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27 師匠の力量

最近、自分の目標が達成できてない事にがっくりしていますが、ちゃんと着地できる様に、進んでまいりたいと思っております。応援して下さっている皆様、頑張りますので、よろしくお願い致します。

今回、少し長めになっています。


この話を読んで下さる全ての皆様方に、感謝の気持ちでいっぱいです。

本当に、ありがとうございます。

 ウールス好みの花蜜は、粘度が高く、匙で持ち上げるのにも少々力を入れて掬い上げなければいけないほどだが、その分甘味と旨味が強い。琥珀の様な濃い蜜の色をして、傾けるとゆっくり形を変えるような蜜は、料理などに使うには少々使いづらい面もあった。


 フルアは、もう少し水の量を多くし、料理に使いやすい様に、瓶を傾けると、トロリと滑らかに流れていく花蜜を作った。水分が多い為、色も薄く甘味もあっさりとしているが、料理に使うには丁度良く、使い勝手が良い。


 ウールスの最近の好みは、花蜜パンだ。

 パン作りも上手くなってきたフルア考案のパンなのだが、これを焼くと、あっという間にウールスが食べてしまう程、気に入っているようだ。


 拳大の大きさにしたパン種を広げ、濃い花蜜を一匙、パン種に乗せる。

 花蜜を包み込むようにして、丸め焼くだけの簡単なパンなのだが、一口齧ると花蜜の甘い香りが、鼻腔を刺激する。不思議な事に、焼いている間に花蜜が沸騰するせいなのか、中は空洞になっているが、内側にびっしりと蜜がついている。中が空洞になっているせいかどうかはわからないが、ウールスに言わせると「中がカラッポだから、幾つでも入る」らしい。


 今日も、花蜜パンを2人で食べながら、お茶を飲んでいた。


「メディカさんから、近い内に2人で店に来て欲しいって、連絡があった。明日にでも、行ってみよう。フルアも、ペンダントが全部出来たんだろ?手芸店に置いて貰えるか、聞いたらどうだ?」


 フルアは、頷いた。ペンダントは、全て出来ている。評判が良さそうなら、また同じように付与した石で、ペンダントを作りたいと思っていた。


「最近、ノアの森に行ってないですけど、やっぱりあの時の霧のせいですか?私、考えていたんですけど、あの時プラムルを採っていた時でしたよね。プラムルと霧が何か関係があるんでしょうか」


 フルアは、前世で気に入っていた梅酒や梅干しを、ウールスにも味わって貰いたいとは思っていたが、危険なのであれば、採取しなくて良いとも思っていた。

 大切なのは、梅酒なんかではなく、ウールスの安全なのだから。


「どうだろうな。そんな事じゃない様にも思えるが…一度冒険者ギルドに行って、他の者が濃い霧に襲われそうになったとか、聞いてないか尋ねてからノアの森に入っても良いんじゃないか、って思っている。フルアに危険があるのは、まずいからな」


「師匠は、濃い霧の中に入った事はあるんですか?」


「一瞬だけ、体の傍を通った事はある。すぐに離れたから大丈夫だったが、厚い布を鼻と口で押さえながら、息をしている様な気がしたな。息が出来なくはなかったが、包まれてしまったらわからないな。他の人よりも息ができる分、長く苦しいかもしれないな」


 ウールスは、ため息を吐きながら答えた。


「私は見ただけですが、追いかけられている、と感じました。霧は意思を持っている、とも思いました。師匠が抱っこしてくれてたお陰で、怖い気持ちはなかったんですが、捕まりたくなかったです」


「そうか…霧の事は様子見だな。中に入らなくても、薬草はあるからな」


 甘いパンのオカズが、重い話になってしまった。


 ウールスは密かに、ノアの森の空気の感じ方が違うフルアなら、霧の中に入ってもフルアと自分では、感じ方が違うだろう、と推測した。だが、危険は排除したい。フルアを危険な目に合わせたくない。フルアは、ノアの森には入らせない方が、安全だと考えていた。





 ************



 次の日。

 ウールス達の家から街は遠いから、フルアを休憩させる為にも、近い所から用事を済ませていく事にした。


 初めは、冒険者ギルドだ。

 ウールスがさりげなくノアの森の事を聞いたのだが、誰も濃い霧に追いかけられた事はなさそうだ。

 ウールスは、濃い霧が森の入り際の、かなり手前まで来た事を伝え、他のノアの森で採取する者に、注意喚起を頼んだ。


 次の用は、手芸店だ。

 フルアは、ペンダントを見せると、店員は主人を呼んできた。

 初めて来た時に対応してくれた女性は、ミィロアさんというらしい。

 今日は、濃い茶色の髪の毛を頭の上でお団子にして、レースの花を一輪飾っていた。

 お洒落な女性だ。


 ミィロアにペンダントを見せた。

 付与の事は伝えずに、見せるだけにした。伝えて、期待外れだと申し訳無いからだ。

 ただ、これを付けて喜んでくれる方が良い、と思った。


「んまぁ、可愛いわぁ。いいわね、これ。素敵よ。これ、定期販売しない?するでしょ?こんな可愛いもの、みんなが欲しがるわよ。あ、お父さーん。販売の取り分の話をしたいですから、こちらに来てもらってもよろしいでしょうかぁー?」


 以前に案内されていた、窓際の椅子に座ってのんびりしていたウールスに声を掛けた。

 ミィロアさんの弾丸トークに、若干狼狽えながらも、フルアの隣にやってきた。


 ウールスとフルアが親子ではなく、師弟だと知ると「お弟子さんのフルアさんが作られた品の売り上げは、如何程師匠のウールスさんの取り分になるのかしら?」と、歯に着せぬ質問をした。


「フルアが作った物に対価が発生するなら、それは全てフルアの物だ。特に、それは俺は何も教えてもいないしな。金は、全てフルアにやってくれ。ただ、相手が子どもだからって、搾取はやめてくれ。フルアに不利益になる様なら、手を引かせる。フルアが何を言ってもだ」


 ウールスは、ミィロアを見据えながら言った。


「あらやだ。そんな怖い顔しなくても大丈夫ですよ。お弟子さんを可愛がられてるのね。そういう師弟関係もいてるから、ちょっと確認しただけですよ。この店は、委託販売で儲けてるんじゃないんですよ。売り上げは、布や糸なんかの販売でちゃんとありますからね。作品を委託販売してるのは、お客さんが作った物を誰かが見て、自分も作ってみたいと思って貰う事が、大事なんですよ。それで、本来のお客さんが増えたら、こちらに利益がありますからね」


 ミィロアは、そう言って笑った。


 ミィロアさんは、ウールスと委託の値段と取り高を話し合い、フルアに確認をしてきた。

 フルアは、ペンダントがいくらで売れるのかも見当もつかないので、「それで良いです」と、答えるのみだった。

 また、追加のレース糸を買う時に、ミィロアがフルアに囁いた。


 「良いお師匠さんに巡り会えたわね。あなた、運が良いわよ」


 フルアは、笑って頷いた。

 本当に、素晴らしい師匠なのだ、みんなに自慢して回りたいくらいに。

 実際にそうしたら、師匠は照れてどこかに行ってしまうかもしれないから、しないだけ。


 

 ウールスが褒められると、フルアの心が温かくなっていった。

 

 


最後まで読んでくださってありがとうございます。

感謝しています。

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