第9話 前の世界とは違うのだ
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よろしくお願いします。
冒険者ギルドを後にし、私はそのまま警備隊詰所へと向かった。
ファリンは任してくれと言っていたが、果たして身銭を切ってまでツーショット写真が欲しい物なのか疑問に思う。
警備隊員の給料がどれほど貰えるものなのかは知らないが、金貨はやはり一般市民に取ってはそれなりに高い、そんな簡単に支払う物では無いだろう。
もちろん必要な物なら金貨を払う人は居るだろうが、日々の生活の為にもお金は必要で、家賃や生活費で殆どが消えてお金が残るようなら、家族なら蓄え、独身なら娯楽に使ったりもするだろう。
娯楽と言っても大した物はないので女なら身飾る物に使い、男なら酒に使ったり、色街に行ったりして使っている。
いくら可哀想な境遇だからとボランティア精神で私の為に写真なんて物に使うにしても、金貨なんて高いし、それこそ金貨を使うぐらいなら男だったら色街に行くだろう。
前世の時にだって金貨の価値が一万円程だと考えたとしてそんな金額でツーショット写真は撮っていない。
なんなら私は無料でも良いと思って居たぐらいだった。
まぁ写真も商品の一つだったので、気軽に撮るといった行為はさせて貰えなかったのだが、と言うよりは値段を付けたく無かったらしい。
その方が相手が勝手に価値を上げてくれるからだそうだ。
モンスターが居るこの世界では、小さな街なら簡単に滅んだりしてしまい、近くにあった街が突然滅びたなんて話しは良く聞く話しで、この街は大きな街ではあるが、突然大規模なモンスターの群れが攻めて来たら明日は我が身かもしれない。
特に警備隊みたいな、仕事では、普通の仕事よりも命の危険は高い。
街の暴漢者を取り締まったり、街に近付くモンスターを駆除したりと荒事も多く、油断していたら死んでしまう。
特に、暴漢者には酔っ払った冒険者や冒険者の資格を剥奪された者など、実戦能力の高い者も居たりするので、対応に当たった者が死亡した例も少なくはないらしい。
まぁそれで警備隊員を殺した者は確実に死刑になるのだから、そうそう手を出そうなんて奴は居ないはずだが、暴漢を行うような奴にはそんな事を考えられるような理性も少ないのは確かだろう。
ファリンに聞いた話しだと、暴漢者を相手にすると分かった時には、普段よりもみんなが緊張しているのが良くわかるらしい。
自分も死にたくは無いし、仲間達を殺されたくもない。
少しのミスで自分も仲間も死に繋がるのだからそうなって当たり前で、私の家に来る時も、誰かが襲われているという通報があったため、緊張感が漂っていたらしい。
まぁそんな世界なのだから写真なんて撮っても意味は無いし、今を楽しく生きられれば良いみたいな人が多いんじゃないかと思っている。
どこかで値下げして、少しでも高く売れたら良いなぁとは思うが、やっぱり討伐クエストで稼ぐしかないかもしれない。
かと言って、討伐クエストも今のランクではそんな高い報酬が貰える物は無いので数をこなすしか無いのだろうけど。
ランクを上げたくてもそう簡単には上げられないだろうし、上のランクに挑戦するなら自分よりも上のランクの冒険者にお願いして、パーティーを組む事で可能だが、冒険者業に専念出来るわけではないし、幻術魔法の才能では、人気が無い為に、中々組ませて貰えないだろう。
いっそのこと、写真撮影だけじゃなくて握手会でもやって金を巻き上げようかとも思ったけど、握手なんかで値が付くのだろうか?と日本のアイドル文化だから人気があっただけでこの世界で受け入れられない気がした。
そう考えると写真撮影もダメなんじゃないかと、どんどん不安になってきたのでまぁ結局はなんとかなるさと気楽に考えては、またいろいろと考えてしまい思考がぐるぐると回ってしまう。
そんな事を考えているうちに警備隊詰所へと着いてしまったので意を決して詰所の扉を開いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
詰所の連絡板を見た時に、ファリンへの怒りの感情が止まらなくなった。
何故連絡板に書く前に俺に一言、報告が無かったのか、報告さえあればこんな騒ぎになんてならなかったのにと思った。
ファリンに対しては先輩隊員として、またファリンが女性だからこの業界で働く以上は、やっかみも強いだろうと思い、必要以上に目を掛けて来た。
男性隊員なら細かい事を言わなくても見る目は変わらないが、女性隊員の少ないこの業界では女性隊員だからと評価が下がってしまうのは明らかだったからだ。
ただ、この連絡板に書いてある内容は決して許せるような話しでは無かった。
俺は、ファリンを見つけると感情のままに声を掛けた。
「おい、ファリン!お前なんで連絡板にあんな事を書いたんだ!」
文句の一つでも言わないと気が済まないと思い俺はファリンに言葉を吐く。
「ロガン先輩すいません、業務とは関係無い事を書いてしまいました。今から消して来ますね。」
そんな返事を期待しているんじゃ無いんだ、何故これだけ気に掛けたと言うのにまず俺に相談しなかったのか、もう書いてしまったらみんながそれを知ってしまったら遅いんだ。
「今さらもう遅いんだよ!どうしてくれるんだ??」
昨夜の事だった、俺の人生で一番の衝撃が走ったのだった。
いや、一番の衝撃が走ったのは決して俺だけでは無かっただろう。
これは過言では無いと言う事は知って欲しい。
警備隊詰所に俺の後輩であるファリンが連れて来たのは、少なく見積もっても女神だった。
こんな事を言ったら神への背信者として教会から認定されてしまうかもしれない、ただ俺はあれ程美しい人物を見た事が無かったのだ。
可愛い人、綺麗な人だと思う人はこれまでも沢山居た。
それこそ色街なんかに行けば沢山居るのだから俺を含めてみんなが通っているのだから分かるだろう。
ただ、みんなが同じ様に思っただろう、そんな奴らが別格に思える程の美を彼女は持っていた。
人から産まれて出来る様な美では無く、人の理想が具現化した様なそんな存在感を彼女は持っていた。
そんな中で、彼女とのツーショット写真を撮れると言う話しを、なんの警戒感も無くみんなが見れる連絡板なんかにファリンは書いてしまったのだ。
何故だと!私にだけ伝えてくれたら彼女とのツーショット写真を、たかが金貨一枚程度で手に入れる事が出来たのにと、そう思ってしまうのは、ファリンと言う後輩の伝手がある以上は、この気持ちを抑える事なんて出来ない。
目の前の宝を簡単に手に入れられるチャンスを、その価値をこの後輩は分かっていないのだ、俺が目に掛けていたのにこの後輩は裏切ったんだ、そんな気持ちが雪崩の様に押し寄せてくる。
みんなが知ってしまっては、この伝手はもう使えないのだ、この伝手を使ってしまえば警備隊詰所に所属する男性隊員全員から袋叩きに会うだろう。
それどころか、彼女の魅力は男女の垣根を超えるだろう、あれだけ妹に人を近づかせないぐらいに過保護なファリンが、家に泊めたのだって普通じゃないし、ファリン以外の女性隊員の反応も普通では無い、彼女はもう警備隊の中だけで言ったら神にも等しい存在になりつつある。
出会って直ぐにこれ程までに崇拝される彼女は、何者なのかと一瞬頭に過ったのだが、そんな事よりも彼女とのツーショット写真を撮れる枠は五人しか居ないのだ。
その事をファリンに対して文句を言ってやらねば気が済まない。
いや気が済む訳ではないがもうこの気持ちを消化する事は出来ないのだから、ファリンに感情ぶつけるしかないのだ。
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この物語は異世界の話しでありパラレルワールドの話しです。
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