第53話 墓場
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アンドローサルクスから距離を取った私は、中級ポーションを飲む。
中級ポーションは、私が負傷した肩を癒してくれた。
これでもう一度だけ全力の一撃を放てる。
「あなたが、私をどれだけ嘲笑おうとも私は負けない、確かにあなたを倒す事は出来ない、でもその能力のおかげで気づいたわ!どうしてあなたがこの地に居られるのかを、倒せないかもしれない!でもあなたに勝つのは私!その余裕の顔を焦った顔に変えてあげる。」
私が装備している武器が薙刀で良かった、広範囲を攻撃出来るこの武器なら、今から行う事も可能だろう。
そして試されるのは私の技量、寸分違わぬ攻撃を繰り出さないといけない、それは少しの誤差も許される事ない一撃、もし失敗すれば私の負けだと素直に認めるしか無かった。
アンドローサルクスは、身体の再生が終わると再度、私に向かって攻撃をして来る。
私は今度は透過解除をさせない様に動く、聖槌デメテルを使い、透過状態のアンドローサルクスの身体に土の粒子が入っていく。
その為に、アンドローサルクスは攻撃しようとも透過状態を解除する事が出来ずに、私に向かってそのまま走ってきた。
私はそれに対して、薙刀に力を込めて素早く薙刀を水平に振る。
地面に対して完全に水平を保っている薙刀から放たれた一撃は、芸術と言わんばかりの軌跡を描く、その一撃はアンドローサルクスの足へと放たれた。
足と地面の接地面、薄皮一枚程度の部分を超低空で放たれた一撃だ。
私の体勢も、その一撃を放つ為に崩れながら放たれているのに、水平を維持する事が出来たのは奇跡に近かった。
放たれた一撃は、透過状態であるアンドローサルクスの四本の足を切断するのだった。
最初から不思議に思うべき事だった、全身が透過状態なら、地面の上を歩くのは不可能なのだ。
異世界と言う環境が、それを不思議に思わず異世界なのだからと、何らかの都合の良い力が働いているのだと、どこかで考える力が失われていたのだ。
確かに異世界だと、何でも可能なのではと思ってしまう。
事実、私の幻術魔法もチートじみた事が可能なのだから、だが幻術魔法も弱点というか、出来ない事は多い。
そして、この目の前の理不尽大王の防御性能は、何でもありと思わせる程だった。
だが、だからこそ思考し続ける事が大事だった。
相手の弱点をもっと考えるべきだったのだ、事実ヒントはたくさんあったのだから。
そして、私の攻撃を受けたアンドローサルクスは、地面へと吸い込まれいく、地面に接地する部分が切られてしまい、触れられる部分が無いので、地面の下の方、下の方へと吸い込まれる様に入って行くしかなかった。
接地面を斬るとなると、神技的な技術が必要だった。
だが、私はそれを実行する事により、透過能力を逆手に取った一撃を成功させたのだ。
これでアンドローサルクスを倒せるかは分からない。
だが、一度地面の中に吸い込まれてしまったアンドローサルクスに、透過能力を解除する事は出来ない。
この世界の地面の中がどうなっているかは分からない。
もしかしたら、このままこの星の反対側まで落ちて行くのかも知れない。
だが、ここでの戦闘は私の勝ちだと言えるだろう。
アンドローサルクスを倒す事は出来なかったが、勝負には勝ったと自分を納得させる。
「えぇそんな勝利で良かったのね?」
「仕方ないじゃない、あいつ永遠に再生するんだもん。」
「だから僕のブレスで倒せば良かったのね。」
セセリのブレスも理不尽の塊だろう、その放たれたブレスは、あらゆる物を吸い込み破壊してしまう。
例え透過状態だろうが、セセリのブレスの前では、ただ立っているだけの的となり、殺していただろう。
「あなたを頼ったら負けの様な気がするからいいわ。」
「僕も、もうご主人様の力の一部だと思うのね。」
「まぁ一部は活用させて貰うわよ、私の物語が楽しくなるぐらいには。」
「僕もご主人様の戦いを見ていたら戦いたくなるのね、全力を出したいのね。」
「あなたが全力で戦える相手なんて居ないでしょ?それとも、パパママと戦って来る?」
「うわぁ、無理なのね、それなら僕はもう少し我慢するのね。」
「でしょうね、まぁあなたは今は技量を磨く事ね。」
「うぅ、分かったのね。」
さぁこれで、今日の探索は終わるしかないだろう。
探索しようと思っていたのに、アンドローサルクスに出会ってしまい、予想以上に戦闘が長くなってしまった。
もうすでに夜空には星や綺麗な月が見えている。
どの世界に行っても、夜空に輝く星たちは綺麗だなぁと思いながら拠点に向かった。
拠点では、本日もまたオーク肉を焼いて食べた。
流石に動物タンパク質ばかりの摂取にも、飽きて来てしまった。
木の実はだけは入手していたので、こちらも食しているのだが、甘過ぎて、こちらも少し私にはくどく感じてしまう。
それでもセセリには好評の様だが、そろそろ植物性タンパク質も食べたい、大豆製品があれば一番食べたいのだが難しいだろう。
それならせめて魚が食べたいと思ってしまう。
排水溝は、ジャングルのどこかにある水源から水路を引いている様だったので、明日はそこを探すのも良いかも知れない。
まぁ、、行ってもポイズントードが居るだけかもしれないが、ポイズントードもあっさりしているので、オーク肉よりは良いかもしれない。
このジャングルに魚などが居るなどと、期待するのは難しいだろう。
居たとしてもモンスターだ、このジャングルでの生存競争が、普通の生き物を許さないと分かったからだ。
ただ、魚型のモンスターでも良い、まぁ美味しければと言う言葉が前につくが、川魚なら焼いて食べるのが美味しいだろう。
ジャングルに来てからは戦闘ばかりで、全然探索は進んでいない、ラフレシアを探す事が全然出来ていない。
だが、いつかは見つかるだろう、だから今は戦闘のストレス発散の為に、食事を充実させようと考えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
アンドローサルクスは、怒りに震えていた。
ここまで、コケにされた事は産まれてから初めての事だった。
今までも、戦闘から逃げ出す人間はたくさん居た。
戦闘に対して興味はなかったので、追いかけるのが面倒に思い、そのまま気にせずに見逃していた。
だが、今回の戦いでは、ずっと痛い思いをして、それでも初めて思考をめぐらして、目の前の敵を倒そうと必死になっていたのだ。
それなのに、戦闘は不完全燃焼となり、今はただただ地面に落ちて行くしか無かった。
透過能力は絶対的な自信があったはずなのに、それを利用されて、あの人間にいいようにされてしまった怒りに、自分自身への不甲斐なさへの怒り、そして、今どうする事も出来ない状態に陥ってしまった事へも憤りを感じてしまう。
アンドローサルクスは、星の真ん中に向かって落ちて行く。
だが、それもやがて終着点へと辿り着く。
星の真ん中、重力の中心であるその場所には、超高温のガスが溜まっていた。
だが、それだけでは無かった、いつからそこに存在していたのかは分からないが、そこにはアンドローサルクスの死体が何体も存在した。
透過状態で死んでしまったが為に、ここまで落ちて来てしまったのか、それとも自分みたいに生きたまま落ちてきてしまったのか、分からないが透過解除出来ずに、この星の重力に引っ張られながら、ここでみんなが重なり合って死んでしまった様だった。
そんな、アンドローサルクスの墓場とも言える場所に到着したその時だった、ずっと透過解除を願っていた為だろうか、アンドローサルクスの死体に自分も重なった瞬間に、全てのアンドローサルクスと、奇跡的に細胞が結合した。
その瞬間に、アンドローサルクスは別の個体へと進化をする。
群れずに孤独に生きて来た者たちが、最後は一つとなってしまうのは、何とも皮肉な話しだろう。
進化し、透過能力も進化した、この場所からもその力で直ぐに出られるだろう。
だが、進化したばかりの身体は、まだ上手く馴染んでいない。
何体ものアンドローサルクスと、合体する様な形で進化したのだから仕方ないだろう。
身体が馴染んだ時、あの人間との決着をつけに行く。
次こそは必ず勝って見せる、その為に自分の身体が馴染むまでの間に、、能力の解析を行うのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
名称などの実在の地名、企業名、人名、商品名、団体名などとは関係ありません。




