第15話 段取りはスムーズに
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「ずいぶん熱心にお祈りをされるのですね。」
そう声を掛けると少女がこちらを向く。
こちらを向いた少女の顔を見た瞬間、ゴディ神父は驚愕した。
あまりにもこの世の物とも思えない美しさを少女は持っていた。
人が生み出したにしては、あまりにも理想的な美しさにまさか、神の使いが顕現されたのでは無いかと思った。
「母が死にました。その為、母が死んだ後は幸せになって欲しいそう思って神様に祈っていました。」
そう言われて神父は冷静さを取り戻した。
そして、まだ大人になりきれていない程であろう少女の母親がもう死んでしまったのかと嘆いた。
「では私もあなたの母親に祈りを捧げましょう。」
そう言って私も少女と一緒に祈りを捧げる。
少女は私を見て同じように祈りを捧げていた。
「今日はお祈りをする為に教会に来たのですか?」
「それもありますが、母の葬儀をお願いしたいと思い来ました。」
それを聞いて少女の身なりを見て貴族では無さそうだと思い、また準ずる人でも無さそうだったので火葬を希望されるのだろうと思っていた。
「それでは火葬を希望されに来たのですね?」
「いえ、土葬を希望しています。お金ならありますのでお願いしたいのですが。」
それを聞いた神父は目を見開く、こんな少女のどこにそんなお金があるのだろうか?土葬を行うのなら最低でも金貨三枚は必要だ。
普通の住民でも払おうと思えば払えるかもしれない、だが、モンスターが蔓延るこの世界では、死んだ者に対して金を掛けている余裕なんて無い、これから先の事を考えてお金は蓄えているものなのだ。
モンスターによって村や町は一晩で滅びてしまう事もあり、運良く逃げ出した者達も無傷では済まない事が多い。
逃げ出した先でいざ働こうとしても、怪我で働けないなんて事もあり、その時に蓄えがあれば良いがなければ道端で寝泊まりし、おこぼれにあずかる事でしか生きながらえないのだ。
そして、そんな逃げ出した者達がこの街では多く集まったりしている。
自分達の村や町が滅んでしまったのなら、より大きな都市へと向かうのだ。
同じ規模の村や町に行っても、また襲われる恐怖を少しでも薄れさせる為に。
そんな事もあり、この街の人はそう言った人達を路上でよく見かけているので、あぁはなりたくないと思ってしまう。
そうならない為にも不足の事態の為にお金を蓄えるか、いつ死んでも良いように、蓄えを残さずに今を生きる為に浪費してしまうか、どちらにせよ自分のためにお金を使うようにする。
例え、親族でも生きているならまだしも、死んだ者の為にお金を使う事はない、それこそ貴族でも無ければ。
だからこそ神父は、先程は火葬を希望するのだと思って聞いたのだ。
土葬を希望するのは貴族でしか居ないからだ。
だが希望される以上は神父はその通りに受ける必要がある。
「土葬ですね?分かりました。お母様の遺体はどうされてますか?」
「警備隊詰所の安置室に、今は置かせてもらってます。」
警備隊詰所と聞いて神父はまた嘆いた。
警備隊という事はこの街内で起きた事であり、モンスターに襲われた訳でも、病気や怪我で亡くなった訳でも無く、そこには住民が関わっているだろうと予想出来たからだ。
「そうですか…分かりました。もしよければ今から一度遺体を確認させてもらいたいので、安置室に伺ってもよろしいですか?」
「はい大丈夫です。私としては助かるのですが、よろしかったのですか?」
「はい今なら時間に余裕があるので、それに不幸があった遺体を、いつまでも放置するわけにはいけませんので。」
「ありがとうございます。では私もこれから行こうと思っていたので、ご一緒させていただきます。」
「分かりましたお願いします。では向こうに行ってから詳しい土葬の日程を決めましょう。」
◇◆◇◆◇◆◇◆
神父様が私と一緒に安置室に行ってくれると言うので、せっかくなので道中は神父様といろいろな事を話しながら向かった。
神父様の名前はゴディと言い、とても感じの良い人だという印象を受けた。
正に好々爺と言う感じで言葉遣いも丁寧で話しやすい。
魔法の才能の話なんかも面白かった。
モンスターは固定の魔法しか覚えず、人にしか様々な魔法の才能は発現しない。
だからこそ人々が協力しないといけないと、神様は言っているのです、と言われた時に確かにと思ってしまった。
人だけが多種多様な魔法が使えるのには何かの意図を感じる。
前の世界では、私は神など全く信じていなかったが、こうやってジャンヌの身体に入り込んでしまったのだから、超常現象も信じるしかないし、実際に魔法があるのだから、何があっても不思議ではないかも知れない。
魂の存在も、私がジャンヌに入り込んだのならほぼ証明したようなものでは?と思ってしまうし、それなら神様だっていても全くおかしくない。
ゴディ神父には自分の事も話していた。
自分の事と言っても、明日からは冒険者として少し活動して行こうと思っているだとか、落ち着いたら軍学校にまた通おうと思っているとか、そういった話しだ。
余計なことまでは言わないようにはしていたが、もしかしたら少し言ってしまったかも知れない、ゴディ神父は聞き上手らしく気持ちよく喋ってしまう。
そんな話しをしていたら、あっという間に警備隊詰所へ到着する。
良かった、このままだと復讐を考えている事とかも何でも話してしまいそうだったので、ここで会話の内容が切り替わるのは助かる。
この神父はあれだ、告解室とかで日夜、人々の罪の告白を聞いたりしているに違いない。
警備隊詰所の扉を開けて案内窓口に声を掛ける。
「ファリンは居ますか?」
「直ぐに呼んで来ます。」
ジャンヌが声を掛けると直ぐにでも対応してくれる。
ジャンヌは警備隊詰所での影のボス的な存在になりつつある。
ジャンヌが声を掛けたら全員がジャンヌの為に行動してくれるだろう。
それ程、ジャンヌに接っする時には緊張感と憧れの念を感じるのだ。
それに、あの人、全力で走って行ったし…そんな最重要任務でも受け取ったかのように、走ってまで呼び出しに行かなくても良いのに…。
その為にファリンは呼ばれてから直ぐに来た。
「ハァハァ…なんか凄い焦らされたんだけどジャンヌ何かあったの?」
「特に何にも無いんだけど…。」
ファリンは何が何だか分かってないようだったが、走らされた為に少し息切れをしている。
さっきの人も全力で走った為か息切れをして、その場で息するのもしんどそうにしていた。
とりあえず話しを戻す、というか始まっても無いのだが…。
「こちらがゴディ神父になります、安置室にて母の遺体を一度確認したいと言うので、一緒に来ました。」
そう言われて初めてファリンは、ゴディ神父を認識したようだ。
「あぁゴディ神父ですか、いつもお世話になっております。ゴディ神父なら問題無く入って大丈夫なので、安置室に案内しますので付いてきて下さい。」
ファリンは仕事柄、ゴディ神父と面識があるようだった。
「ファリンさんありがとうございます、それではよろしくお願いします。」
そうして安置室に向かう。
と言っても建物内にあるのだから直ぐに着いた。
安置室に着くとゴディ神父が遺体を確認してからジャンヌに話し掛ける。
「遺体を確認しましたが、今のところ問題無いようですが、このまま放置していたらゾンビ化する可能性もあります、葬儀を行うなら早い方が良さそうですが、ジャンヌさんは明日は冒険者ギルドでの受注のお仕事があるのですよね?」
「いえ、冒険者ギルドではまだクエストを受注はしておりません。なので、ゴディ神父が都合の良い日に合わせて葬儀は行いたいです。クエストは空いた時間にやれれば良いと思っていただけなので。」
「それなら明日行いましょう。早ければ早いほど良いので。」
「はい、すいませんありがとうございます。それでは明日でよろしくお願いします。」
そう言って明日の詳しい段取りを行い、遺体も教会の方で見てくれるそうなので、教会に遺体を運ぶ事になった。
遺体の運搬は警備隊員が行ってくれるそうでお願いをした。
そこでまた一悶着があり、誰が行うかで揉めそうだったのだが、ファリンが近くに居た人達を適当に名指しして事なきを得たのだった。
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
名称などの実在の地名、企業名、人名、商品名、団体名などとは関係ありません。




