24 付与石を使って
この話を読んでくださる皆様方に感謝致します。
ありがとうございます。
色んな所に寄ってしまったので、家に戻るのがすっかり遅くなってしまった。
したがって、夕飯は簡単なものを作る事にした。
ウールスは、裏の畑から、トマトと葉物野菜を採りに行き、軒下に吊ってあるタマネギを一つ取って、台所に戻った。その間にフルアは、ウールスの好物のジャガイモを洗う。今晩は、皮ごとくし切りにして、揚げ焼きにする。鉄鍋に油を少し多めに入れ、切ったジャガイモを入れる。時々ひっくり返しながら、火が通るまで焼いたら出来上がりだ。皿に盛り、塩を軽く振ってできあがりだ。
塩漬けの肉は薄く切り、焼いている間に、朝焼いたパンを横半分に切り、軽く火で炙る。そのパンに切ったトマトと葉物野菜を乗せ、肉を乗せたらパンで挟む。味付けは、塩漬けの肉が塩っぱいのでそれだけで、丁度良い。それに、朝多めに作ったスープを付ければ完成だ。
ウールスは、揚げ焼きのじゃがいもを、たいそう喜んで沢山食べていた。
「師匠って、本当にジャガイモが好きですね。美味しく食べて貰えて、私も嬉しいです」
「ジャガイモ…自分がこんなに好きだなんて、知らなかった。この料理も旨いな」
「今までは、どんな料理で使ってたんですか?」
「今までか……蒸したり、スープに入れてたな。そこそこ旨いって思ってたが、こんなに旨いとは思ってなかった。フルアに初めて飲ませたスープにも、ジャガイモは入れてたぞ。これを入れて煮込めば、トロッとして、口当たりが良いからな」
「あのスープ!本当に美味しかったです。あんなに色々な野菜の味がするスープ、初めてです。今度、一緒に作ってください。私も、覚えたいです」
ご飯を食べながら2人で話す時間は、ゆったりと穏やかな時間が流れている。
急いで作ったご飯も、そうやって食べると、更に美味しさが増す様だった。
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フルアは、先日買ってきていたレース糸を取り出した。
すぐに作り始めるつもりだったが、薬草を採りに行ったりとなかなか忙しく、時間が取れなかったのだ。
カバンから、レース針を出した。
これは、あの家から出る時に、カバンに入れた自分の持ち物の1つだ。
そのレース針は、とても古い物でフルアの曽祖母の物だったらしい。
フルアは、会った事はないのだが、曽祖母が歳を取りあまり歩けなくなってから、その部屋で過ごしていた部屋だった。その為、箪笥の引き出しにレース針や曽祖母が作ったのであろう、色々な作品がしまってあった。それを眺めていた時に、父が入って来たが、取り上げられる事も無かったので、レース編みをする事は黙認された、と理解していた。
そのお陰で、今、こうしてレース編みができる。
取り上げなかった父に感謝した。
一目一目、丁寧に編んでいく。
石の大きさは、どれも違うから、編み進める度、石にレースを合わせながら、編み進めていった。
健康を付与した石は、薄い黄色になっているから、薄い緑色のレース糸を使い編んだ。ふと、思いついて片面に、ハートのモチーフを付けた。この世界では、ハートの形のモノはないから、鋭さの足りない矢尻の様に思えるかも知れないが、構わなかった。誰かが、可愛いって思ってくれたら良いのだ。
幸運の付与の石は、薄い黄緑色だから、白のレースで片面に四葉のクローバーのモチーフを付けた。花弁が少ない花だと思ってくれても良い。ラッキーには、四葉のクローバーしかないのだ。
安産を付与した石は、薄い赤というか、桃色になった。前世の国と違って、こちらはまだまだお産で亡くなる人も多い。殆ど家から出なかった自分ですら、良く聞く話だ。だから、安産の付与にした。
この石には、どんどん伸びる蔦をイメージして作った。
2つづつ作ったので、レースに包まれた石に細い革紐も通して、両端を結んで出来上がりだ。
自分で作って言うのも変かもしれないが、中々可愛い物ができた様に思う。
早速、師匠に見てもらおうと、部屋を出ていった。
「師匠、見てください。出来ました」
フルアは、6個のペンダントを見せた。
「女性が、喜びそうな綺麗なペンダントだな。で、フルアはどれを付けるんだ?」
「え?私ですか?自分で付ける事は、考えて無かったです。師匠、どれが私に合いますか?」
ウールスは、フルアにいきなりハードルの高い問いを投げかけられた。
ーーーーー女性に、『私に似合うものを選んで?』と言われても、大抵女性の頭の片隅には《これ》という正解があったりすることが多い。この場合、男性は、自分が女性に似合うというものを選ぶのではなく、《これ》を当てる、これこそが、正解の場合が多い。そして、これを正解するのは、中々難易度は高いのだ。
勿論、センスがとっても良い男性は、素直に自分が女性に似合う物を選べば良いのだ。
例外もあるので、必ずしもこれが正解かどうかはーーー女性次第だ……
ウールスは、少し狼狽えた。
今まで、女性に何かを選んで買い与えたことなど無い。
ルーンなら、サラッと選べるだろうが、今、ここには居ない。
初めて『選んで?』(とは、言っていないのだが…似た様なものか…)と言われたのが、我が弟子8歳女子とは。
悩んで、決めたのが桃色の石に薄い緑のレースが掛かった物だった。
「これが似合うと思う。これは、一番可愛らしい色だから」
「可愛らしい色が似合うって、言われるのは嬉しいんですが…これ、安産の付与です。私、これが必要な時は、ずっと先だと思うんです…」
フルアは、これは別にしとけばよかったと、後悔したが遅かった。
ウールスは、大慌てで「付与は、健康と幸運と安産だったな。フルアには、健康だ!やっぱり元気が一番だ!これ付けて、大きくならないとな!」と、誤魔化した。
フルアもホッとした様子で「そうですよね。子どもは、健康が一番ですよね。これを自分で付けます」と、言いながら、薄い黄色の石のペンダントを付けた。
キラキラした派手さは無いが、レースが可愛らしいペンダントは、フルアに良く似合っていた。
後から、言い訳なのですが、子どもが誰かに習わずして、レース編みなんて出来ないのでは無いかと思った方がいらっしゃると思います。
しかし、そこはファンタジーの大いなる力を利用させていただきました。
フルアは、素晴らしく勘が良く、見本と編み図を見比べて理解ができた、と言う設定です。
ファンタジーですから。
大目に見ていただけると、嬉しいです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
感謝しています。




