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33 ノアの森の主と

先程、誤字と表現を変えたところが有りますが、筋は変わっておりません。

よろしくお願いいたします。


土曜日に投稿できなくて申し訳ありません。


この話を読んでくださる全ての方に感謝いたします。

ありがとうございます。

 3人でノアの森まで歩いて行く。

 ルーンは、歩いてノアの森に入るのは久しぶりだそうで、少し楽しそうだ。

  

 「マルトファイのところまで行くよ。あそこは今が一番綺麗だから」

 

 「じいちゃん、ノアの森の主の所まで行くんじゃないのか?」


 「僕達がいたら、勝手にやってくるから大丈夫。大体、今どこを彷徨ってるのかなんて、誰にもわからないからね。やってくるまで、楽しもうよ」


 ルーンは、そう言いながら、フルアの手を引く。


 「マルトファイはね、この時期だけ一斉に花が咲くんだ。とっても鮮やかな紅色だよ。そこにいくと、周りの空気まで、紅に染まっている様に見えるよ」


 話しながら歩いていくと、今まで何度もエキスを取りに行った場所にたどり着いた。

 そこは、何度も通った場所の筈なのに、全く違う光景が広がっていた。


 鮮やかな紅色の可憐な花が所狭しと咲き乱れていた。紅色が眩し過ぎて、聞いていた通り、周りの空気までが紅い。いつも、灰色がかっている蔓も、今日は紅く色づいて見える。余りにも、感動的な光景に、フルアは言葉が出なかった。


 「この時だけは、マルトファイは綺麗に見えるな。いつもは、輪ゴムの材料としか思えてないんだが」

 ウールスも、笑っている。


 3人は、本来の目的も忘れて、花に見入っていると、濃い魔素の霧が勢い良く現れ、3人をぐるりと取り囲んだ。もう、マルトファイの花も見えない。


 ウールスは、慌ててフルアの肩を抱きしめた。ルーンも、にこやかだが2人の側に寄る。


 そうしていると、目の前の霧が晴れ、髪の長い男の様でいて、女にも見える、不思議な人が立っていた。



 「スミレ……また、会えた…」

 そう言いながら、目はフルアだけを見ていてる。


 「私、スミレじゃありません」フルアが答える。


 「あぁ、わかってる。君はスミレの生まれ変わりだ。スミレは何度も生まれ変わって、この世界にやってくるんだ。私と約束した通りに。だから、私も君との約束通りに、君を守る」


 そう言われても、フルアには理解が出来なかった。

 「何を言われてるのか…わからない。生まれ変わりだと言われても…」


 「君は、スミレの記憶を引き継いでいるだろう?私との出会いは、覚えていない?」


 そう言われて、フルアは“スミレ”とは、前世のお姉さんの事では?と、思い至った。


 「スミレ…さん、もしかして、前世のお姉さんの事?私、前世の記憶を時々思い出すけど、その人の名前が、スミレさんって名前だって、初めて知りました。私、前世の記憶は所々しか覚えてないんです。何かのきっかけで、言葉だけが出てくる事もあるし、知識を一部分だけとか…全部を思い出す事は、もう出来ないって…思います」


 「そうなのか…今までのスミレとは、君はもう違うのかもしれないね。スミレは、ずっと私との約束を守ってくれていたけれど、全部を覚えて生まれ変わるのは、難しくなってしまったんだね…君は、最後のスミレなのだね。それにしても、なぜスミレはこの森にいるの?ファルナスにスミレの部屋があるのに。そこで私と会うはずだったのに。ファルナスの子孫は、君を迎えに行かなかった?」


 何のことだろう…フルアは急に不安に駆られた。

 「ファルナスに行くはずだった?ファルナス皇国の事?私が行くのは、厳しい修道院のはず」


 「君の父は、何も話してないの?私は、スミレを感じたからすぐに、生まれたばかりの君に会いに行った。そして、君の父とも話したよ。この子はスミレだから、8歳になったらファルナスの者が迎えにくる。それまで、大切に慈しむ様にと、伝えた。そして、スミレがファルナスで困らないように、たくさんの事を学ばせる様にと伝えた。ファルナスが迎えに行かなかったのなら、ファルナスを罰せねば」


 「ファルナス皇国の女神の名前は、スミレなの?シュミーゥレレイだったと思うけど」

 ルーンが尋ねた。


 主は、フッと笑った。

 「ファルナスは、きちんと発音できないから、シュミーゥレレイと。スミレは、いつも諦めた様に笑って受け入れていた」懐かしむように、答えた。


 フルアは、それどころでは無かった。

 『お父様は知っていた?私に対するあの態度が、大切に慈しんでるの?主に言われたから、私は図書室で本を読めた?あの日、出る時は死ぬ時という厳しい修道院に送るって、ファルナス皇国に連れていかれるところだったの?』

 頭にいろんな考えがぐるぐると回り、足に力が入らなくなってしまった。

 ガクッと力が抜け、座り込みそうになった時、ウールスが抱き上げた。


 「フルア、大丈夫か?立つのが辛いなら、俺が抱き上げとくから、もたれとけ」

 ウールスは、フルアを心配そうに見つめた。


 「君がスミレを守護してくれる者なんだね。スミレを少しだけ触る事を許して欲しい。」

 そう言って、主はフルアの手を触った。

 

 「スミレの魔力は、私の魔力と同じ。魔力に触れたら、君の今までの事がわかる。あの男は、君を大切に慈んでいなかったようだ。ファルナスは、修道院ではない。ファルナスは、スミレを女神と崇めていた。君はスミレの生まれ変わりだから、ファルナスで女神として、大切にされて暮らすはずだったのだ。…スミレ、今が幸せなんだね」主は、眉を下げて尋ねた。


 「私は、前世の記憶も細切れで…スミレさんは私だって事がわかるけど、違う人です。私はもうフルアという名前で、ここで楽しく暮らしているんです。女神なんて、なりたくない。ウールス師匠の弟子として、暮らしていきたいんです」


 「魔力に触れて、それもわかった…もう、スミレは存在しないって事だ。今までのスミレは皆、守護の者を望んだ。君はすでに守護の者がいる。君の望みは何だ?それを叶えよう」


 「何でも良いんですか?」


 「初めのスミレと出逢った頃は、風の精霊の力しか持てなかったが、今は沢山の力を持てる様に、なっている。君の望みは叶えられるだろう」


 「では、この多過ぎる魔力を減らして、街で暮らしやすい魔力量にしてください」


 「君の魔力は、初めのスミレと同じように、泉の様に尽きる事の無い魔力だ。要らないのか?」


 「街で暮らすには、不便です。多過ぎるもの。無いと困るけど。程々がいいんです」


 「では、最後のスミレの願いを叶えよう」



 そう言って、主は掌を差し出した。

最後まで読んで下さってありがとうございました。

感謝いたします。

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