表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/27

4.違う世界?

「こっちのグラフィック差し替え?」


「そこはまだ、色チェック終わってませーん」


「週末イベント、変更点確認お願いします」


1台のPCにいくつもモニターがついた机がずらっと並び、忙しそうに話し合う人や、モニターを凝視してぶつぶつ言っている人がいる。

何、ここ。


あ?

モニターに、ロゼッタの絵が三枚……でも、髪の毛の色が違う。橙色っぽいのと、水色っぽいの、ピンク……


「やっぱりクラリッサが寒色系で、ロゼッタは暖色系でしょう」


「ピンクかなあ、ヒロインの定番だけど。もうちょっと、グラデーションで変化つけてみて」


これ、オル学の開発現場?


「あとは……も、最初はわかりにくくても、人気が出るように……」


話し声が、よく聞こえない。

モニターが、ぼやけてく……


見えなく、なる――


◆ ◆ ◆


なんだか、変な夢を見た。気が、する。

よく覚えてないんだけど……えーと……


コンコン、とドアがノックされた。


「お嬢様、そろそろお仕度を」


ジェイクじゃなくて、侍女の声だ。

……あー。

そっか、今日は日曜日。お茶会の日か。


学園に通い始めた先週、結局オーウェンにはあれきり会えなかった。

で、今日は以前から招待されてたお茶会に行く。



ドレス、アクセサリー、メイク。

うーん、今日も悪役令嬢っぽい美人のできあがり。とほ。

侍女はあたしに似合うように、仕上げてくれてるけどねえ。


乙女ゲーだからか、コルセットみたいな下着がないのが救いだわ。

小説や漫画でもよく出てくるけど、相当苦しいらしいしなあ。


例によってジェイクをお供に、馬車に乗って出発。

今日の行き先は、リーズリース伯爵家。


オル学では、NPCなんだよね。令嬢のラエルがお茶会で、聖女になるために必要な隠しステータスや評判の現状と、どこを重点的に育成すればいいのかを教えてくれる。

ロゼッタは平民だから、最初からお茶会には出られない。まずは校内で会って、ラエルとの好感度が上がると、聖女候補ってことでお茶会にも出席できる。


ラエルには弟のラブルがいて、彼は校内で週に一回会えて、攻略相手の大体の好感度を教えてくれる。

学年が上がった二週目から会えるから、明日以降出現場所に行ってみよう。昼休みのうちに、前庭の花壇近くに立ってるはず。


ま、聞かなくても、誰の好感度もあまり上がってないだろうけど。

オーウェンの好感度が、最低じゃないといいんだけどなー。

レオニード同様にいつも笑顔の人だから、好感度の上下がわかりくいんだよね。ロゼッタの会話パターンなら覚えてるけど、シルヴィアと同じ会話はしないだろうしなあ。


って、あたしじゃ、NPCに教えてもらえるかも怪しいか……


考えてるうちに、伯爵家に着いた。

ジェイクの手を借りて、馬車を乗り降りするのもすっかり慣れたな。

それにしても、護衛騎士って大変。休みなのに、ずーっとあたしに貼りついてなきゃいけない。

いつ休むんだろ。


あたしが出歩かなければいいんだろうけど、公爵令嬢として社交は無視できないんだよねえ。

この世界のことも、まだわからないことが多いしね。

さて、ホストにご挨拶。


「お招きありがとう、ラエル様」


「ようこそおいでくださいました、シルヴィアーナ様。

お待ちしておりましたわ」


特に目立った容姿じゃないけど、笑顔がほっとする子だな。ただしNPCは態度が変わらないから、まったく好感度が不明。

下がることもないから、そこは安心なんだけどね。上がると、便利なアイテムくれたりするけど……それも、ロゼッタじゃないとなさそう。


整った庭園に、お茶会のテーブルが用意されている。当然のごとく、上座はあたしの席。ジェイクは少し離れて、立っている。

グラハムの家も公爵家だけど娘がいないから、この国ではあたしが唯一の公爵令嬢。つまり、王族の次に高貴な身分の女性になるわけで。

だから悪評流されても、こうしてお茶会には招待されて、表面上は仲のいいフリをされると。


虚しいなあ。


……あ! クラリッサ、いるじゃん!

そうだよね、聖女候補の伯爵令嬢は招待されるに決まってる。

話したいなー。


「ごきげんよう、クラリッサ様。

素敵なドレスね」


髪の色に合わせた、薄いブルーに銀の刺繍が施されたドレス。襟が高めで、派手すぎないかっちりした感じが、クラリッサの雰囲気に似合ってる。


「恐れ入ります、シルヴィアーナ様ほどではございません」


見えない壁に、パーンと跳ね返された感じ。

聖女候補同士で、仲良くなるのは無理なの?

ロゼッタとは親友になるエンドもあったのに。あたし、そんなに印象悪いのか……


「シルヴィアーナ様、今日も華やかでいらっしゃいますわ。

そちらは、ヴァレリーのデザインですわよね」


ラエルに話しかけられた。ヴァレリー?


「専属デザイナーがいらっしゃる方は、お似合いのものを仕立てられるのが羨ましいですわ」


専属……あ。

そうだった。アシュフォード家が出資してるブティックのデザイナーが、あたしの服を全部手掛けてるんだ。

王族御用達で、高位貴族にも贔屓にされてる。

ロゼッタがドレスを贈られる店も、ヴァレリーの支店なんだよね。あの店で実際に縫っているのは、別のお針子だけど。


王家のものと、あたしの家の注文は、ヴァレリーが手ずから縫製しているらしい。

職人としても一流なんだろう。


「きっと聖女になられた暁には、神殿での装いは神々しくも華麗になられるのでしょうね」


「まあ、素敵ですわー。聖女は白い衣装ですけれど、総レースになさったり?」


ちょ、待って待って。何みんなで勝手に言い合ってるの。


「聖女候補でいらっしゃるのですから、王太子妃候補の筆頭にもなっておいででしょう」


ぎゃー。話が飛びすぎ!


「わたくしはまだまだ、聖女候補としては未熟ですわ。

まして王太子妃だなんて、まったくそのようなお話もございません」


「あら……そうでございますか」


なんなの、揃いも揃って、その探るような視線は!

クラリッサ、ひとりで黙ってお茶飲んでないで。あなたも聖女候補でしょ!?


「そうですわね……聖女候補になられて、まだ一年でございますし。

クラリッサ様、平民のロゼッタさんも、素晴らしい神聖力をお持ちですわ」


お!

ラエル、情報くれるの?


「ロゼッタ……あの方、神聖力はかなりのものだそうですけど」


「でも所詮、平民でしょう」


「平民から聖女が選ばれたことなんて、百年以上もなかったそうですしね」


ああああ、話がずれるー。

ラエル、なんとか言って!


「先のことはわかりませんわね。

そういえばラエル様、ご婚約が決まられたとお聞きしましたわ」


えっ。


「まあ、どこでお聞きになったのです?」


ラエルが、頬を赤らめてる。

え、え、そんなイベントNPCにないよ?

っていうか在学中に婚約?


「父のお知り合いの方からのお話なのですけれど。でもわたくし、一人娘ですから……

わたくしの夫となる方に家を継いでいただくため、早めに決めるように言われてしまって」


……は?

一人娘?

えっ、弟のラブルは――


✦ ✦ ✦


お茶会が終わって、馬車の中であたしは考え続けていた。


オル学にいないシルヴィアがいて、いるはずのラブルがいない。

ここは、オル学とは無関係の世界?

そうじゃない、あまりにもオル学に似すぎてる。


オル学に似て、非なる世界……


そうなんだ。

この世界で、あたしだけがバグみたいに入り込んだだけじゃない。

ここは、オル学とまったく同じじゃない。


そうか……


それにしても、ラブルがいないとは思わなかったなあ。

好感度はわからないか。オーウェンの好感度、知りたかったな。


いやいや、そうじゃなくて。


この世界のことを、もっと確認しなきゃね。


週末の休日は、ゲームなら休息を取ってスタミナ回復するか、街に出て攻略相手との遭遇イベントを発生させる。

でも、スタミナはゲームのパラメータじゃないから、普通に食べて寝てればいいだけ。


てことで、攻略相手がいるのか、シルヴィアのあたしでイベントが起きるのかを確認したい。


今のところ、出てこない四人目は三年生のマティアス、五人目は一年生のヒューゴ。ゲームのイベントをこなしていれば、ロゼッタが街でヒューゴに会っているはずだけど、シルヴィアの記憶にはない。

聖女候補の恋愛は何かと噂になるから、聞いたことがないってことは、ロゼッタとフラグが立ってなくてほとんど交流なさそうね。


ほかに隠し攻略キャラもいるけど……まあ、いいわ。

あたしは推しの、オーウェンのいるところに行ってみよう。

平日の学園内では、高確率で裏庭にいるはず!


よし、決めた。

明日は、放課後に裏庭へ行こう。


✦ ✦ ✦


そして月曜日、無事に放課後になった。

行くわよ、推しに会いに!


「お嬢様、どちらへ?」


「裏庭よ」


ジェイクが変な顔をした。

なんでそんなところに、って聞きたいんでしょうね。

でも立場上、何も言えない、と。


シルヴィアの記憶では……行ったことはない、か。

公爵令嬢が、用もなく裏庭なんかに行かないよね。


「クラスメイトに聞いたのよ。

木陰が涼しくて、休めるところだそうよ」


休むならとっとと帰ればいいのに、と思われそう。ていうか、間違いなく思ってるだろうな。

聖女候補は疲れるのよ。家でもお父様に発破かけられるし、帰りたくない日もあるの。

……と、いうことにしておこう。言わないけど。


✦ ✦ ✦


裏庭に来ると……いたーっ!

オーウェーン! 会いたかったー!


木剣で手合わせしてる。かっこい……い?

あれ? レオニードが相手をしてる。


ゲームでは、レオニードがいることは稀。基本はマティアスが、オーウェンの相手をしてる。

これは、ロゼッタとレオニードの好感度が、マティアスより上ってことね。やっぱり、マティアスとヒューゴの出番はないかな。

グラハムの好感度もそれなりにありそうだったけど、オーウェンとはどうなんだろう?


あ?

オーウェンが手を挙げて、打ち合うのをやめた。

って、こっち見てるじゃん! 建物の陰からこっそり見てたのに、バレた。


気配を感じたのかな。さすがオーウェン、すでに一流の剣士ね。


なんて、喜んでる場合じゃない。

見つかった以上仕方なく、あたしは進み出ていった。


「やあ、アシュフォード公爵令嬢」


「王太子殿下には、ごきげん麗しく。

ランカスター卿、失礼いたしましたわ」


カーテシーをして、笑顔を作る。


「公爵令嬢が、こんなところにどういったご用で?」


オーウェンの言い方が冷たい……

やっぱり好感度低い?


「帰る前に少し、散策していただけですわ」


あ。そうだ、ダメもとでやってみよう。

ハンカチを二枚、ポケットから取り出す。どっちも使ってなくて、綺麗ね。よし。


「汗を掻いておいでですわ。

お使いになって」


レオニードと、オーウェンに差し出してみる。


ハンカチを攻略相手に渡すのは、ゲーム内でも起こるイベントだ。

一定の好感度がある相手に使えるアイテムで、当然複数所持可能。この世界では、汚れたときのために貴族は複数枚持つもの。

あたしはオーウェンだけに渡したいけど、王太子を無視するわけにはいかない。


「ありがとう。でも、自分のがあるから大丈夫だよ」


「公爵令嬢のハンカチとは、恐れ多い。お心遣いのみ、いただいておきましょう」


がーん。どっちにも断られた……


「そう、ですか。

お邪魔いたしましたわ」


ロゼッタなら、そもそも好感度が高くないと、ハンカチを渡すかどうかの選択肢自体が出ないんだけど。

ほんと、攻略情報が役に立たない……


「ジェイク、帰りましょう」


とぼとぼと、あたしは歩いた。ジェイクがオーウェンたちのほうを見て、丁寧にお辞儀をしてからついてくる。


ラブルがいないから、好感度がどれだけ低いかもわからない。

最低ラインなのかな。

うう、切ない。


あたし、悪役令嬢じゃないのにいいいい。

お読みくださり、ありがとうございます。

続きが気になったら、評価やブクマをしていただけると嬉しいです。

次回一行予告:侯爵令息が思うこと。


※今週は明日以降毎日1話ずつ更新いたします。

※第5話は明日18:50頃更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ