私の過去 ⑤
私は爽やかボーイを再び描き始めた。
サラサラと描き、遂に完成した。
特に感情も無く書いたため、少々こざっぱりしている様な気がしたが、まぁいいだろう。
「描けました。」
「おお!そうか!」
もう十分描けているやろ。
私は絵を片付ける準備をする。
「最初からこれだけ描けれてたら良かったのに。」
「そうですね。
余分な感情が一切無かったんで、逆に描きやすかったです。」
「普通の子は、俺と話してたら緊張するとか言うんやけどなぁ。」
はいはい。
モテ自慢はええから。
男は中身で勝負するもんやろ?
「そうですね。
じゃあ、帰りますね。」
「え?もう片付け終わったん?」
何かブツブツ言うてる間にパッと終わらせたわ。
ほんまブツブツ君って呼んだろか。
「はい、さようなら。」
「ほんまに冷たいなぁ。」
絶対に手に入れるから。
最後にボソッと呟いた一言に私が気がついていれば、もっと早くに松木の異常性に気付いていれば。
こんな事にはならなかったのに。
〜 次の日 〜
ふぅ、やっと授業終わった!
今日は直ぐにでも帰りたい所なんやけど、音楽室にちょっと寄ってから帰るか。
気分転換に違う場所で弾けば、また弾けるようになるかもしれへんし。
音楽室に入ると、バイオリンを触る。
最近、上手く弾いてやれへんくてごめんなぁ。
私は愛おしく思いながら触れる。
ふと、後ろから視線を感じた。
あの、嫌な視線だ。
後ろを振り返ると爽やかボーイだった。
「爽やか先生何をしているんですか?」
「爽やか先生って!
俺の名前は松木やから!」
「はい。
ユウサク先生ですね。」
「いや、ユウスケな!
それやと、松田優作になるから!
ってこのくだり前もやったやん!」
ノリツッコミとかやるやん!
ちょっと見直したぞ、松田!
「そうでしたね。
それで何か御用があったんですか?」
「偶々音楽室の前を通ったらバイオリンの音が聴こえたから、誰かなと思って!」
「私ですが?
そして、今から弾くのでご退室お願いします。」
「え?
あ、そ、そうやんな!
ごめん!失礼します!」
松田優作は慌てて、ドアを閉め何処かへ行った。
なんやったんやろ?
私はバイオリンをもう一度撫で、持ち上げる。
弦を弾き鳴らす。
曲は、別れの曲。
弟と一緒に弾いている曲だ。
哀しくもあり、美しくもある。
本来はピアノ曲だが、バイオリンで弾く。
ピアノは弟の担当だから。
このリズムが心地よい。
私は心ゆくまでバイオリンを弾いた。
最高の気分だった。
気がつくと、辺りは夕闇に包まれていた。
「今日はもう帰ろう。」
そう思い、私は音楽室を出た。




