不老不死だって死にたくないっ!
新米不老不死にデビューした。熟練不老不死なんてものがいるかは知りえないけれど、私はまだ不老不死としては経験が浅い。だからこんな簡単なミスもする。
「生きてる!?」
私は鉄骨に押しつぶされて、大勢の前で死んでしまったのだ。なんて可哀想な私!もちろん不老不死なので本当に死ぬことはなかったけれど、まだまだ人間としての感性を残している以上、死ぬかと思ったのは本当だった。
私は汗を、やはりこれも出なくなっているのだけれど、ぐっと拭う動作をして、集まる視線にさーっと肝を冷やす羽目になる。
私はそそくさとその場を立ち去り、ホット胸を撫で下ろし、それから職場に向かって、なにをどうやったのか先回りしていたらしい政府の人間に捕まった。
任意同行ということだったけれど、拒否権なんてものはなく、同僚の何をやらかしたのだという好奇の視線が耐え難かった。
「それで、あなたは本当に不老不死なのですか?」
問われれば、私はもちろん、と頷いた。
「そんなわけないじゃないですか」
それでも彼らは諦めなくて、私に注射針を刺して血中成分を調べたりだとか、薄緑の病衣に着替えさせられてレントゲンをうつされたりだとかした。
けれど私はそれらが白を証明することを知っていた。少なくとも、血液の方は確実に。なぜなら、私は隔月で成分献血をしていたからだ。異常があるならその時点でバレている。むしろ医者からはずいぶんと健康的でサラサラな血だと褒められたほどだった。
だから焦りはなかったけれど、それとは別に問題はあった。私が刺された場所を抑えて呆っとしていると、彼らのうちの一人がふと思いついたようにその手をとって、腕を見る。
「傷がどこにもないぞ!」
それからは彼らは大盛り上がりで、私はそれから彼らに色んな薬を飲まされるようになった。体に塗られることもあった。たまに別の人に貸し出されては、腹を捌いて内蔵をひとつひとつ点検されるようなこともあった。
私はそれらに様々な反応をした。けれど、大抵が痛みに咽び泣く無様を晒しただけだった。
最初のうちはそれに顔を顰め、やめた方が良いのではと良心の呵責を訴えかける者もいたけれど、そういう人はもう居ない。それは彼らが耐えかねて首を吊ったからであり、また慣れてしまって何も感じなくなったからだったけれど、私は終ぞ慣れることは無かった。
私がたとえ世にも珍しい不老不死であっても、歯を抜かれれば当然に痛いし、効果もよく分からない薬を飲まされるのには恐怖を覚えるものだ。それは彼らが代替わりした今でもまるで変わらない。聞いた話では都市は移ろい、年号も二度ほど変わった。それでも私は同じ場所で同じように声を荒らげる。
どこぞの地下に、今日もまた絶叫が木霊する。




