第25話 パッパラパーパー
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最近は幻術魔法を使う時に、気配を消す為の補助として使う事が多かった。
戦闘に使うと言うよりは、戦闘にならない為に使用して、1体1の戦闘になったら幻術魔法は使わずに自分の技術だけで戦っていた。
それも、剣の練習の為に行っていたのだけれど、そろそろ幻術魔法の練習もしないと、いざと言う時に使えなくては意味が無い。
それに、自分の技術だけで戦う場合は、複数相手にするのは厳しく感じた。
まだまだ余裕を持ってはいるが、万が一がありそうだったので、そこにリスクは必要無いと判断していた。
ただ、幻術魔法を上手く使用すれば、複数相手でも戦えると思っている。
問題は剣を操作しながら、正確に魔法をイメージして使えるかどうか、ここの練習が必要なのだ。
ゴブリンとコボルトの境界線らしきところまで来ると、そこにゴブリンは居なく、コボルトが複数体のパーティーを組んで警戒をしていた。
やはり急にゴブリンが居なくなったせいで、警戒をしている様だ、さっきの斥候らしきコボルトを倒したので、もう少しこの警戒は続くかもしれない。
だがそれも、何も問題が無いと判断したら、ゴブリン達の縄張りを自分達のものにしようと動き出すかもしれない。
いきなり複数体を相手にするのは危険だと判断した私は、個体で居るコボルトを探す為にさらに南の方に向かう事にした。
昨日の話しだとゴブリンは、境界線付近に多く存在して縄張りから離れた所だと数が少ないと、受け付け嬢が言っていたので、コボルトも同じだと思ったからだ。
その考えは正しかった様で、目の前に手頃なコボルトが歩いている。
「おぉーい、相手してもらっても良い??」
そう声を掛けると、コボルトはこちらを向いて警戒の為に武器と盾を構えた。
私はそれを見て、コボルトに向かって一気に走り出して距離を詰めると、コボルトの槍目掛けて剣を横薙ぎにして斬りつけた。
コボルトはそれを見て冷静に剣を槍でガードする為に合わせようとしたのだが、剣は槍に当たる事は無かった。
突然消えた剣に動揺していたが、私の剣はすでにコボルトの首元にあった。
コボルトは突然首元に現れた剣に気づくと驚き、すぐさま後退して距離を取る。
「また練習相手探すのも面倒だからね、貴方にはまだまだ付き合って貰うわよ。」
私は、今度はあからさまな大振りで剣を上から振り下ろすと、コボルトはそれを盾で受けようと身構える。
剣が盾に当たる衝撃を待っていたコボルトは、盾を持つ手に力を込めて衝撃に備えているが、いつまで経っても剣は来なかった。
そして剣はまたコボルトの首元にあり、それに気づいたコボルトはまた恐れ慄きながらも後退した。
コボルトは何をされたか分かっていない様だが、私が今やったのは幻術魔法をフェイントに使っただけだ。
実際に剣で斬りつける様に私の幻術を見せたが、コボルトにはそれを判断する事が出来ずに、実態のない攻撃をガードしようとしていただけだ。
「まぁこんなもんかな、次はこんな攻撃はどうかしら?」
私は右手の手のひらを上に向けると、そこから火の玉が出てくる。
出て来た火の玉をそのままコボルトに向かって放つ。
するとコボルトは盾でそれをガードしようと構えたが、私が放った火の玉は幻術なので盾に当たる事は無い。
そのまま盾を持っていた左手に火の玉が接触すると、コボルトの左手は燃え上がる。
コボルトの左手に生えている毛を燃やし、中から見えた皮膚は、沸騰したかのようになっている。
コボルトはあまりの痛みに叫び声を上げて、なんとか火を消そうと右手で火を振り払うが、そんな事で火が消える事は無い。
だが、私が魔法を解くと、先ほどまで燃え上がっていたはずっだった左手は、毛も燃えていた痕跡も無く、火の玉が接触する前と変わりのない手がそこにはあった。
コボルトはそれを見てもう何が何やらわからない様で、困惑して逃げ出そうとしている。
だが、私に背を向けて逃げ出した先には、私が既に先ほどと同じ様に、火の玉を出して構えていた。
それを見て別の方向に行こうとするが、そこにも私が同じ様にして火の玉を出して構えている。
必死になって方向を変えては、逃げ出そうとしているが、逃げ出そうとした方向には全て、私が同じ様に構えている。
やがて、逃げ出す事が困難だと悟ったコボルトはその場で立ち尽くす。
それを見て全ての私は、コボルトに向けて一斉に火の玉を放つのだった。
火の玉を受けたコボルトは、その場で全身が燃え上がり断末魔と共に絶命した。
私が放った火の玉はもちろん実体を持たない幻術である。
だが、これが本物であると私が演技をして、実際に燃えるように皮膚も全て再現したのだ。
そうすると、脳が魂がそれは本物だと騙されて実際に死んでしまう。
実体では無いので、ガードする事も不可能だし、実際には、なんの傷も火傷も存在しない。
だが、実際に焼かれている様な、痛みも感じる様に五感を再現して見せた。
そこまですると、あまりの恐怖と痛みで脳や魂が死を受けいれてしまう。
今回は火の玉だったが、実際にフェイントでは無くそのまま幻の剣で斬りつけても、同様に死に至らしめる事が出来るだろう。
目の前には何の傷も無いコボルトが倒れている。
一応ちゃんと死んでいるか確認したが、間違い無く死んでいる様だ。
私は討伐部位の右手の手首を切り落として、次は複数体を探しに行く。
複数体なら先ほどの境界線に向かえば、居るだろうと思い歩いている。
さっそく3体のコボルトを発見した。
「おーい!犬っころ、こっちにおいでー!」
私は挑発混じりにコボルト達に声を掛けた。
そうして私に気づいたコボルトは、私に向かって襲い掛かって来た。
境界線近くに居るせいか、いつ戦闘になっても不思議じゃないのだろう。
敵を見つけたらとにかく先手必勝で、攻撃するようにしている様だ。
実際に境界線近くでは戦場の様なもので、躊躇した方が危なかったりしそうだし、それで有利に運ぶ事は多いだろう。
だが、
「それは悪手よ、犬っころ。」
私に攻撃して来たコボルトの攻撃は、全て空を斬る。
そこに本物の私は居ないのだから当然だ、そして本物の私は、先ほどコボルト達が居た場所に立っている。
「忍法、分身の術」
そう言って、私の分身を幻術魔法で8人作り出す。
いやぁやっぱりこう言うのはやりたくなっちゃうわよねー。
見た目は銀色と金が散りばめられたフルアーマーを着ていて、なんとも神々しい姿で、手に持つ武器は様々で、大剣や槍、ハルバードなどを持っている私も居る。
「さぁ、ここまで来たら音楽も欲しいでしょ?この戦場に相応しい音楽を聴かせてあげる。」
そう言って私は幻術魔法で「ワルキューレの○行」をコボルト達にも聞こえる様に流し始めた。
そこからは蹂躙の始まりである。
遠くまで聞こえるぐらいの大音量で流し始めたので、近くに居たコボルト達もここに集まってくる。
私の分身のワルキューレ達は、それを意図も容易く切り伏せる。
そうしてこの場に集まったコボルト達の死体が、そこら中に転がっている。
コボルト達の死体には何の傷跡も無いが、顔は恐怖と痛みで歪んでいる。
そうして、コボルト達を倒し終えて満足したワルキューレ達は、その場で私にひれ伏すと、
「ジャンヌ様、それでは私達はこれで、また何かあればお呼び下さい。」
とセリフを吐いてその場から消えてしまった。
今の文面のまま受け止めてしまうと、私が彼女達を呼び出したように感じるかもしれないが、彼女達は間違い無く、私が生み出した幻のイメージだ。
ただ、私の意思や思考で動いているわけでは無い。
いや実際には私の思考で動いていると言えるかもしれないが、彼女達は私をイメージして作られた見た目で、中身は私のイメージした演技で作り上げられている。
私は演技に熱が入ると、自分自身の意思や思考を忘れてしまい、演技に没頭してしまうので、私的に言わせてもらえば、彼女達は彼女達の意思で動き行動しているのだ。
小説家や漫画家達から言ったら、キャラが勝手に動き出す。
という表現に近いと思う。
その為、彼女達は自分達の仕事が終わるとキャラに合ったセリフを言って、満足して消えてしまったのだ。
最初はただ分身するだけのつもりだったのだが、やはりそれぞれ個性を持たせた方が良いと思った。
それなら私を含めて9人のワルキューレ部隊にしてしまおうと言う、悪ふざけに似たような思い付きだったのだが、こう言う突発的な発想ほど、興が乗る事もある。
だからこそ、いつもより演技に熱に入ったのも理由の一つだったのかもしれない。
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
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