第69話 魅惑の屋台
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夜になり、セセリが声を掛けてきた。
「ご主人様、もう夜なんだけど、外の様子がおかしいのね。」
私はセセリに起こされて、窓から外を覗いてみた。
「何よこれ?どういう事?」
外を見ると、大量の人で街が賑わっていた。
この世界では、夜になれば街灯も無いので、目の前が見えないぐらいに暗くなる。
暗くなって人から良く見えない状況になると、良からぬ事をする人間も増える。
だからこそ、夜になれば外に出るのは危険になるので、家の中に居るのが当たり前の世界だ。
だが、この街ではまるで、前の世界の都市部の様な賑わいがある。
しかも、昼間の時には気付かなかったのだが、街灯もあり街は照らされている。
この街では夜こそが本番だと言っている様で、私は外に出る事にした。
セセリも夜になれば寝ようと思っていたみたいだが、この賑わいに触発されて街の様子を見に行く事にしたらしい。
外に出ると、真っ直ぐに歩くのも難しいぐらいの人が居る。
ふとセセリの本来の姿を考えて、尻尾が人に当たったりして、バレたりしないか不安になった。
だけど、これだけ人が居れば、身体が当たる事も多い様で、先程からぶつかっている人も居る。
それならセセリの尻尾が当たっても、尻尾が当たったのでは無く、何か違う物が当たったのだと、大して気にも留めなさそうだと思い、このまま一緒に歩く事にする。
むしろ、セセリが居るのが見える事で、変な奴に絡まれる事を敬遠出来そうだし、そっちの方がメリットがあると思った。
街の中を人混みをかき分けて歩いていると、屋台が並んでいるエリアに来た。
今日は昼間にも何も食べて居なかったので、起きた時からお腹が空いていた。
私達は屋台で何か食べる事にした。
屋台には揚げ物だったり、焼き物だったりと様々な物が並んでいた。
「これって、もしかしてアメリカンドッグ?」
「おっ!お嬢ちゃん知ってるのかい?そこにあるケチャップとマスタードを付けて食べると美味しいよ、どうだい買っていかないかい?」
「ケチャップとマスタード!?えーと二つ下さい、ケチャップとマスタードは、この街で作ってるんですか?」
「二つで銅貨3枚だよ、この街では色んな植物や野菜が育てられてるからね、調味料も多く作られているよ。」
「じゃあ、ケチャップやマスタードも何処かで買えたりするんですか?」
「調味料に興味があるのかい?それならあそこにある建物に行くと良いよ、調味料だけじゃなくて、食材も色んな物が売ってるよ。」
「ありがとうございます!是非行ってみようと思います。」
そう言って店主が指差した建物を、脳内の地図にチェックを入れる。
それにしても、昼間は会話もまともに出来ない人しか会わなかったので、ようやくまともに会話出来る人に出会った。
ただ普通過ぎる、昼間に感じたこの街の違和感から、普通に接しられると、それが余計に更なる違和感に繋がる。
その為にも、屋台をもっと調べて調査する必要があるだろう、決してお腹が空いたからって訳じゃ無い。
「これ美味いのね!この変な衣見たいなの、凄い不思議な感触なのね、サクサクしてるのに柔らかいし楽しいのね!それに、このケチャップとマスタードって言ってたやつも、この衣に合ってるのね!ご主人様!これ絶対買った方が良いのね!」
セセリはどうやら、アメリカンドッグを気に入ってくれた様だ。
私も食べてみたが、久しぶりのアメリカンドッグの味に懐かしさから感動する。
前世でも食べた懐かしい味と変わらない味だ、これは他の屋台の食べ物も期待出来る。
さぁ、調査を開始しなければ。
次に屋台で目に留まった物は、焼きとうもろこしだった。
この街は、どれほど私を驚かせるつもりなのか?焼きとうもろこしには、醤油が塗られて焼かれている。
その醤油の焼かれた匂いが、私の食欲を唆る。
「醤油まで作られてるなんて、ここの人達の食文化はどうなっているのよ。」
そう思いながら、焼きとうもろこしを何個か買ってセセリの蔵に入れてもらう。
蔵の中は時間の進みが遅いので、しばらくは保つはずだ。
今食べるには時間が掛かるし、一気にお腹いっぱいになりそうだから、焼きとうもろこしを食べるのは後だ。
セセリは、私の胃袋なんかとは比べられないぐらいに食べられるのだから、目の前で焼きとうもろこしを食べている。
「あぁこれも美味しいし、さっきのも美味しかったのね、ご主人様!さっきのも沢山買って蔵に入れるのね!」
「はいはい、分かったわよ、また後で寄りましょう。」
そう言って、屋台調査を再開する。
「あぁそうよね、屋台なんだから鉄板の食べ物よね。」
目の前では、お好み焼きと思われる物が焼かれていた。
何故、こんな西洋っぽい国にお好み焼きがあるのか、それはもう分からないが、醤油に続きソースまであるなんて、新たな調味料が続々と現れる。
しかも、マヨネーズまで付いている。
これで、定番のマヨネーズで金稼ぎみたいな事は出来ないが、それよりも目の前にあるお好み焼きを食べたい気持ちを優先させる。
「なんなのね?この食べ物は!めちゃくちゃ濃厚な味がするのね!僕もうこの街がら出たく無いのね!」
「この街が安全な街ならまた来れば良いわよ、調味料も買えるみたいだから、私でも作れるわよ。」
お好み焼きも奥が深い食べ物だが、誰でも作れる食べ物でもある。
焼いてソースとマヨネーズを付ければ、なんと無くお好み焼きになる。
まぁ、質を求めなければだが。
セセリのテンションは、さっきから上がりまくって、屋台の食べ物をヨダレ全開で見ている。
それだけ、はしゃいでヨダレも垂らして居たら、目立ってしまうだろうに、私はなんとか幻術でまともに見える様に取り繕いながらも、目立たない様に屋台巡りをする。
その為に、私の加工も弱めにしてる。
綺麗過ぎると、目立ってしまうからだ。
ただ、この街の住民の顔もかなり美形が多い、年齢も若そうな人ばかりだ。
そのおかげで、私の加工弱めの姿は目立つ事は無いだろう。
そして、その屋台の前に立った時に、私のテンションはMAXになった。
「見て見て!セセリあれよ!チョコバナナよ!チョコよ!チョコまであるわよ!」
「それも、ご主人様お勧めなのね?聞いた事ない名前なのね!なんだか分からないけど食べるのね!ご主人様買って欲しいのね!」
「当たり前じゃないの!買い占めるわよ!」
屋台の前に行き、店主に話し掛ける。
「すいません、それ全部下さい!」
「全部??全部ってここにある物全部かい?」
「えぇもちろんです!いくらになりますか?」
「全部買ってくれるなら、銀貨4枚で良いよ。」
「ありがとうございます!さぁ、セセリ食べるわよ!」
そう言って、私達はチョコバナナを口に運んで食べる。
チョコとバナナって、なんでこんなに合うのだろうか、何個でもいけちゃいそうだ。
そう思って、もう一本口に運ぶ。
「お嬢ちゃん達は、この街は初めてかい?」
「えぇ、昼間に到着したのですが、人も全然居なかったので、今こんなに賑わっていてビックリしています。」
「あぁ、この街は夜型の人間しか居ないからねー、昼はちょっと苦手な人が多いんだよな。最近は観光客の間でもそれが広がったのか、夜まで寝ている人が多いんだよな。まぁ、夜はこうやって毎日賑わってるからよろしくな。」
「そうだったんですね。私達はたまたまこの街に寄っただけなんで、知りませんでした。」
「あぁ、じゃあビックリして当然だな。美食の街アイパンバにようこそ!食文化が発展してるんで、有名な街さ。」
屋台に出てた物を買い占めたので、上機嫌になった店主に、色々と教えてもらいながら、チョコバナナを食す。
店主は、また新しくチョコバナナを作り出したので、これ以上はお邪魔だろうと思い、調味料が売っている建物を目指す事にした。
屋台でお腹を満たされたのと、この街の情報が手に入ったので、違和感も解消された。
まぁ、繁華街みたいな感じの街だと思えば、確かに昼間は静かな場所は多い。
昼間の人達の態度は良くないと思うが、それもこの街に来ている私達が、この街の住民に合わせる方が良いだろうと思ったのだ。
だからか、安全な街だと感じたので、ここから調査では無く、観光を楽しむつもりだ。
屋台で食べてただけで、ずっと観光している様なものだったが。
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
名称などの実在の地名、企業名、人名、商品名、団体名などとは関係ありません。




