第71話 刺激臭
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準備が完了して、私はゴメの元に向かった。
「お待たせしました。よろしくお願いします。」
「いえ、女性は準備にお時間が掛かるもの、それにとても綺麗です。それでは早速行きましょう。」
私は馬車に乗り、城へと向かった。
夜道を馬車で走るのは危険な気もするが、この街には街灯がしっかりと、等間隔で並んでいる為に、夜道でもしっかりと道が見えている。
その後も順調に進み、城の門番にもゴメが軽く挨拶すれば、すんなりと入れる。
そして、私は客間に連れて行かれた。
そこには豪華な食事が既に用意されて居て、イケオジが座っていた。
このイケオジは見た事がある、昨日のBARで仲良くなって喋って居た人だ。
顔を見て少し思い出せた。
その時は、このイケオジも結構酔っ払ってた気がする、調子に乗って、二人してテキーラ祭りをして、何杯もショットで飲んでいた。
そりゃ記憶も曖昧になるよね。
そこで、イケオジは多分お忍びで来てたとは思うが、酔っ払って私は領主だなんて自慢してたから、それを信じなかった私が、本当に領主なら城に招待しなさいよ。
とか言って、それを酔っ払って居たとは言え、このイケオジは、律儀に約束を守ってくれたのだろう。
そして、イケオジともう一人青年が座って居た。
青年もイケオジの血統だろう、イケオジを若くした様なイケメン顔だ。
イケオジもイケメンも髪が赤みがかかっていて、ワインレッドの様な髪色をしている。
そして、イケメン顔が席を立って私に話しかけて来る。
「おぉーマドモワゼル、なんて美しい女性なんだ!私は今日この日の為に生まれて来た様だ、どうかその、美しい顔に付けられた名前を教えて欲しい。」
イケメン顔が、歯が浮く様なセリフで、私に名前を聞いて来た。
「ジャンヌと言います。お世辞でも嬉しいです。」
「おぉ、お世辞なんてとんでもない!私は見た瞬間に、美の神が降臨されたのだと思ったよ。さぁ席に着いて欲しい、女性をいつまでも立たせて置く訳にはいかない。」
そう言って私を席に付かせた、イケオジを見てみると、ため息を付いて首を振っている。
どうやら、いつもこんな調子の様だった。
「おい、コピンその辺にしないか、だいたいお前の事をこの席に呼んだ覚えは無いぞ。どこから嗅ぎつけて来たのか知らないが、抜け目ない奴だ。」
「父さんだけに良い思いをさせる訳には行かないよ?それに、父さんはもう良い歳になってるんだから、少しは落ち着いたらどうだい?ジャンヌも歳の近い俺の方を気に入るはずさ。」
「何を言っているんだ。女性をリードするのは、いつだって大人の仕事だろう?それにジャンヌは私が見つけた美しい女性だ、お前が出る幕は無い。」
「父さんこそ何を言ってるんだ!そんな事だから母さんに、捨てられて逃げられるんだよ!その女癖の悪さをどうにかしたらどうだ?」
「ふっ、母さんは今目の前に居るじゃないか?将来的には、お前の母さんになる人だ。そう考えたら早めに挨拶が出来て良かったな。」
「妄想もここまで来るとお笑いだね、ジャンヌは父さんの娘だよ?そんな風に欲情して良い相手じゃない。」
「そうか、どうやらお前には、父として拳で語る必要がある様だな、表に出なさい。」
「いつまでも子供と思っていると、足元を掬われるよ?俺ももう大人だ、現役を退いた様な老いぼれに、負けるつもりは無い!」
「その辺にしなさい!お客様の前ですよ!二人ともお客様を放ったらかしにして、それが女性を前にした男のする事ですか!」
そう言って、ゴメが二人に説教をして口論を終わらせる。
私はどうやら、ナンパをされているらしい。
二人は未だに睨み合って牽制をしているが、申し訳無いが、私には二人の妻になる様な気は一切無い。
そして、程なくして料理がテーブルが次々と運ばれて来た。
流石、美食の街の城で食べる様な食事、見た目も綺麗で華やかで、味も高級店を思わせる上品な味だ。
セセリには申し訳ないが、これは堪能させて貰うしかない。
セセリはドラゴンの癖に、未だに酔っ払って寝て居た。
まぁ、確かに樽で飲んでたので、あれだけ飲んだらドラゴンでも酒に負けるみたいだ。
「どうだいジャンヌ?我が城の料理は美味しいだろう?お酒もあるんだが飲まないかい?城の中にも美味しいお酒と、専用のバーテンダーも雇っているから、カクテルなんかも用意できるよ?」
そう言って領主に言われたので少し悩む、昨日は飲み過ぎて記憶が無いのだ。
それに、この部屋には狼が二人も居る。
だが、やはり美味しい食事を食べたら、美味しいお酒も飲みたいと思い、領主の提案を受け入れる。
そして、バーテンダーよりお酒がテーブルに運ばれて来た、赤い見た目のお酒で、ブラッディメアリーと言うカクテルだった。
トマトとウォッカをベースに作られ、私が飲みやすい様に、少し甘めにアレンジした物らしい。
そのお酒をゴメが直接、私に渡して来て耳元で囁く、
「ご安心下さい、非紳士的な行動はさせない様に、私が厳しく見ていますので、ジャンヌ様は気兼ね無く、この食事会をお楽しみ下さい。」
イケジジがそう言って来たのだ、これこそが真のイケメンだろう、他の二人は全然イケてない。
紳士さを学んで初めてイケが名乗れるのだ、あいつらはそれを知るまで、ダメオジとダメメンで十分だろう。
イケジジのおかげで、私は気兼ねなく食事会を終える事が出来た。
途中で二人が酔い潰れて、寝てしまっていたが、私には分かった。
あれは酔い潰れたのでは無く、私に睡眠薬を飲ませようとして、イケジジに返り討ちにされていたのだ。
そう言うところが、ダメオジやダメメンと呼ばれる所以だろう。
まぁ、それでも未遂とは言え、私に睡眠薬を盛ろうとした事実は変えられない。
二人には少しの間、反省して貰うことにした。
私はお城での食事が終わり、馬車に揺られて帰っている。
城に泊まって行きませんか?と誘われたが、セセリを置いて来たのを懸念した。
大人しく宿屋に居れば良いが、セセリもこの街を気に入っているし、一度楽しんだ記憶って言うのは、また夜に駆り出そうとするのだ。
ちゃんと幻術魔法を通して、宿屋に待っていろと私が命令した手前、私が帰らない訳にはいかないだろう。
もし、帰らないならセセリも言う事を聞かずに、飛び出してしまうかも知れない。
というか、置いて行った事を結構怒っていた。
自分だけ美味しい物を食べてズルいと、なので私はイケジジであるゴメさんに頼んで、お土産として弁当を何個か作って貰い、持って帰っている。
だから今回は、家に帰る必要があり、仕方ない事なのだ。
だから次回からは、馬車に乗って帰るなんて真似はしない。
飲んだ後にこんな乗り物になるのは、ハッキリ言って自殺行為なのだ。
例え、途中で吐いてしまったのも、この乗り物が悪く。
セセリの為に帰って来たのだから、セセリの弁当から少し酸っぱい匂いがするのも、私は全然悪くは無い。
悪いのは乗り物とセセリ、それは揺るがない事実なのだ。
「ただいまー!ほらセセリ弁当持って来たわよ!」
「ありがとうなのね!じゃあ早速ってなんなのね、この臭いは!?」
「うーん馬車の揺れでちょっとね、咄嗟に近くにあった袋にって、なっちゃったのよね…。」
そう言うとセセリは、袋の中の匂いを嗅ぎ顔を顰める。
「めっちゃ変な刺激臭がするのね!弁当台無しなのね!」
「大丈夫よ!弁当の中身は無事なんだから!はい、もう退いて!弁当の中身を別の容器に移せば、問題無いでしょ!」
そう言って、私はセセリの為に、弁当の中身を別の容器に移動させてあげた。
なんて優しい私!セセリが悪いのにセセリの為に動ける私は、とても良いご主人様だって言えるだろう。
これで美味しいお城の料理が食べれるのだから、堪能するが良いわ。
「なんかグチャグチャなのね…。」
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
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