18 ルーン現る
この話を読んでくださる全ての方に、感謝いたします。
ありがとうございます。
最近は、お昼になると暑くなってきている。
そのせいか、薬草採りは午前中に済ませ、午後からは家での作業に終始していた。
そんなある日、ウールスは、随分前に購入した、割れた魔石の事を思い出し、フルアに魔石に魔力の入れ方を教える事にした。
「フルア、魔石に魔力を入れる練習をしてみよう」
「これは、割れた魔石だが、まずこれを使って、魔石に魔力が吸い込まれる感覚を覚えて欲しい。自分の魔力をこの魔石に移す様な感じなんだ。カップに入っている水を、もう一つのカップに移す様な感覚と言えばいいか…やり方としては、掌で挟んで、魔力を込める。まぁ、実際にやってみるのが早いかな」
そう言いながら、2センチも無い小さなかけらを、フルアの掌に乗せた。
フルアは、白い小さなかけらを、じっと見つめた。
「これ、魔力が入ったら、自分で分かりますか?」
「そうだな。俺は、少し熱を持つ様に感じるな。冷たく感じる人もいる様だし、魔力の感覚はみんな違う様だ。出来上がった魔石は、氷の様に透明になる。魔力が入り切っていないと、濁るから価値が下がってしまう。魔力は、一度入れ始めたら、途中でやめる事が出来ないんだ。一度魔力を入れるのを止めると、もうそこでは入らなくなってしまうから、入れる時は、ゆっくりずっと入れ続ける。これ以上はいらない様になると、魔石の魔力に、手が押されてしまう様に感じるな。これも、人によって違うみたいだから、練習して自分の感じ方を知るしかないな」
フルアは、しっかり頷いて、頭の中でイメージを膨らませた。
「カップに入っている私の魔力を、魔石のカップに移して行く……」
すると、掌から魔力が流れるように、魔石に吸い取られて行くのがわかる。
何も音はしないが、小川の水が流れるように、サラサラという音がする様な気がした。
「流れていく…」
そう感じたと思ったら、魔石から自分の魔力が溢れて来たように感じた。
そこで、魔力を込めるのは止めて、魔石を確認した。
冷たい氷のような、透明な魔石が出来上がった。
「出来た!」
「綺麗な魔石が出来たな。上手いぞ、フルア」
「ありがとうございます。もう一つ、試してみても良いですか?」
「あぁ、勿論良いぞ。これはフルアの魔石だから、好きなだけ練習して良いんだ」
もう一つも、綺麗な魔石になった。
「自分の魔力は、水の様に少し冷たい気がします」
「そうか、自分の魔力の感じ方は、人それぞれだからな。自分の魔力を、感じられる事が大切なんだ」
そう話している時にドアが開き、ルーンが入ってきた。
「お昼からは、暑いよね。今日は何をしてるの?」
ルーンは、フルアに向かって尋ねてきた。
「魔石に魔力を込める方法を教えてもらってました」
「ウールスの教え方は、分かりやすいかい?」
「はい、私にもわかるように、教えてくれています。助かってます」
「ウールス〜〜、良かったね。弟子に、褒められてるよ」
ルーンは、独特な物言いでウールスを労った。
「フルアは、ノアの森に採取しに行かないの?フルアの魔力なら、ノアの森は怖い場所じゃないんじゃない?」
ルーンにそう尋ねられて、二人は顔を見合わせた。
口を開いたのは、ウールスだ。
「三週間前に、一度行ったんだ。チリチリーリの実を採りに。帰りにタヌーンが出て、フルアが魔力で狩った」
「なら、問題は無いんじゃないの?何を悩んでるのかな?」
フルアが、答えた。
「私の使った魔法が…前世の魔道具、というか魔力では無い物で動く物なんですが、それをヒントに魔物を狩ったんです。あまりにも突飛だった様で、師匠が心配してくれて…」
「ウールスが心配して、ね。ウールスは、何が心配なの?」
「あの魔法は、透明な箱にタヌーンと水が入って、水がぐるぐる回って箱の中が嵐の様だった。水がなくなったかと思ったら、今度は風が吹いてタヌーンの周りの水がなくなって、綺麗に乾いた。一体どれだけの魔法が組み合わさってるのか、わからないくらいの魔法だった。あれを、王宮に知られたら、兵器にされてしまうと思ったんだ」
「度肝を抜かれるって、その事だね」
そう言いながら、ルーンはフルアに向かって尋ねた。
「フルアは、どう生きて行くのが幸せなの?フルア自身の幸せってどんなの?」
フルアは、迷いなく答えた。
「私は、師匠と一緒に森で薬草を採ったり、料理をしたりするのが幸せだと思います。魔法を知って、楽しいとも思っています。それから、私の中にある、前世の知識が役に立つなら、使っていきたい。でも、それは人を傷つけたりする事に使うんじゃなくて、なんていうか…幸せのお裾分けみたいな…笑顔が増えるような使い方をしたいって思ってるんです」
「王宮の魔法騎士なら、フルアがタヌーンに使った魔法を使える者もいるだろうけど、兵力に変換されそうな知識は、欲しがるだろうねぇ。フルアが、王宮に行きたく無いなら、目立たない形で魔法を使ったら良いよね。魔法付与された道具を介してとかね。フルアが、ナイフなんかに自分で付与したらいいよ。前世の記憶で、目立たない狩り方があるんじゃない?」
「そうか、そう言うやり方があったんだな。考えもつかなかった…」
「年の功ってやつだよね。僕も役に立つ事もあるよね」
「じいちゃん、ありがとう。俺、どうして良いか、わからなかったんだ。王宮に行っても、フルアは幸せにならない気がしたし…」
「し、ししょ…う…」
フルアの目に涙が浮かんだ。
「はい、はい!涙の抱擁は後でしてくれる?先に、どんな魔法を付与するか、考えるよ。僕、割と忙しいし」
ルーンは、感動の嵐を断ち切った。
「何か、丁度いい何か、思い浮かぶ?」
ルーンは、フルアの前世の知識を重要視しているようだ。
「漏電…」
「「ろ う で ん ? 」 」
フルアの前世は、理解出来ないもので溢れているようだ、と二人は思っていた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
感謝します。




