13 大事な弟子だから
この話を読んでくださる皆様方に、感謝いたします。
ありがとうございます。
今日は、朝から冒険者ギルドで、依頼されている薬草を提出し、生産ギルドで、輪ゴムの発明登録をする。
登録者の名前をどうするかで、また2人で揉めた。
ウールスは、フルアの名前で登録する様にと、引かないし、フルアも、自分1人で作れた訳では無いことを理由に、2人の名前にしたいと、言い続けた。
結局、折れたのは、ウールスだ。
しかし、登録使用料の受け取りの割合をウールスが1で、フルアは2に、してもらう事は引かなかった。
フルアも、そこは諦めた。本当にお金が入るかどうかは、わからないからだ。
そして、その後でメディカさんのお店に行き、輪ゴムを渡す。
喜んでもらえるかは、心配だが……
冒険者ギルドに提出する薬草は、加工はせず、根本を揃えて紐で縛った物を出した。
冒険者ギルドで、薬草を購入する人は、自分で加工をしたい人向けらしい。
なので、提出の金額の差は、純粋に薬草の品質のみが、重視される。
葉の先が枯れかけてると、値段が下がり、根元も綺麗に揃い、葉も瑞々しいものだと、値段は上がる。
フルアは、ウールスに指導されながらの採取だったので、まずまずの値段で買ってもらえた。
ウールスも、希少薬草の提出を済ませ、帰ろうとすると、受付のお兄さんが「ウールスさんは、魔石に魔力を込める仕事もしてるんですよね〜?今、クズ魔石があるんですけど、これ利用価値あります?」
そう言いながら、掌の上に小さな魔石を乗せ、ウールスに見せた。
「最近、東にあるウルッカの森でウッサーとかタヌーンが魔物化する様なんですよ。もちろん、ノアの森みたいに、魔素が濃い訳じゃないから、大きな魔物とかは出なさそうなんですけどね。小さくても、魔物化したら恐ろしいって事で、新米冒険者とか猟師が、討伐してるみたいなんですが…魔物でも小型なんだから、剣で首刎ねてくれたら、魔石もいい感じに獲れるのに、強弓で射る奴がいるんですよ。で、バラバラになった魔石を買って欲しいって言ってきて…初めは売れないって、突っぱねたんですけど、あんまりお金も無いみたいで…売れたら、お金を渡すって事で、話は付いてるんですよ。どうです?魔力入れて、使えそうですか?」
受付の男は、眉を下げながら、聞いてきた。
ウールスは、魔石をじっと見つめた。
「小さくても、品質が良ければ、魔力が入るが…一つだけ魔力を入れてみてもいいか?試したい」
そう言って、了解を取り小さな魔石を、手のひらで包み込み、魔力を込めた。
「あまり入った気がしない。魔石測定器で計測したらいいが、この感じでは、魔道具を起動させても、すぐ止まってしまう位の魔力しか入ってないと思う」
そう言いながら、男に返した。
「ちょっと、計測しますね。ーーーーーあぁ、ほんとですね。これじゃぁ、魔石として使えそうにないですね…今の魔石とその他の魔石も、大きさも透明度も変わらない様だし…売れそうにないですね」
ウールスはふと、この魔石のサイズなら、フルアの練習になると思い直した。
「その魔石、いくつあるんだ?いくつか、フルアが魔石に魔力を込める練習をする時の為に買うよ」
「ほんとですか!!ありがとうございます。では、15個あるんで全部お渡ししますね。で、いくらで買って貰えます?」
「練習だからなぁ。買うのは、今回だけと言うことで、2,000エーンでどうだろう。安すぎるか?」
「十分です。ありがとうございます。もうそのまま、返却しようと思ってたんで。助かります」
「そいつに、剣が苦手なら普通の弓で頭を狙えってアドバイスした方が、良いかもな。頭なら、魔石に傷が付かないから」
「言ってるんですけどね〜。無理して、魔物を狙わなくても、ウルッカの森には普通の動物だって多いんです。それだって、強弓使わなくっても、狩れますからね。ま、そのうち気付いてくれるんじゃないですか」
男は、溜息を吐きながら、そう言った。
「大変だな。じゃ、ありがとう」
ウールスは、苦笑いしながら、魔石を受け取った。
ウールス達が、帰った後、他の受付職員に「割れた魔石、今回だけ買ってもらえたけど、次回は無いって、事で。他の受付にも、周知でお願いします。」
そう、伝えた後で、他の職員が「あの男性、前に一抱えもある程の、魔獣の卵を見たって言ってたらしいですよ。そんな卵を産む魔獣が住むところなんて、ノアの森の奥くらいじゃないと…ウッサーの魔物で怖がるのに、そんな森の奥に行くなんて…本当なんですかねぇ…」
そう呟いていた。
生産ギルドで、輪ゴムの発明登録の為に、受付に行くと、今日はマールさんは不在の様だ。
受付は、若いお姉さんで、フルアは少し緊張しながら、ドッグタグと共に、昨夜ウールスと一緒に作成した登録用紙を、提出した。
登録用紙には、不備はない様だったが、作成者の上段にフルアの名前が有る事から、「主要作成者が、フルアさんになっていますけど、合ってますか?」と、受付嬢に尋ねられた。
「合っている。主要作成者がフルア、従作成者がウールスだ。何か問題でも?」
そう言いながら、ウールスはムッとしていた。自分の名前が入る事すら、不要と思っているのに、何故、そこで確認されるんだ、という思いで、眉間に皺が寄った。
受付嬢は、ウールスの表情に、顔が青ざめた。
「師匠、顔が怖くなってます。お姉さんは、確認しただけです」
「それは、フルアが子どもだからか?子どもだって、発明するんだ。フルアを疑われたみたいで、ムッとしてしまった」
「私は、気にしてません。師匠も、気にしないでください」
フルアは、ウールスに向かって、にっこり笑った。
「申し訳ありません。書類に、不備はありませんので、ドッグタグをお返しします」
受付嬢は青ざめたまま、フルアにドッグタグを返した。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
フルアは頭を下げ、お礼を言ってから出て行った。
2人で手を繋ぎながらメディカの店に向かった。
「師匠のあんな怖い顔、初めて見ましたよ」
フルアにそう言われると、ウールスは自分でも、あんなにムッとした事は今迄にあっただろうかと、自問した。
「自分の事で何か言われても、あんなにムッとする事は無かった気がするなぁ。フルアの事だと、イラッとしてしまって、自分でも驚くよ。大事な弟子だからかな?」
そう言って、ウールスは笑った。
もう、機嫌は直った様で、フルアはホッとした。
今から、メディカさんの店に行くのに、ウールスが不機嫌なままだと、メディカさんにも心配させてしまう。
この後、2人は他愛のない話をしながら、お店に向かった。
メディカさんに、輪ゴムを渡すととても喜ばれたが、すぐに生産ギルドに登録したのかを尋ねられた。
フルアは、ウールスのアドバイス通りだったと思い、ホッとしてしまった。
メディカは、2人に輪ゴムをたくさん注文した。
今回の渡した分も、お金を払おうとされたが、前回、ハンドクリームを貰った事に加え、メディカの言葉で開発をする気持ちになった事、そのお礼の意もある事を伝えた。
フルアは、大喜びのメディカにぎゅうぎゅうに抱きしめられた。
あまりの力強さに、一瞬息が出来なくなったのは、内緒だ。
最後まで、読んでくださいまして、ありがとうございました。
感謝しています。




