第10話 過熱しすぎは危険です
毎日21:10より投稿します。
よろしくお願いします。
ロガン先輩にどんな説教を喰らうのかと身構えながら話しを聞いていたのだが、聞くに耐えないバカ話しだった。
要約すると自分を何故特別扱いしないのかと延々と語られたり、どれだけ私の事を目にかけて来たと思ってるんだと伝えて来た。
目にかけて来たとか、あれが?と思い押し付けがましいにも程があると言い返したくなったが、ここまで感情的になっている相手に対して、何を言ってもヒートアップさせるだけだろうと思い、ひたすら我慢して黙って聞いていた。
聞くに耐えない話しではあったが、聞き逃せない話しもあり、連絡板に書いたツーショット写真が思いも掛けずに大人気で、撮りたい人達が殺到しているらしい。
現在は、権利をめぐって価格が高騰しているらしく、現在の最高値が金貨十枚にまでなっていると聞いた時には空いた口が塞がら無かった。
そして今は、手持ちのお金が無い隊員が持っている物を売ったりしてどうにか金を作ろうと奔走しているらしい。
中には装備を売ろうとしたり、家を売ろうとしたりと明日からどうやって暮らすんだと言うところで、そこはキャベジ隊長が止めてくれたみたいだ。
こいつらは、仕事をほっぽりだして何をしているんだと頭を抱えてしまった。
正直、事態をどうにかして収拾しないと不味い状況になってしまった。
「そんな事になっているとは知りませんでした。キャベジ隊長は今どちらに居ますか?」
「あぁキャベジ隊長なら連絡板の前に居るはずだ、良いか?事態を収拾させるなら写真の優先権は俺によこせよ?」
そう言われてこいつにだけは絶対に優先権は渡さないと言う誓いの頷きをロガンに見せて、連絡板に急いで向かった。
連絡板があるところに向かうと遠めでも分かるぐらいに人がたくさん居るのが分かった。
その中にキャベジ隊長が居るのを発見した。
「キャベジ隊長!ファリンです!少し話しをさせて下さい!」
するとキャベジ隊長は私を見つけると、すぐさま他の隊員を振り切って私を連れて逃げ出すように人の居ない部屋に入った。
扉を閉めてガチャリと鍵を掛ける、外では怒号の混じった様な声が聞こえてくるが、扉を閉めれば少しは騒々しさも減る。
「ファリンよあれはどう言う事だ??」
と扉の向こうを指差しながらキャベジ隊長に責め寄られたので、私は今までの経緯を伝える。
正直こんな状況になるとは思っていなかったし、見通しが甘かった。
キャベジ隊長にも迷惑をかけてしまったので申し訳なさでいっぱいだった。
キャベジ隊長は私の話しをしっかりと聞いた後に、ある提案をして来た。
今の様な状況ではツーショット写真の値段がインフレし過ぎてしまい、そうなると警備隊が崩壊する可能性がある。
その為にはまずは、この過熱感を冷ます必要がある。
金貨一枚程度だと供給が追いつかないし、みんなの懐事情を見る限りだと金貨三枚にすればちょうど五人ぐらいの応募で済みそうとの事だ。
そして、今回こんな形になったのでジャンヌには写真用の紙を入手出来次第になるが、再度ツーショット写真を撮影する様にお願いする。
そしてそれは希望者が終わるまではやって欲しいそうだ。
これだけ過熱した状態で今回だけなんて言ったら暴動が起きそうだし、そこはやるしかないと思う。
ただ、紙の入手にも時間が掛かるので、それまでみんなが待てるかが心配ではある。
まずはジャンヌが来たら土下座してでも定期的なツーショット撮影会をお願いしなければいけない。
◇◆◇◆◇◆◇◆
警備隊詰所の扉を開け、受け付け窓口の方に行き、朝と同じ様に呼び鈴を押したのだが、誰も来なかった。
何度か鳴らして声も出して呼びかけるも反応が全く無かった。
詰所に人が居ないなんて有り得るのだろうか?何か大きな事件でも起きたのだろうかと、心配になって来たので一度奥を覗いてみようと思い、
「すいませーん、お邪魔しますねー?」
と誰も返事が無いだろうとは分かって居たが、一応言い訳を用意して奥の方に向かって恐る恐る歩きだした。
これで誰かに不法侵入だと言われたら全力で謝るしかないと覚悟も決める。
少し歩き出すと、直ぐに人が集まって居るのを見つける。
そこでファリンとファリンの上司の確かキャベジ隊長と呼んでいた人とで演説の様な事をやっているのを確認した。
もしかしたら今日は、何かイベントごとでもあってみんなで今からレクリエーションでもするのかと感じた。
だとしたら受け付けも放置して随分不用心だと感じる。
この危機管理の無さは、実は警備隊は平和な仕事なのだろうかと思いながら、人混み後方に立ってファリン達の演説を聞こうとした。
だがその目論見は直ぐに外れてしまい、ファリンと目が合ってしまった。
まぁ私目立つからなぁ、本気を出せば気配ぐらいなら簡単に消せるのだけど。
気配を消して警備隊になんて居たらそれが、バレた時にどう言うつもりで、気配なんて消したんだと疑われたくは無かった。
この世界での、魔法の才能を持った人間で、もしもそう言う気配を探る様な魔法を使う事に特化した様な人間が居たらと思うと、下手な事はしない方が良いだろうと思って気配を消す様な事はしなかった。
まぁそんな魔法が無ければ私の才能を持ってすれば、人から認識されない様に行動する事には自信があるのだが。
前世では、劇団員が流行り病で舞台公演が出来ないレベルで人がたくさん休んだ時があった。
公演中止が嫌だった私は、私ならどんな役でも出来るので公演はしましょうと舞台監督に伝えた。
そうして私は一人で何役もやったのだが、その中には黒子役も入っている。
着替えるタイミングも無かったので主役の格好のままに演じたが、誰も私の存在には気付かなかった。
過去にマジシャン役の為に、実際にマジシャンに弟子入りした経験も役立っただろう。
私はその時の経験を活かしてミスディレクションを使い、誰も私に注目をしない様に見事にやり遂げたのだ。
もちろんその時の公演は大成功だった。
だからジャンヌの際立つ美しさであろうが、気配を消せる自信はあるし、今なら幻術魔法もあるのでもっと正確に気配は消せるだろう。
でも今回は、疑わらたく無かったので気配を消さなかった。
それにこの人混みの中ファリンに声も掛けづらいし、気付いてもらえたほうが良いかと思ったと言うのもある。
ただこれだけ人が集まって居るので、何をやっているのか現状把握もしたかったので、少しぐらい気配を消しても良かったかもとは後で思った。
ファリンはこちらに気付くととっさに驚いた声でジャンヌ!と叫んで居た。
その声を聞いたみんなが一斉にこちらを振り返る。
すると先程までは喧騒とした感じだったのが突然の静寂が時を支配した。
私を見て涙を流したり、拝むような人間が目の前に沢山居る。
ファリンはその光景を見て驚いていたが、直ぐに正気になり私の元に来ると、
「こっちに来て!」
と言い、手を引っ張り私を個室へと案内した。
その時にキャベジ隊長が護衛をする様にして、みんなが私達に近づかせないように、睨みを効かせて私達を守ってくれた。
個室に入るとファリンは涙目で私を見つめ、
「お願い助けて、ジャンヌもう貴女しかこの事態を収拾出来ないの。」
と言い土下座をして私に懇願して来たのだった。
キャベジ隊長を見ると、申し訳なさそうにしながらも私の言葉を待っている様だったので、
「ファリン、そんな事しなくて良いから落ち着いて?何があったのか話して貰える??」
と伝えるとファリンはこうなってしまった経緯を涙ながらに説明してくれたのだった。
この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
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