第4章 月の記憶
電車の振動に揺られながら、留衣は外の風景に視線を向けたままだった。俺はこれで今日数十回目の台詞を口にした。
『留衣、別に今日じゃなくても……』
流れていく住宅街やビル街の風景から目を離さず、留衣は抑揚もなく同じ答えを繰り返した。
「……テスト期間中の方が生徒が少ないし、何かと都合がいいでしょう?」
つまり目立つのが嫌だ、と。俺はなんとか留衣を帰らせる上手い言い訳を探したが、すべて玉砕する。窓ガラスの枠に頬杖をつく留衣がふとこちらに視線を戻して言った。
「知りたくないんなら別にいいけど?」
『えっ、いや、知りたくないわけじゃないけど…』
けど、とそこまで言って、次の言葉が出てこない。結局恐いだけなのかもしれない。自分の過去、死んだ時のことを思い出すのが。
無情にも電車は泉西駅のホームへと滑り込み、幾人もの乗客をはき出してまた走り出した。帰宅途中の学生やサラリーマン達の間を抜け出して、東口側の自動改札口を通ると駅の外の通りが目に入る。
そんなに人通りの多くない道を歩く数人の学生。駅に向かってくる学生達の制服は、どう見てもこの間練習試合にきた桜丘高等学校の制服だった。下校者達の中に制服の男子を見つけて、留衣は小声で言った。
「どうやら当たりみたいだけど?」
『……あ』
俺たちと擦れ違った男子生徒の制服は、俺の来ている制服と全く同じものだった。1つ違うことといえば、長袖であるか半袖であるかの違いだけ。
信じられないわけではなかった。桜丘であるという予感はもう殆ど確信の域に達していた。それでもこんなに動揺しているのは、自分の死という現実を目の前に突きつけられるのが恐いから。
足を止めた俺を待っていた留衣が目的地を見つけ、歩き出した。通りの広い道に隣接していた桜丘高校の建物。そのフェンスの前で留衣はグラウンドの中を眺めていた。
一歩、また一歩と忘れていた記憶の前へと足を踏み出した俺は、透けている両足が震えているような、そんな気がした。
視線をグラウンドの中に向けて、留衣は中を眺めていた。フェンスの周りに並んだ木々が視界を邪魔するけれど、その向こうに見えたのは生徒達の喧噪が消えた学校の姿だった。向こうに見える5階建ての校舎と体育館は光綾よりは新しいように見える。
「……何か思い出したことは?」
俺はまた首を横に振った。そんな俺を見た留衣は、フェンス沿いにまた歩き出す。
『え、あ、留衣?』
「校門前に行ってみる」
行ってみる、というよりこれは強制だ。嫌だとは多分言わせてもらえない。通りに隣接したフェンスの終わりに曲がり角が見えてきた。どうやらこの道が校門の方へ続くらしい。先を歩く留衣の背を追って俺は近づいてくる校舎を見上げた。校門まで、花の散った桜の木が続いていた。
留衣は校門の隣まで来て、校舎を見つめた。
『留衣、まさか、中に入ったりなんて……しないよな?』
こちらに視線を向けず、留衣は答えた。
「入れるなら入ってみたいけど……正面から入っていっても、部外者は通してもらえないでしょう?」
安堵で胸をなで下ろす俺に、留衣は一言付け加えた。
「だから別な方法を考えてる」
固まる俺を無視して、留衣は上を見上げた。風にざわめく桜の木々に視点を定めた留衣はしばらくそこを見つめて、立ちすくむ。
『……?留衣、何して……』
留衣の視線を追って桜の木を見上げた俺も、そこで足が止まった。葉擦れの音を奏でる一番太い枝の上から何かが落下した。
「うわっ!?」
視界を両断するように真下に落ちたその物体が、フェンスの向こう側に落ちて声をあげる。痛みに転げ回る男子生徒がフェンスの網の向こうに見える。同情の余地もなく男子生徒を見下ろしていると彼は痛みを堪えるようにフェンスに手をかけ立ち上がった。土を払いながらこちらに視線を向ける。
「……大丈夫ですか」
留衣は心配のカケラもない声で言った。呆れているのがよく分かる。相手は金網に両手をついて笑った。
「いや、校門前に綺麗な女の子がいたもんだからつい…」
軟派な口説き文句を無表情で流す留衣はもっと不機嫌な面持ちで男子生徒を一瞥する。
「結構クールだね、君」
相手にされなかったことに項垂れるその生徒は、どうみても優等生とは言い難い規定を守らない服装で、栗毛色の髪を一つに纏めていた。ため息1つつくと、男子生徒は顔を上げて笑ってみせる。コロコロ表情が変わるところは島崎に勝るとも劣らない。
「……で?校内に入りたいんだろ?」
笑顔を浮かべて言われたその爆弾発言に留衣は顔をしかめ、俺は例によって例のごとく叫んだ。
『はぁ!?』
「……どうゆうこと?」
「そりゃ、女の子が困ってたら助けてあげるのが常識だろ?」
留衣は一瞬こちらに視線を向けて、そしてもう一度この男子生徒に視線を向けた。息をついて、相手の目を見る。
「亡くなった生徒の知り合い、なんだけど……」
これは決して嘘ではない。生きている頃の知り合いだなんて一言もいっていないからだ。男子生徒は一瞬顔をしかめてまた先程の笑顔に戻った。
「……あー、あいつか……」
「……中に入れてもらえるんでしょう?」
男子生徒は先程までの軟派な笑みを浮かべて頷く。俺は一瞬こいつの笑顔に妙な気分を覚えた。何かがひっかかるような、そんな気分だった。
「もちろん。あ、俺、時雨。…よろしく」
☆
桜丘の校内はテスト期間中の為か生徒の姿も少なく、私はあまり人目につくことなく校内に入ることが出来た。廊下の窓から見下げた校庭は夕暮れの色に染まり、帰路につく生徒達の姿がいくつか行き来している。
「…で、君、光綾の何年生?」
先程からしつこい位に審問を繰り返す時雨に私は視線も向けずに答えた。
「…2年」
校内に入れて貰った恩もある。答えないわけにはいかない。私は面倒くさいと何度も溜息をつきながら脳天気な時雨の声を聞き流す。
「俺と同じじゃん。ラッキー」
「ああ、そう」
私はそう受け流して、少し後ろを歩くあいつに視線を向けた。教室の一つ一つを覗き込んでは首を傾げている所を見ると、思い当たる所があるのかもしれない。
「んじゃさ、あいつとはどんな関係?彼女とか?」
「知り合いってさっき言ったはずだけど?」
私が軽蔑の視線を向けると時雨は笑ってそれを切り返した。
「だよな~。だってあいつ女の子とかって全然興味ない奴だったし…っと、こっちこっち」
通り過ぎようとしていた私に時雨が特別教室を指差した。手招きする時雨に近寄り、中を覗き込むとそこからは、普通の教室とは少し違う空気がしていた。入り口の上を見上げると、そこには『美術室』と書かれていた。
「あいつ美術部員でさ…まぁ、あんま部活には行ってなかったみたいだったけど」
空気が違うと感じたのは油絵のあの特殊な臭いが少し残っていたせいだろうか。私は光綾より少し広めの美術室に足を踏み入れると、なにかを探している時雨に後ろから問いかけた。
「あなたも知り合い?」
「…まぁ、そんなとこ」
窓の閉め切られた美術室は夕暮れの色に染まり、いくつかのカンバスが教卓の上に置いてあった。私はふとあの幽霊の気配がないことに気付いて、振り返る。
(…?さっきまで後ろにいたはず…)
「…あ、あった。これこれ」
棚の上に重なっていたカンバスの中から時雨は一つの油絵を取り出してきた。軽く埃を払うと、それを私に見せてくる。苦笑いのような、笑顔になりきれていない表情を浮かべて、時雨は言った。
「結構、賞とか取ってたんだけどさ。…これが最後の絵」
いつの間にか、足がこっちに向いていた。あの階段を登れば、ここに着くことが心の何処かで分かっていたのかもしれない。
夕焼けに染まる空の、薄く色を取り戻しつつある月。俺はそれを見上げて足を止めた。風の流れも、葉擦れの音も、何処からか聞こえる車の音も、耳に馴染んでいる。安全用のフェンスの編み目から見下げた校庭も、向こうに見える公園も、ビル街も、覚えてる。
フェンスの向こう、屋上の端から見下げたコンクリートの色も。
『ずっと月を見ていた気がする』
紺色の水面に浮かぶ蓮の花。夜だというのに開いたままの花弁、隣に並んだ緑の葉。弧を描くように水が揺れる。雲間から差した月光が水面に反射し、水中にも同じ月が浮かんでいる。
写真のように一瞬間の風景を映し出したかのような絵。白蓮と月が同じ光りに飾られて光っている。暗い、周りの風景と対照的で人目を惹く。
私はふとそのカンバスを裏返す。そこには薄く、こう描いてあった。
【蓮と月 2年7組 古栖 圭】
☆
特に生きてる理由もなかった。けど死ぬ理由もあるわけじゃなかった。行動にいちいち理由をつけるような性格ではないけど、『何故生きてるのか』と聞かれたらそう答えようと決めていた。死にそうになるような出来事があれば、死ねばいいだけ。運命なんて信じるタチではないけど、そうゆう運命だったと理由付けして死ぬことが出来る。
友人なんてものは当然、いなかった。必要以上の干渉はするのもされるのも好きじゃなかったし、裏でどう思っているかも分からない奴と馴れ合うのは嫌だった。こんな性格のおかげでクラスメイトはあんまり寄りつかなかったし、簡単に1人になることが出来た。
今の生活に、満足はしていなかった。けれど不満足でもなかった。いつの間にか、俺は授業をサボっては屋上で1人で絵を描くようになっていった。
そんな日々を少しだけ変えたのは、梅雨入りの少し前、確か、全校集会の日だったと思う。 5月末の、澄んだ空を見上げて俺は右手を動かしていた。五月病のせいか、もうすぐ梅雨が来るせいか、鬱々とした気分が晴れない。青空とは対照的に沈んでいく思考を忘れようと俺はスケッチブックに向かっていた。全校集会で生徒が皆、体育館の方に集まっている為、校舎はいつもの喧噪を失って清々しい程静かだ。
俺は一息つくとあまり進まないスケッチブックの中の青空をグシャグシャと鉛筆で黒く染め、破る。やはり憂鬱なのは五月病のせいか、それともこれが夜空じゃないせいか。
昼の空は何故か上手く描くことが出来ない。水色に染まる空に、白い光を放つ太陽。こんな明るい絵は、苦手だった。こんな性格のせいかな、と自嘲してコンクリートに寝転がった時、俺は静寂の校舎に不似合いな金属が叩きつけられるような音を耳にした。
(…?)
「ったく、なんなんだよ!くそっ」
どうやら、屋上の入り口で誰かが扉に蹴りを入れているらしい。八つ当たりだろうか。出入り口の上にいた俺は一体どんな不良が登ってきたのかと下を覗き込んだ。偶々、影が出来てしまったらしく、登ってきた生徒が俺の存在に気付いてしまった。
「…なんだよ」
栗毛色の髪を少し伸ばした男子生徒。無理矢理後ろで束ねた髪は明らかに地毛ではない色をしている。Yシャツを出して、上着を羽織るようにして着ている。これも、学校の規定にそぐわない。明らかに、教師の言う『不良』の格好。
けれど、知ってる。こいつは…
「お前、全校集会出なくていいのかよ」
「…茶髪で長髪の生徒会役員に言われたくないね」
この間、先公に無理矢理総会に出された時、役員紹介で顔を見たことがある。あの時はまだ髪も染めていなかったし、黒髪だった気がする。
俺の返答にそいつは一息ついて頭をかいた。
「ま、それもそうだけど…。で?そっちは何してんだよ、校内でも有名な古栖クン?」
有名、というのは何となく分かっている。多分…否、絶対に良い噂ではない。まぁ、それほど気にしていない。俺は下に向かって言った。
「…絵を描いてた」
「へぇ、噂通り」
そいつはそう呟くと梯子を登って俺の所へ来た。了承もしていないのに勝手にスケッチブックを開いて、中身をパラパラと見ている。
「ほー。結構マトモ」
「それはどうも」
別に見られたって気にも留めなかった。相手が何と言おうと聞き流そうと決めていたから。そいつは幾つかの絵を見ては何度も俺の顔と見比べて、ぽつりと呟いた。
「…お前、絵描けそうな顔してないんだけどな…」
あまりに真剣にそう言うので、俺は口元が歪んだ。
「…悪かったな」
まさかそう言われるとは思ってなかった。つい返答を返してしまう。そいつはその後も何度も人の顔と絵を見比べて笑った。人の良さそうな笑みだけれど、どこか悪戯好きそうな表情も混じっている。
「…へぇ…。お前いつもここにいんの?」
「大体」
そいつはまた俺の顔を見て、へぇ、と呟く。俺にスケッチブックを手渡して、携帯で時間を確認すると、
「あ、そろそろ時間だな」
と言って階段の入り口へと飛び降りる。
「あ、そうそう、古栖!」
「勝手に呼び捨てするな」
ついまた返答してしまった。俺は渋々入り口の方へ行き、そいつを見下げる。茶髪の男子生徒は、また意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
「俺、水無月 時雨。また明日な!」
「ああ、そう……また明日!?」
どうゆうことだよと俺が叫ぶ前に時雨はさっさと階段を下りていった。意味も分からず立ちすくむ俺はこのとき五月病も、じきに来る梅雨のことも、すっかり忘れていた。死ぬとか、死なないとか、そうゆう思考も、全部。
☆
おちこぼれ生徒会役員、水無月 時雨は『また明日』の言葉通り、翌日も屋上へ来た。絵を描いている俺の隣で昼寝をしては時々起きあがって絵の進行状況を見て、『お前、本当に顔に似合わず絵、上手いんだな』を繰り返した。次の日も、そのまた次の日も。
授業をサボっていることに対して俺も時雨も何も言わなかった。時折俺を授業に連れ戻そうと屋上へ上がってきた教師が、生徒会役員も一緒になって授業放棄していることに目を丸くしていたこともあった。
時雨はどうして役員だというのに髪を染めたり、授業をサボったりしているのか。俺は少しだけ不思議に思ったが、そうゆう私情を聞き出すのは憚られた。なんとなく聞ける雰囲気ではない。俺も干渉したくはなかったし、あっちもそうゆう話に近づくといつも会話を逸らしていた。だから、聞いてみようとしたことはなかった。
このサボリ魔とおちこぼれ生徒会役員の妙な関係が出来上がって大体数十日経った頃だっただろうか?あの時、俺達はいつものように授業をサボって屋上にいた。丁度昼休みの時間で2人で弁当を広げていた俺達の所に、下から鳴る生徒呼び出しの放送が聞こえてきた。
『2年3組柳谷君、至急生徒会室に来てください。繰り返します、2年3組の柳谷君…』
「…2年3組ってお前の組?」
そういえば、この間時雨を3組の所で見かけた気がする。3組にはこいつの他にも役員がいるのか、とそう思った時、弁当に手をつけていた時雨が俺の弁当からエビフライをかっさらった。
「あっ」
俺が何か言うより早く時雨はエビフライを口にふくみ、言った。
「隙あり~。運が悪かったな、このエビフライ好きの俺の前で弁当広げるたぁ」
「だからって盗るか?普通」
俺が苦笑すると時雨は勝ち誇ったように言って見せた。
「小学校んとき教わんなかったかー?『お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの』」
そう言ってまた俺の弁当からエビフライをとると、満足そうに笑った。明日から弁当にエビフライ入れるの、よそうか…とそう思った時、屋上のドアが盛大に開く音と、応援団並の大声が鼓膜を劈いた。
「時雨先輩、いますか!?」
あまりの大声にキンキンする耳を押さえている俺に対して時雨は何事もなかったかのように下にいる生徒に手を振った。俺も頭を押さえて入り口を見下げる。
「あ、やっほ~、日和ちゃん。エビフライ食う?」
「いりませんっ!」
日和、と呼ばれた女子生徒はショートカットに眼鏡をかけた女の子で、帰宅部の時雨を先輩呼びするということは、生徒会の後輩らしかった。階段を走ってきたせいか息を切らして、片手に持っていた資料の一つを時雨に向ける。
「今日の今日こそサインして頂きますよ、時雨先輩っ!」
「…サイン?」
そう呟いた俺にやっと気がついたのか、日和という1年生はこちらに軽く礼をして、時雨に向き直った。
「生徒会選挙、出るって言ったじゃないですか!明後日までなんですよ、この〆切っ」
「めんどくさ~。いいじゃん、俺、出なくても…」
弁当を口に含みながらそう言う時雨に後輩は懸命に主張する。
「先輩以外いないんですよ!?会長立候補出来る人が!」
「……会長!?」
運悪く、炭酸飲料を口に含んでいた俺は、その2文字を聞いて吹き出してしまった。時雨は頭をかいて溜息をつく。
「他にもいんじゃん。氷室とか常葉とか氷室とか常葉とか氷室とか常葉がさぁ…」
氷室と常葉の2人しかいないということらしい。俺も名前に聞き覚えがあった。確か2人共成績優秀なことで有名な役員達だ。数人の女子が追っかけをしているのを見たことがある。対する日和という1年生は地団駄を踏みつつこう叫ぶ。
「氷室先輩も常葉先輩も先に副会長の立候補しました!」
その言葉に時雨が小さく「げ」と言ったのを聞いたのは俺だけだったと思う。
「それじゃあ…一年!小風兄弟とかに…」
「あんな馬鹿兄弟に任せたら、数時間と持たないうちに学校がつぶれます!」
日和という生徒はきっぱりすっぱり言い切った。日和は腕時計を見て顔をしかめると、時雨を見上げて怒ったように言った。
「とにかく、明後日までにはサインしてもらいますから!…あと」
後輩の、悔しそうな捨て台詞を聞いて時雨はまた弁当を食べ始める。
「放送が流れたときはちゃんと生徒会室来てください!絶対ですよ!」
「りょ~かい」
そう言って立ち去る1年にのほほんと手を振る時雨。いまの2人の会話に俺は首を傾げる。
「…放送、流れてない気がするんだけど」
確か、さっき流れた放送は柳谷っていう生徒の呼び出しで………?
何も言わず弁当をかき込んでいた時雨は一瞬だけ俺に視線を向けて、また弁当を食べ始めた。
「ま、そんな細かいことは気にすんなって。ハゲるぞ~」
「誰がだよ」
俺はそう答えながら自分がいつのまにか時雨との会話に違和感を覚えなくなっていることに気付いた。こいつの漫才的なボケを聞いているのは不快ではなかったし、いつの間にか普通に会話をしている自分を最初は不思議に思ったけれど、それもすぐ気にならなくなっていった。
今思えば、時雨も俺も似ている所があったからかもしれない。人と馴れ合うことを露骨に嫌う俺と、人の良さそうな笑みを浮かべながらもそれ以上の干渉を許さない時雨と…。




