらに来てもらえるだろうか」


 ウールスに抱き上げられたままのフルアは、ウールスとルーンの顔を見た。


 「大丈夫、主はフルアに酷い事はしないよ。それは保証する」

 ルーンの言葉に後押しされて、ウールスはそっとフルアを降ろした。


 フルアも、おずおずと主に近付いていった。


 主は、跪きフルアを抱きしめた。


 「スミレとの事は、全て覚えている。君が忘れようとも、私は忘れはしない。最後のスミレ、君の望みの為に、私の力を使おう」


 そう言うと、暖かな風が主とフルアを包み込んだ。

 その風は、優しく抱きしめられているフルアを慈しむような、愛を感じた。

 フルアの頭の片隅には、風にそんな事を感じるなんて、おかしいと思いつつもその思いは消えない。


 『スミレさんは主に愛されていたんだ。大切にされていたんだ』

 そう思い至った。


 自分の今までの人生が、主によって翻弄されていたのかもしれないと、思ったが恨む気持ちもない。そして、父の事も。ショックは受けたが、もうどうでも良い。2度と会う事はないのだから。忘れよう、そう思えた。それよりも、私は普通の魔力量になるんだ。それは嬉しい。主に感謝だ。


 そんな事を考えながら、抱き締められていると、唐突に身体を離された。


 「申し訳ないが、君の魔力の泉を閉じる事は出来なかったし、魔力の器も小さく出来なかった…」


 「「「えぇーーーー!」」」


 あんなに偉そう(ではないのかも知れないが)に、沢山の力を持てるって言ってたのに、出来ないって…そんなに難しい事だったのか……


 「申し訳ない。私にも出来る事と、出来ない事があるってわかったよ」


 フルアは、がっかりした。普通の魔力になると思っていたのに、ならないのはがっかりだ。だが、主も頑張ったのだろう、と考え直し、お礼を言わねばと、思った。


 「頑張ってくれて、ありがとうございます」


 下を向き、落ち込んでいる主。逆に、可哀想になってきた。


 「今までと同じなんだから、これまで通り暮らせばいい事なので、気にしないでください」

 

 そう言ってみても、主の目に見える落ち込み具合は、回復しない。


 「魔族の王、君ならできるか?」


 「僕は魔族の王じゃないって、言ってるじゃない。それから、僕にも出来ないよ。魔力の器の大きさを変える事ができるわけないよ」


 「それなら仕方がない。代替案を考えよう。君は、多過ぎる魔力量が困るのだったな。それならば、通常の人の量に加減する為には、常に使い続ければ良いのだ。幸い、魔力の泉の元は少し狭くなったから、常に使いづつければ、人の魔力量ほどになるだろう」


 「使い続けるって事が難しそうです」


 「簡単にそんな事ができたら、誰も苦労しないな」


 と、フルアとウールスが言うと、主はわかっているとばかりに微笑んだ。


 「人には、わからないように出来る。大丈夫だ」


 そう言って、光の玉を出した。


 光が消えると、1匹の薄い砂色の猫の子がいた。


 「森の猫か…」ウールスが呟いた。


 「森の猫に見えるけど、このモノは、私の眷属だから、魔力を食べるのだ。魔力を食べる毎に、その力を魔力を与えた者を守るために使う。さぁ、君が与えるのだ。このモノに名と魔力を」


 急に言われ、困ったフルアはウールスとルーンを見た。

 2人に頷かれ、自分がするしかないと腹を括った。


 「名前ですか。ーーーピシィ、ってどうでしょうか?」そう言いながら、2人に尋ねた。


 「森の猫はそこそこ大きくなるよ。賢いし、強いから猟をする者が飼う人もいるし。でも、フルアが飼い主なんだよね。いいと思うよ。今は、子猫ちゃんって感じだしね」

 ルーンが笑った。


 「どんな名でも、フルアが良いなら良いんじゃないか。誰に遠慮をする事は無い」

 ウールスも、気にならない様だ。


 「では、ピシィで。おいで、ピシィ〜」


 そう声を掛けられると、猫は素直にフルアの元にやって来た。

 「魔力ってどうやったら、あげられるんですか?」

 そう言って、主を見ると「どうやってもあげられるし、慣れればこのモノは勝手に得るだろう。しかし、今は、初めだから。掌の上に魔力があるとイメージして、与えてみると良いだろう」


 フルアは、ドキドキしながら、掌を差し出した。

 自分の魔力を食べてもらえるかも、心配だ。


 「ピシィ、どうぞ。美味しいといいんだけど」

 ピシィは、フルアの掌を舐めた。


 《美味しいよ。もっとちょうだい》


 フルアの頭に、可愛らしい声が響いた。


 「え?喋るの?この猫ちゃん」

 そう言っても、ウールスとルーンはキョトンとしていた。


 「何も聞こえなかったぞ」


 「このモノの声は、魔力を与えた君にだけ聞こえるんだよ。このモノは、先程までは私の眷属だが、今はもう、私の手を離れた。君を守るモノなのだよ。沢山魔力を与えると、より懐く。君も魔力が減る。どちらにも好都合だ。これで許してもらえるだろうか。初めの望みには沿っていないが」


 主は、心配そうに尋ねてきた。


 「嬉しいです。ありがとうございます。とっても可愛いです」

 フルアは、嬉しそうだ。


 ニャッと鳴いたピシィは、魔力をもらえて満足そうだ。

 フルアの足元で、丸くなって眠ってしまった。


 「お世話って、どうやったらいいんですか?」


 フルアが主に尋ねた。


 「猫の様だが猫では無い。擬態をしているのだが、ずっとそばにいるのなら、猫の様に暮らすだろう。詳しくは、そのモノに聞くと良い」


 「私は、ファルナスの子孫にすでに最後のスミレはいなくなってしまった旨を話に行かねば。君が幸せになる事が、私の一番の望みだ。それは、初めのスミレがいた時と変わらない望みだ。この想いがある限りーー」


 そう言って、主は消えた。


 フルアの腕に残された、今はまだ小さな森の猫を残して。


 「さ、問題は解決したし、帰ろっか」


 「そうだな、帰ろう。それよりも、じいちゃん、いつから魔族の王になったんだ?」


 「困るよね。違うって言うのに、聞かないんだよね。そう言う人っているでしょ?あの主、思い込み激しいんだよね」


 ルーンが、心底嫌そうに話した。


 「お腹すいたね。早く帰ってご飯食べようよ。フルアって、料理が上手いんでしょ?僕にも、食べさせて欲しいなぁ」


 そう言われると、頑張らねば!

 「いっぱい作ります!」


 そう言って、3人で笑いながら家路についた。



最後まで読んでくださってありがとうございました。

感謝いたします。

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