ばかばかばっか、ばかばっか
世の中ばかばっかりだ。つまり私もそうだ。けれど私にはそれが許せなかった。だから勉強した。由香がSNSで話題の映画に誘ってきても、恋人とデートに行ったことを自慢してきても、どうでも良いことだと切り捨ててきた。由香はいつもそんな私を見て笑っていた。
「バカは何やってもバカなのよ」
それは限りなく正確な意見に思えた。少なくとも、由香は日本の最高学府の模試でA判定を貰っていたし、私は先生に身の丈にあった学校を選ぶべきだと説得され、不良の救済措置の為だけにあるような地元の底辺大学の模試を受けることになったのだから、その差は歴然だった。
「あんた運動は得意なんだからさ、そっちの道に行けば良かったじゃん」
私はその言葉にチクリと傷んだ胸を抑え、首を振る。高校の2年まで私は陸上選手として好成績を納めていた。それこそ、スポーツ推薦だって数え切れないくらいにもらった。けれどそれではダメだった。
馬鹿というのは一種の罪だ。私は1年の時から随分と活躍し、2年では先輩を差し置いて部長に就任した。冬の大会では特に調子が良くて、2位の子と大きな開きを作って優勝もした。それで調子に乗って、たまたま後輩の子の応援に来ていたというどこかの高校のOBの、格好良い大学生の男の人にホイホイとついて行ってしまったのが運の尽きだった。
バカはバカとして正しい結末を迎え、バカな私をバカな目に遭わせたバカもまた同じようにひとつの結末を迎えた。
それでも私がバカをして馬鹿な目に遭ったことに変わりはなくて、ばかはばかなりでいて良いなんて思えなくなった。
「ならせめてもうちょっと前から勉強しておくべきだったね」
由香が笑った。可愛い顔で自撮りをしているそのスマホには、私のあられもない姿が保存されている。




