第7話 汗は働いてる証
毎日21:10より投稿します。
よろしくお願いします。
軍学校を出た私は、そのまま冒険者ギルドに向かい歩き始める。
少し小腹が空いたと思い、お腹をさすりながら歩いていると、冒険者ギルドの前に屋台が並んでいた。
勝手なイメージかも知れないが、荒くれ者の多い冒険者相手に商売をしているだろうから、味付けの濃そうな食べ物が多そうだ。
その考えを後押しする様に、屋台から漂う匂いが私の食欲を刺激して余計にお腹が空いてしまう。
今は昼を少し過ぎたぐらいの時間だろうか?時計が無いので分からないが、だいたいそんなもんだと思う。
匂いの暴力に抗える訳も無く、ここで少し食べた方が良いかと、自分に言い訳混じりに納得させて、肉串の売っている店に行く。
店の中では、肉を焼いている為に熱いのだろう、店主の髪や服が汗で濡れてしまっているのが良くわかる。
頭は汗が落ちないように布を巻いているので食材に汗は落ちて無いと思われるが、衛生的には少し心配になってしまう。
ただ、屋台飯など、どこもそんなもんだろうと思い、脳内で肉汗おじさんと勝手に名付け、声を掛ける。
「肉串を一つ頂いても良いですか?」
「銅貨一枚だよ。」
肉汗おじさんにそう言われた私は、銅貨一枚を手に取り、肉汗おじさんの左手をそーっと片手で押さえつつ、銅貨を持った手を覆い被せるようにして丁寧に肉汗おじさんの手のひらに銅貨を置いた。
すると肉汗おじさんは普段冒険者を相手しているからだろうか、手渡しなんかで渡される事が無かったのだろう、驚いた表情でこちらを見ながら
「突然何をするんだ!?」
と言って来たが私は構わずに、
「これでお願いします。」
と上目遣いで言った。
すると肉汗おじさんは目を見開き、うっとかあっとか声にならない音を出して慌てふためいていた。
少しやり過ぎたかなと思い、肉汗おじさんが冷静になって貰う為に声をかけた。
「肉串を頂いても良いですか?」
と言うと我に返ったのか、あぁと言いながら目の前にある肉串を渡して来た。
私はそれを手に取り、ありがとうございますと笑顔で言って、その場で肉串を食べた。
肉串は鶏肉の様な味がする。
焼き鳥みたいで、それ程ボリュームは無いのだが、小腹を満たすには丁度良いサイズだった。
味が濃いと思っていたのでクドイと思っていたが、意外とあっさりとしているので食べやすかったし、銅貨一枚なら納得出来る様な味だ。
前の世界では、焼き鳥が好きだったので、飲みに行くとなったらいつも焼き鳥屋が多かった。
この世界でもネギマとかセセリとかそういった物が食べられるのだろうかと、肉串を食べていたら思い出してしまったので、今後、屋台でも良いので焼き鳥とお酒を楽しめる様な店を期待してしまう。
何の肉か肉汗おじさんに聞いてみると、クックと言う飛べない鳥の魔物で、木の実や虫などを普段食べているが、あまりに増え過ぎると、穀物などを食べに畑などを荒らしに来る事もあるので、ある程度間引きをする為に冒険者ギルドで討伐依頼も出ているらしい。
クックは魔物としては、ゴブリンよりも弱い為、初級冒険者が良く刈って来てくれるらしい。
討伐報酬は殆ど入らないが、素材の買い取りは行われるので、少しでも利益を出そうと解体も冒険者が自分でやって売っている。
その為に、比較的安く仕入れる事が出来る食材となっている。
食べ終わった串を肉汗おじさんに渡しながら、ご馳走様でしたとたっぷりの笑顔で言うと頬を赤らめていた。
たぶん私が全力おねだりしたら、何本でもタダで貰えそうだったけど、商売している人からタダで貰うのも仕事に対して失礼だと思ったのでそういったことは、自分に余裕がある内はやるつもりは無い。
どうしようも無かったりとか悪い人からなら搾取するかも知れないが、今は沢山味方が欲しいので、笑顔を振り撒くだけで十分だ。
幻術魔法による加工で見た目が良くなり、得をする事が多いだろうが、あまりやり過ぎると嫉妬で敵も増えるかもしれない。
どの世界でもやっかみはあるのだから。
肉串の屋台以外にもいろいろな食べ物を出している屋台が並んでいたが、今回は他は遠慮する。
食べたい気持ちはあるのだが、今回は食事をしに来たわけでも無いし、帰ったらバファがご飯を作ってくれると言っていたので、今お腹をいっぱいにすると夜ご飯が食べれなくなりそうだったからだ。
屋台の店主達が私を見て商魂逞しく宣伝してくるが、それを笑顔でお断りしつつ冒険者ギルドの扉の前に辿り着く。
ジャンヌ時代に通ってる記憶はあるが、私が入るのは初めてなので少しだけ緊張しながらも扉を開いた。
扉を開くと、冒険者達で賑わっているなんて事は無かった。
こんな昼間からギルドに来る人も少ないのだろう、多少人は居るものの、空いている。
この手の話しでは良くある、異世界作品定番とも言えるギルドで絡まれるなんて事も無さそうなので、安心してギルド内を調べる事が出来る。
冒険者ギルドは、入り口から入って右側付近は待合室になっていた。
左側を見れば、依頼を貼り付けられた掲示板があり、真正面に進むと受付がある。
受付から右側に進んだ先には飲み物などが注文出来るカフェスタイルの店への入り口がある。
そしてそこには、冒険者が普段利用する為か、お酒なども置かれている。
今日は働くつもりも無いのだろう、昼からでもお酒を飲んでる人達がちらほらと居る。
なるほど、軽食程度ならあるようだが、ガッツリした物を食べたくなれば外の屋台で買ってここで食べている様だ。
私は店の中の状況を軽く見た後に掲示板に向かう。
掲示板にはいろいろな仕事が貼ってあり、町の人のお手伝い的な簡単な仕事もあったりする。
中には教会がおこなっている炊き出しのお手伝いなんてのもあったりする。
報酬を見てみれば、そういったお手伝い的な仕事は雀の涙程度の報酬しか貰えない。
ジャンヌの記憶だと、冒険者ギルドの評判を良くする為に低額報酬としてギルドに貼り出させれている物で、ボランティア的な要素が大きい。
荒くれ者の多いギルドの評判をこれ以上落とさない為にと言う人もいる。
内容だけみたら低ランクの冒険者が受ける様なクエストだが低額の為にそのランク帯で受けようとする冒険者などいない。
では誰がこのクエストを受けているかというと高ランクの冒険者だ。
特に、この地に構えて活動をしている冒険者程、その傾向が強い。
この町に愛着が湧けば、その分ギルドへの印象を良くしようと暇な時などにクエストを受けてくれる様だ。
どんな世界にでもある、人々の繋がりって言うのを目の当たりにするとホッコリとした気持ちになるもんだなと思ったが、私にはまだ他人を無償の気持ちで手伝うなんて余裕は無い。
掲示板にあるクエストを確認して、討伐依頼がある程度存在する事を確認して受付けカウンターへと歩く。
ジャンヌはギルド証は持っているのだが、学校に通い出してからはクエストを受けている余裕が無く有効期限が過ぎてしまっているのだ。
今日は、それの更新手続きをする為に来たのだ。
「すいません、ギルドカードの更新をお願いしたいのですが?」
と言いながらギルドカードを受付嬢の目の前に差し出す。
「更新のお手続きですね、ギルドカードを確認するので一度お預かりしますね。」
そう言うと受付嬢はギルドカードを持って奥へと言ってしまった。
しばらく待っていると確認し終えた受付嬢が戻って来て、
「こちら確認が取れました。ジャンヌ様ですね、クエストを受けずに三ヶ月経過してしまったので更新料として銅貨三枚頂きます。」
と言われたので銅貨三枚を渡すと受付嬢はそれを手に取り、更新用の魔道具を取り出す。
魔道具にギルドカードを入れたら後は自動で更新が行われる様だ。
この光景は冒険者登録を初めてした時にも見ている。
「これで更新は完了しました。再度ルールの確認の為に説明をさせて頂きます。」
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
名称などの実在の地名、企業名、人名、商品名、団体名などとは関係ありません。




