第14話 宗教は神が作ったのか人が作ったのか
毎日21:10より投稿します。
よろしくお願いします。
家を出た私は、教会に向かって歩き出した。
教会までの道のりはジャンヌの記憶が教えてくれる。
ここから歩いて三十分もすれば到着出来る距離にある。
この国にある教会は国によって管理されている慈善事業団体である。
民衆が国に敵意を向けないように教会を設立した。
何かあれば神様に祈りなさい、神様が見守ってくれるから、もし死んでも神様が死んだ後の世界で助けてくれるから、だから善意ある行動をしなさい。
モンスターによって人の生き死にが決まる事がある世界だからか死んだ後に救われる事があると言って恐怖を取り除き希望を与えているのだ。
そうして、定期的な慈善事業を行う事によって神様が人々の事を考えて救いをしてくれる。
そう思うように意識を誘導して信仰を集めている。
これだけ聞くと教会は、国によって良いように扱われてる様に感じるが、働いている人達はそんな事はない。
自分達が行ってる事が真剣に神の救いによるものだと思っているし、完全な善意でやっている。
良くある異世界物の作品みたいに、教会の権力を利用して金儲けをして豪華な暮らしをしているなんて事は無い。
もしかしたら一部の人達ではそういった人間も居るかもしれないが、それは組織である以上どこにでも腐ったみかんは居る物だろう。
民衆も国や教会の布教活動のおかげで信心深い人達が多い、毎日のお祈りは欠かせないし、神の救いはあると信じている。
もし、現世で救いが無くても来世で必ずあると信じているので、悪いことはせずに良いことをして救いを求めようとする。
その為、国では比較的に治安が良いのだった。
それでも道を踏み外す人間は居るのだが、ジャンヌの母親に暴行をした三人組なんてのは良い例だろう。
そう言った者は、自分達は特別に選ばれた人間だから何をしても大丈夫だと勘違いしているのだ。
特権的な階級に属する者や特別な魔法の才能を授かった者達はそう言った意識になる傾向が強いと言える。
以上が私がジャンヌの記憶を読み解いて導き出したこの国の宗教にまつわるイメージだ。
そんな事を考えながら歩いていたら、もう目の前に教会がある。
教会の扉を開けると正面の奥にはこの国の神様達の像がある。
どれも見た事も無い神像でジャンヌの記憶だと、この世界の全てを生み出した創造神と、その作り出した世界を管理するための神様が居るらしく、全部で七体の神像がある。
管理する神様も創造神が生み出した神様で、光、闇、火、水、風、土の神様達が居る。
さらにその管理する神様達の部下の神様も居るらしいがそこまでは覚えきれていない。
国が違えば神も違うらしいので、それは前の世界と同じだなと思った。
またモンスターという共通の脅威があるからか、国同士の大規模な戦争は無いみたいだけど、小競り合い程度はあるらしい。
モンスターの脅威が無くなれば宗教戦争みたいな事になっていたかもしれないと感じ、モンスターがいる事は平和な環境なのかも知れないと思った。
戦争は無くならない、それは前の世界で何度も見てきたのだから。
私は、そんな事を思いながらも神像の前に立つと祈りを捧げた。
私自身は信仰心なんて無いけど、この国に住んで居る以上はやらないのはおかしいと思ったからだ。
ただお祈りしたのは良いのだが、どのぐらいの時間お祈りをしていれば良いのか分からなかった。
お祈りをしながらジャンヌの記憶を思い出してもそんな細かい記憶は思い出せなかったので、思い出そうと祈り続けていた為、それなりの時間祈っていただろう。
流石にこれ以上は必要無いだろうと思い祈りを止めると、
「ずいぶん熱心にお祈りをされるのですね。」
白髪で白い口髭と顎髭を生やした、おそらく六十代ぐらいだと思われる神父様から声を掛けられた。
どうやらお祈りの時間が平均よりも長かったらしいので熱心な信者に思われているようだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ゴディ神父おはようございます。」
「あぁおはよう。」
教会に着くと朝掃除をしていたシスターから挨拶をされる。
今日は天気も良く光の神スガキ様の元気が良いようだ。
私は教会に入ると神々の像に今日も感謝のお祈りをする。
お祈りを済ましたら神父室に入り、帳簿の確認をする。最近は、献金が少なくなってきている為、毎日、頭を悩ませている。
神の救いを行うにもお金はどうしても必要だった。
炊き出しや孤児院の運営を行うにもタダと言う訳にも行かない。
国からは補助金として、いくらかお金は貰えているのだが、そのお金も徐々に減ってきている。
最初の頃は、お金の代わりに物資を融通してくれていたのだが、最近ではそれすらも減ってきた。
ただ、原因は分かっていた、オーガによる襲撃によって、町や村が次々と滅ぼされてしまい税収を取る場所が無くなった。
税収が減ってしまえば国の財政も傾いてしまう。
無い袖は振れないので、教会にも金が入ってこない、入って来なければ神の救いが出来なくなってしまうのだ。
国も教会が神の救いを行わない事にはデメリットがある。
神の救いが無くなれば信仰心が減り、信仰心が無くなれば国への不満が増える。
国への不満が増えてしまったら、王族や貴族に敵意が向けられて、民衆による反乱の可能性だってある。
数による暴力は計りしれなく、等しく魔法の才能を受ける世界では、才能の良し悪しはあるが数多くの魔法を行使されたなら、普段から鍛えている騎士団とて制圧は難しい、難しいどころか高確率でやられてしまうだろう。
魔法にも相性があるし、母数が増えたらそれだけ相性の悪い相手と多く戦わなければいけない。
多くの民衆が一つの目的の為に動いたら、それを止める手段を国は持っていないのだ。
だからこそ、国は宗教を大事にして国を守る為の盾として神をつくり教会を作ったのだから。
神が造られた者である事は、実は教会関係者の一部は知っている。
それを知った時に絶望して教会から去った者も居れば、必要善として無理矢理心を納得させた者もいる。
だがゴディ神父はその事実を知ってもなお神の存在を疑う事は無かった。
確かに神を認識するきっかけがそれだったのかも知れない、そう、ただのきっかけとして人が神を造ったと勘違いしているのだ。
ただそんな思い上がった人間に対しても神は歯牙にも掛けないのだ。
神はもっと崇高で尊い存在だ。
常に私達に自立を促し、成長を望んでいる。
人には魔法と言う才能がある。
それも多種多様な才能があるのだ。これがモンスターだと違う。
モンスターにも魔法を使ってくる個体は存在する。
だがそれは固定されたもので、人間であれば人によって火魔法も使えば、水魔法を使う人もいるし、風魔法や土魔法だって人によって現れる才能が違うが、モンスターはそのモンスターが覚えられる魔法に限られている。
簡単に言えばサラマンダーと言うモンスターがいるが、こいつは火魔法を使ってくるが他の魔法を使う事は無い。
こいつが使う魔法は絶対に火魔法なのだ。
だが人間だけは、なんて多様な魔法が使えるのだと思う。
それはやはり神が人間を特別に思ってくれているからではないかと感じているのだ。
モンスターに比べて人の能力は低い、身体能力や頑強さや種類によっては魔力などが人よりも遥かに高い生物だっているし、そもそも存在自体の格が違うドラゴンなどには立ち向かう気にもなれない。
だがそんなモンスターにも人が集まり試行錯誤をすれば能力の高さへの不利を覆えし倒す事が出来るのだ。
だからこそ神は人々に協力して助け合い生きていきなさいと言ってる気がするのだ。
そんな風に考え、献金ついても考えていても仕方ないと思い、シスターの手伝いでもしようと自室から出ると、礼拝堂で祈りを捧げている少女を見つける。
こんな朝早くから祈りを捧げ、祈りの時間も長く、若いのにとても熱心な信者がいた事に嬉しくなり祈りを止めたタイミングで声を掛けた。
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
名称などの実在の地名、企業名、人名、商品名、団体名などとは関係ありません。




