16 初めての
読んでいただいている皆様に、感謝しています。
ありがとうございます。
チリチリーリの実を採取して、帰途に着き始めて5分。
魔物がいた。
だが、まだ魔物はこちらに気付いていない。
タヌーンの魔物だ。魔物としては小型で、大きさも1.5メートル程の個体だ。
ウールスは、すぐに自分が仕留めようとしたが、フルアに声をかけられた。
「私の考えた魔法が魔物に通じるかどうか、試させてください。うまく出来ないかもしれないので、最後は、申し訳ないですけど、師匠にお願いします」
「よし、わかった。フルアの初めての魔物だからな。見守るとするぞ」
その言葉が嬉しく、フルアは張り切った。
「洗濯機!」
フルアの詠唱がノアの森に響くと、透明で四角い箱のような物が出現した。
上面の1方を残して開いたかと思うと傾き、タヌーンを掬い上げ、閉じた。
すぐに中に水が、箱の半分ほど満ちたかと思うと、水とタヌーンがぐるぐる回り始めた。
箱の中は、二重になっている様だ。タヌーンは、もみくちゃになっている。
しばらくすると、水の回転が止まったかと思うと、水は縦に叩きつけるように回り始めた。
タヌーンも水と同じように回っている。
ウールスは、見た事の無い魔法に、ただ驚くばかりだった。
箱の中の水は、ぐるぐる回りながら、水が無くなり、今度は風がタヌーンを翻弄する。
タヌーンは、すでに絶命してる様に思える。
あんな小型の嵐の中で平気な生き物がいるだろうか…
ウールスが、言葉もなく見ていると、魔法が消えてタヌーンは、草の上に横たわっていた。
「もう、死んじゃってますか?寝ている様にも見えますが…」
「あんな嵐みたいにぐるぐるされて、寝てる生き物なんているわけないだろう。とっくに死んでるぞ。あんな魔法、初めて見た。どうやってかんがえたんだ?」
ウールスからそんな言葉が出るとは思わなかったフルアは、驚いてしまった。
「あれは、前世の服を洗う機械を思い出したのでーーー魔石で動くのではないのですが、そういう物があるんです。それを思い出したので、最近はこの魔法で服を洗ってます。それで、魔物にこの魔法を使ったら、私でも魔物を狩れるかも、って思ったんです」
そう言われてみれば、最近の服は、より綺麗になっているし、仕上がりが柔らかい事を思い出した。
「この魔法は、人前で使わないほうがいいな。王宮に知られたら、人間兵器みたいに使われそうだ。これは、服を洗う為だけに使おう」
フルアは、震えてしまった。
そんなに恐ろしい魔法だとは、思っても見なかった。
「そんな恐ろしい魔法とは、思ってもいませんでした…役に立つ前世の知識だと思ったのに…」
「人前で見せずに、服を洗うだけなら大丈夫だろうが、この狩り方は拙い。何か違う方法を考えよう」
「みてみろ。タヌーンがあんなに綺麗だぞ。あんなツヤツヤしているタヌーンを見たのは、初めてだ。タヌーンは、魔物だが肉も旨いからな。さぁ、帰ろう」
タヌーンをマジックバッグに入れながら、笑顔を見せた。
フルアに笑顔は無かったが、黙って頷いた。
家に戻ると、作業台にチリチリーリの実が入っている麻袋を出した。
「さぁ、鑑定をしてみよう。さっきの魔法の事は、気にするな。俺しか見ていない」
「自分が役に立つ魔法だと思って使ったら、それが他の人にとったら、恐ろしい魔法だったなんて…」
フルアは、また俯いた。
「新しい魔法を使う時は、まず俺だけに見せろ。それから、極力他人に魔法は見せない方がいいな。魔道具を介したり、付与された品を介した方が安心だ。こっちが悪気が無くても、悪いヤツに目を付けたれたら、厄介だからな」
「わかりました。そうします。その方が安全ですね」
気持ちを変えるように、チリチリーリの実を魔道具に置き、鑑定をした。
【チリチリーリの実】
食するとかなり辛い
乾燥させると効果が倍増する
疲労回復、食欲増進、血行促進、発汗作用がある
食べすぎると、お腹が緩くなる
防虫効果もあり、酢とニンニクを混ぜた物を
水で薄め、植物にかけると良い。
ただし、かけ過ぎると枯れる
食べても大丈夫だった。
それに、防虫効果もあるなんて知らなかった。
「良かったな。食べても大丈夫そうだ。きんぴらごぼう…だったか。今食べない分は、乾燥させよう」
「はい、材料準備します」
ごぼうとニンジンは、よく洗って千切りにする。
鍋に油を入れ、タネを取り、輪切りにしたチリチリーリの実を加えて、火を付ける。
ごぼうとニンジンを入れ、炒め、少量の蜂蜜と塩で味を整える。
たったこれだけの簡単な料理なのに、チリチリーリの実の香りを嗅ぐと食欲が湧いた。
「お腹すきました」
落ち込んでいた事を忘れたかのように、お腹が鳴り、フルアに笑顔が戻った。
「ほんとだな。食べた事が無い料理なのに、早く食べたくてウズウズするな」
ウールスも、笑顔になった。
出来上がったきんぴらごぼうは、パンにたっぷり挟み、ダイニングに持って行った。
2人は、あまりの辛さに驚いたが、不思議と止まらない。
「旨いな」
「美味しい」
これ以外の、言葉は無かった。
「これを食べてしまったら、チリチリーリの木が旨い食材の木にしか見えなくなるな」
そう言って、ウールスが笑うと、フルアも笑った。
「本当に食べてみると、辛くて驚きましたが、何度も食べたくなりました。食欲増進って本当ですね」
「あの鑑定の魔道具は、ひとつ抜けてるな。食べたら、笑顔になるっていうのも付け足した方がいい」
フルアも、大きく同意して、笑った。
最後まで読んでくださいまして、ありがとうございます。
感謝しています。




