29 フロアラパッシム (前)
この話を読んでくださる皆様方に感謝いたします。
ありがとうございます。
フロアラパッシムの採取は、死と隣り合わせだと言われている。
何故なら、茎の脇芽から伸びた蔓が、近くを通る生き物に絡まり、引き寄せ、養分を吸い取るのだ。
薬草と区分されてはいるが、どちらかというと魔物の部類になる。
そんな恐ろしいフロアラパッシムだが、茎の部分は解毒や病を平癒する効果がある。
蔓がどんな生き物でも引き寄せ、養分を吸い取るせいなのか、茎の部分で、毒や病原菌を消して、全て自分の養分にすると言われている。その為、新鮮な茎の表皮を取り除いた部分の絞り汁を飲ませるのが、苦いが一番効く。だが、中々新鮮な茎が手に入る事が少ないので、その場合はすぐに酒に漬けると効果が持続する。少し効果は落ちるのだが、酒の効果なのか、不思議とほんのり甘くなる。アルコール成分を飛ばすために沸かしても、効果が落ちないので、子どもに飲ませるのはこちらの方が良いと言われている。
万能薬を言われているフロアラパッシムだが、生の状態なら5日間しか効果が持たず、酒漬けのものでも、半年程経つと、効果がなくなってしまうという。
その為、どこかの街で伝染病が流行り始めると、各街のギルドに通達があり、フロアラパッシムの採取の依頼が出るのだが、採取自体が危険極まりない薬草という事で、熟練の薬草採取者に声がかかるのだ。
その為ウールスにも、ギルドからの指定依頼があった。
冒険者ギルドの受付、ザハールはウールスから酒漬けのフロアラパッシムを受け取ると、預かり証を
書き、魔道具のスタンプを押した。
「これ、預かり証です。これをギルドに持ってきてくれたら、これの代金をお支払いします。で、採ってきてくれたものは、申し訳ないけど、またギルドに運んでもらって良いですか?多分、ギルドも手薄になると思うんですよね。ここに取りに来れそうに無いです。すみません」
そう言うと、慌てて戻って行った。
「すぐに、採取に行くんですよね。私も一緒に…」
「フルア、フロアラパッシムはただの草じゃないんだ。魔物と言っても良い。葉の脇目から蔓が伸びて、近くにいる動く物を、絡めて養分にする。相手が、魔獣だろうが、虫だろうが関係ないんだ。どんな強い毒を持っていても、関係がない。全て吸い尽くす。だから、茎に毒や病を平癒する効果がある。茎で毒や病気の元を消して、全て自分の養分にするからな。それに、取り尽くす事も避けなければいけないんだ。全部採り尽くしたら、また必要な時に困るからな。再生できる範囲で採るんだ。いつかは、採り方も見せるが今はまだダメだ。フルアが近くにいると思うと、心配で俺も危ないからな。その位、危険な蔓なんだ。頑張って沢山採ってくるから、家で待っててくれ」
それを聞いて、フルアは納得した。自分が近くにいる事で、師匠を危険にさせるわけにはいかないからだ。
「わかりました。私は、師匠がお腹を空かせて帰ってきても大丈夫な様に、美味しい夕飯を作って待ってます」
「そうか、それを楽しみに頑張って採ってくるな。採取の準備をしてくる」
そう言いながら、部屋に戻った。
フルアは、そんな危険な薬草を採りに行くなんて心配だが、薬草を待っている人達がいると思うと、いかないでとも言えない。もし自分も採りに行けるなら、行ってるだろうとも思う。
怪我などをせずに、戻ってきて欲しい。そう思った時に、自分のお守りの付与の事を思い出した。
「そうだ、石に“安全祈願”の付与をして、ポケットに忍ばせて持って行ってもらおう」
そう思いつき、石を拾いに行った。片手で握れる小さな石に、付与をする。
「師匠が、安全に採取ができますように…怪我をしないで戻って来れますように…」
できた石を見てみると、金色と白のマーブル模様になっていた。
「フルア、行ってくる」
「師匠、お守りを作ったので、これポケットに入れて行ってください。安全に怪我をしないで戻ってこれるお守りです」
「綺麗なお守りだな。俺は、フルアの力を信じてるから、効果は抜群だな」
そう言って、ズボンのポケットに入れた。
「気をつけてください」
フルアは、それしか言えなかった。
ウールスも、笑って手を振って森に向かった。
フロアラパッシムは植物の魔物だが、ノアの森の中では無く、境に生えている。
その方が、ノアの森の魔素も取り込めるし、より多くの生き物が自分の近くにやってくるのがわかっているのだ。
蔓が出なければ、見落としてしまいそうなくらいに、周りに溶け込んでいる。
40センチから1メートル程の草なのだが、茎が2センチから大きいもので4、5センチにもなるので、茎を見ながら、ウールスは歩いて行った。
フロアラパッシムを見つけると、身体強化魔法を掛けて、剣を持った。
『コイツを採るのには、コツがある。
蔓が出ない内に、葉と蔓の部分一つ残して、切ってしまう事だ。
そうする事で、コイツはまた大きくなっていく。そして、俺は必要な時に大きくなったコイツを採るだけだ。そうやって、必要な時に採ってるんだが、時々思いも寄らない場所に生えている時がある。花は見た事が無い。どうやって増えてるのか、わからないな』
そんな事を考えながら、ウールスは黙々と採って行った。
いつも、ほぼ決まった場所に生えているフロアラパッシムだが、ウールスは気が付かなかった。
知らない間に、思いも寄らない場所に生えてしまっていた事を。
そして、ソイツが魔物を取り込み、グンと大きくなって1メートルを超える大きさになってしまっていた事に。
最悪な事に、ウールスはそのフロアラパッシムに背を向けてしまっていた為、蔓がそっと伸びていたのに気が付かなかった。
長らく名前が無かった、冒険者ギルドの受付のお兄さんの名前が出ました。
割とよく出てるので、初めから名前付けておけば、良かったです。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
感謝いたします。




