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史上最弱と言われる幻術魔法でも私が使えば最強の魔法  作者: 森レモン
軍学校編

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第82話 二人の化け物

 毎日21:10より投稿します。


 もし読んで頂き、少しでも面白いと思って頂けたなら評価やブックマークして貰えると嬉しいです。

 よろしくお願いします。

 ペラペラペラペラと、良く喋る男だとそんな印象を受ける。

 命だけは助ける事を条件に、色々な事を話し出したが、私に取ってはただのクズ男だった。

 命を助けるとは言ったが、今直ぐに殺してやりたい衝動に駆られる。

 だが、命を対価に情報を貰ったので、そこは我慢してやる事にした。

 まぁ、その支払われた情報の対価は期限付きの物にはしてある。

 情報の価値によって生きながらえる時間を与えてやると言ってやったら、少しでも多くの情報を話そうと必死になっている。

 情報をどれだけ吐こうが、解放してやるつもりも無ければ、最終的に殺すつもりだが、それでも少しでも生きたいのか、生にしがみつく姿は見て居て滑稽だった。


 この男から得た情報の一つとして、ツクネが泳がしている男の情報があった。

 ツクネは泳がしていると言って居たが、捕まえる事が出来なかったのも事実だ、近くまで行ったが姿が見えなかった理由が情報として得られたのだ。


 もう一人の見張りの人物が使う魔法は同化魔法。

 その能力は自分より大きな物質と同化が出来ると言った物で、生物とは同化する事は出来ない。

 同化時の魔力消耗は激しいらしく、魔力が無くなれば同化して居た物体から弾き出されてしまう。

 ツクネが離れてから、また影が見えたと言うのは、恐らく魔力切れに寄る物だったのかも知れない。

 その魔法を使えば壁抜けなども容易く、情報収集には打って付けの魔法らしいが、私が感じたのはアンドローサルクスが使う透過能力の下位互換だ。

 同化中の物体を破壊すれば、身体への損傷は免れないらしく、使い所を選ぶ様な魔法だ。


 今回はツーマンセルで動く様に言われて居たのだが、目の前の男とは一緒に行動する事も無く、もう一人は勝手に動いていたらしい。

 恐らくだが、この男の我が儘に付き合う気になれなかったからだろう。

 そして、この男が話す事が真実なら、もう一人の男は生かしておく価値が無いので、セセリに状況を見て殺す様に命令をした。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 いつからだろうか、自分の意思とは関係無く言われたままに、行動する様になったのは。

 本来なら、あれ程の美しい女性を殺す事などはしたくないと思った。

 だが、僕は彼女に惚れてしまっている。

 でも、どうしても彼女の事を好きな理由が分からなかった。

 見た目はどう見てもタイプでは無い、それどころか嫌いなタイプだろう、それでも僕は彼女を愛して居た。

 彼女が求める事は、何だってしたいと心の中の僕が言っている。

 心や身体が彼女を求めているのに、僕の頭の中では何故?と疑問が常にあるのだ。

 だが人間なんて単純な物で、思考なんて物は心に寄り添って行われるんだと、つくづく感じた。

 彼女を前にして命令をされたら、僕は彼女の為に行動しよう!尽くしたい!そう考えてしまうのだ。


 それでも彼女と会わなければ、僕の思考は取り戻される。

 そして、標的であるジャンヌを見た時だった、僕の心はかつて無いほどに高鳴り、彼女を愛して居た自分が嘘の様に感じた。

 僕が本当に愛する女性は、ジャンヌなのでは無いかと感じずには居られなかったのだ。

 だが、それでも彼女の事が忘れられない自分も居た。

 僕はどうやら、同時に二人の女性を愛してしまったらしいのだ。


 彼女の為を思えばジャンヌを殺す事になり、ジャンヌを殺さないで居れば、彼女を裏切る事になる。

 僕はそんな歯痒い気持ちを噛み締めながらも、どうして良いか分からずに遠くから観察して居た。


 夜更けになり、僕と組んでいた男が突然消えてしまった。

 先程まで居た場所には居ないので、直ぐに何かあったのだと理解する。

 僕は恐怖から、近くにあった壁と同化をして身を潜める。

 やがて、強烈な恐怖を感じる存在が近くにやって来た。

 その存在感は、今まで絶対的な強者として存在して来たのだろうか、殺気を微塵も隠す様子は無いのだろうか?だが僕の事は見つける事が出来ない様だった。

 ただただ、僕に向かって放たれる殺気から、僕は息を潜めて遠ざかるのを待つしか無かった。

 

 やがて、その存在が遠くに行ったと感じた時に、僕は魔力切れを起こし、壁から弾き出されてしまった。

 今もし、またあいつがここに来たら、僕はどうしようも無いだろう。

 遠目からあいつを見てみると、あいつの姿はとても恐ろしく感じた。

 影の王とでも呼べば良いのだろうか?何故かそんな気持ちにさせられた。

 見た目は人間の中年ぐらいに見えるが、影がその人物を包み込んでいる様に見えた。

 そして、その影に包まれる様にして、何処かに消えてしまった。

 ただ、それを感じても僕は安堵する事が出来なかった。

 この夜の闇の中から、まだあいつが隠れて僕を見張って居るかも知れないと、僕はその場から動き出せずに居た。


 夜が終わり朝方になった頃に突然、あいつの気配が消えた。

 影が無くなり、隠れる事が出来なくなったからだろうか?これはチャンスなのだろうか?今なら逃げ出せるかも知れないと思うと同時に、ワナだったらどうしようと言う気持ちが拭えず、僕は恐怖で身動きが取れなくなり、その場で身を震わせて居た。


「うーん、とりあえずその場から動かない様にするのね、お前の魔法の種は分かってるから、下手な事をすれば殺してしまうかも知れないのね」


 突然、声を掛けられて見て見れば、そこには子供が立って居た。

 子供には似つかわしくない大剣を肩に担いで、僕に声を掛けて来た。

 だが、僕は少し安堵した。

 夜に出会ったあいつの様な、圧倒的な存在感も殺気も感じられず、こんな見た目通りの空気感しか漂わせない奴なら、僕にも勝ち目があると思った。


「こんな所に子供が何の様だ?痛い目を見ない内に消えた方が良いよ」


 僕は本当に、心の中から親切心として、目の前の子供に向かって言ってあげた。

 子供が相手を顧みずに言葉を吐けるのは、世の中をまだ知らないからだ、僕はその程度の事を許せる器量は持っている。


「だから、ご主人様には言ったのね。油断させる為にこの見た目にしたみたいだけど、相手に舐められるだけだって、なのに子供なのに大剣を使うギャップが良いとか、よく分かんない事言うから目の前の奴も勘違いするのね」


 目の前の子供が、上から目線で僕にセリフを吐いた。

 どこまで調子に乗ってるんだと、僕は少し痛い目を見させた方が良いのかと、睨もうとした時だった。

 僕の身体に猛烈な衝撃を感じたと思ったら、あり得ない程のスピードで、視界が右往左往し始めた。

 僕は突然過ぎて、何が起こったか分からないままに、身体に掛かる重圧から身動き出来ない状況に困惑する。

 やがて、空を飛んでいる事に気づいた時には、街を抜け出して、目の前の地面にぶつかると思った時に、地面へとそっと降ろされた。

 今までの人生で、これ程地面をありがたいと思った事は無かった。

 地面があるから自分は生きて居られるのだと、心から感謝して居ると、目の前の子供が僕に話し掛けて来た。


「一応尋ねるのね、お前はご主人様をどうするつもりだったのね?」


「ご主人様?ご主人様とはジャンヌの事で良かったのか?僕はジャンヌと添い遂げたい!お前達とは敵対するつもりは無いんだ!」


 僕の今言った言葉は、心からの言葉だろう、言って見て僕の脳も、それが正しいと歓喜して居る様だ。


「うーん、この状況で出てくる言葉が性欲だなんて人間の本能は凄いのね」


 その瞬間だった、僕の生存本能が全力でこの場から逃げ出せと警鐘を鳴らす。

 これが子供?飛んでも無かった、目の前に居る奴は紛れも無く化け物だ。

 昨日会った奴が可愛く見える程に、この子供の格は違う。

 僕は経験からか、目の前の子供から逃げ出そうとする本能を抑えて命乞いをした。

 きっと、僕が逃げ出そうとも、この子供は僕を簡単に捕まえて殺してしまうと思ったからだ。


「殺気を理解出来るぐらいの能力はあったのね。それなら、手間を掛けずに洗いざらい吐くのね」


 僕はそう言われて、今回の件について洗いざらい吐いた。

 だが、それは望む物では無かったらしい。


「うーん、あの男が吐いた情報の成否が分かる程度だったのね。ご主人様の言う通り、大した情報は持ってなかったのね」


 その瞬間に、僕は死を悟った。

 だが、せめてもの抵抗で地面と同化した。

 地面と同化などすれば、あっという間に魔力を削られてしまうが、それしか逃げ道は無いと思ったのだ。

 地面と同化さえすれば、この星と同化した様な物だ。

 その広大さから、逃げ出せると一縷の望みに掛けたのだった。


「まぁ、そうするぐらいは想像出来たのね。」


 子供はそう言うと、持って居た大剣を構えて空を飛び、勢いを付けて地面に向かい、大剣を一直線に突き刺した。

 激しい音と、強烈な衝撃を感じ僕の意識は消えそうになる。


「うーん、街からだいぶ離れたはずだから大丈夫だと思うのね、ただちょっと地面に穴が空いただけなのね」


 もう、何も無くなった空間だと言うのに、あどけない声を感じながら、僕の意識は完全に閉じてしまうのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

 この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。

 名称などの実在の地名、企業名、人名、商品名、団体名などとは関係ありません。

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