14 きんぴらごぼうの為に
この話を読んで下さる皆様方に感謝いたします。
ありがとうございます。
ある日、フルアは前世のお姉さんの好物を思い出した。
【きんぴらごぼう】
ごぼうは、わかる。野菜だ。
料理の名前の前半の “きんぴら”が、何を指すのかはわからない。
作り方も、なんとなく分かるのだが、謎の調味料と香辛料がある。
ショーユとトーガラシ。
ショーユは、黒っぽく塩っぱい液体。
トーガラシは、赤く辛い香辛料。
師匠は、この二つを知ってるかなぁ。
「師匠…ショーユとトーガラシ、って知っていますか?作ってみたい料理に必要なんです」
「ショーユは、どこかで聞いたことがある様な……どこかの国の調味料だったような…トーガラシは、わからないな。形とか、どんなものなのかは、分かるのか?」
「トーガラシは、赤い色の辛い香辛料です。こんな色で、こんな形。乾燥している物を、使います」
そう言いながら、紙に絵を描いた。
「ん?なんだか、見覚えのある形だ……それ、チリチリーリの実じゃないか!魔性木で、近くに来る動物にその実を飛ばして、目や口に攻撃をするんだ。肉食の植物じゃないから、死ぬ事はないけど、あれに攻撃されたら、2日は苦しむな。……大変だった…」
ウールスは、遠い目をしながら、答えてくれた。
「そうなんですか…じゃあ、それに代わる香辛料って、ありますか?ピリッと刺激のある辛い香辛料。それを使った料理を、作ってみたいんです…」
「聞いた事ないな。チリチリーリの実が食用かどうかは、わからないからなぁ。あ、そういえば良い物が。探してくるから、待っててくれ」
ウールスは、そう言いながら、納戸に行った。
しばらくすると、両手で魔導具らしきものを抱えて、作業台に置いた。
「これは、鑑定の魔道具なんだ。薬草の事は、ばぁちゃんに教えてもらったんだけど、じいちゃんとノアの森に入る様になって、色々な植物を採取したんだけど、それがどんな代物なのかわからなくてなぁ、ガキの頃に、じいちゃんに作って貰ったんだ。でも、魔石は自分で調達する事が条件だったから、魔物も狩ってたな」
そう言って、笑った。
フルアは、すごい魔道具が出てきて、驚いてしまった。
高さは、40〜50センチ程で、台座が5センチの高さで上部が10センチの厚さになっている。どちらも六角形で、6本の柱で上部を支えている。魔石は、上部に蓋があり、そこにセットするようだ。
「こんなすごい魔道具、初めて見ました。何でも鑑定できるんですか?」
「この台座に置ける物なら、何でも鑑定できるぞ。試してみるか?」
ウールスは、輪ゴムの材料の魔性蔓のエキスを木の椀に入れ、台座に置き、スイッチを押した。すると、上部から台座に向かって、2センチほどの光が出てきた。5秒ほど待つと、光が消え、代わりに上部の上に文字が現れた。
【マルトファイの蔓から出る液体】
熱風の魔法で固まる性質がある
温度やその他の条件で、硬さや粘度が変わる
固まると、水を通さない性質になる
毒は無いが、薬効もない
「すごい。こんなに分かるなんて、思いませんでした」
「薬草だと、どんな薬効があるとか、何と組み合わせると良いとかもわかる。昔は、これで調べて加工してから、生産ギルドに売り込みに行ってたんだ。流石に家に鑑定の魔道具があるなんて、言えないから、知らぬ振りしてギルドで鑑定させたりして、実績を積んだんだ。懐かしいな」
鑑定の魔道具なんてあるのは、余裕のある貴族の家か、ギルドぐらいだろうか。
それを作ってしまう、ルーンの凄さにも、フルアは感心した。
そして、ウールスの子どもの頃の話を聞いて、頑張っていた様子が目に浮かんだ。
今のウールスにはもちろん敵わないが、子どもの頃のウールスの頑張りを見習おうと思った。
「チリチリーリの実を採取して、これで鑑定に掛ければ、食べることができるかどうかが分かるな。チリチリーリは、ノアの森に入った所に、木があったはずだから、一緒に行ってみよう。ずっと、結界魔法の練習をしてただろう。1時間位は、連続で出来る様になったんじゃないか?」
「落ち着いて掛ければ、どうにか1時間程度くらいです。動揺してしまうと、解けてしまうのでまだまだ練習が必要だと思ってます」
「そのくらい出来れば、十分だ。危なくなってからじゃあ、間に合わないかもしれないから、今日はノアの森に入ったら、すぐに結界魔法を掛けて、1時間以内に帰る様にしよう」
「はい!ありがとうございます。初めてのノアの森。怖いけど、楽しみです」
フルアは、いつになく興奮して、張り切って準備を始めた。
冒険者ギルドでもらったマジックバッグを掛けて、虫取り網なども用意をした。
「その虫取り網は、何に使うんだ?」
「高い所にある実を取ったり、チリチリーリの実が飛んできたら、これで取ろうかと思ってます」
ウールスは、フルアが虫取り網でチリチリーリの実を採取する姿を想像して、楽しくなって、吹き出してしまった。
「ブフォ、フルア…チリチリーリの実は、蝶々みたいにヒラヒラ飛んでこないぞ。とにかくすごい速さだから、飛んでくるアレがその網で取れたら、大したもんだ。楽しみになってきたな。頑張れよ」
ウールスは、笑いながらも、フルアを応援しているようだ。
フルアは、師匠の期待に応えねば、と虫取り網をぎゅっと握りしめた。
【きんぴらごぼう】
きんぴらごぼうの “きんぴら”の語源は江戸の和泉大夫が語り始めた古浄瑠璃のひとつ『金平浄瑠璃』の主人公 坂田金平の名に由来します。坂田金平は坂田金時(この人は、童話の金太郎の元になった実在の人物と言われています)の息子という設定で、非常に強くて勇ましい武勇談として、語られていました。
牛蒡の歯応えや、元気が出ると考えられていたところ、また唐辛子の強い辛さが、坂田金平の強さに通じることから、『きんぴらごぼう』という料理名が生まれました。
諸説あります。
最後まで、読んで下さいましてありがとうございました。
感謝いたします。




