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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-518 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜邪教徒の神殿と忘れ去られし怨念〜 scene.2

<三人称全知視点>


 不安げにミレーユを見つめる大切な忠臣ライネ。

 そして、そんなライネの借りるようにして立っていたエメラルダ。


 何がどうしてこの二人が一緒に行動しているのか全く分からないが、ひとまずライネとの再会に安堵するミレーユだが、状況があまりも悪い。

 この場にエメラルダが来てしまったこと、そして恐らく話を聞かれてしまったであろうという最悪の状況に舌打ちの一つも打ちたくなる。


「ライネ……それに、エメラルダさんまで、どうしてこのようなところに?」


「そんなことより先ほどのお話ですわ! ……本当なんですの?」


 ……厄介な方に聞かれてしまいましたわ。


 正直な話ミレーユとしては初代皇帝の意志など知ったことではない。

 例えこの石板の記述が本物で、ダイアモンド帝国初代皇帝がここに書かれているような動機で国を建て上げたのだとしてもミレーユとしては一々それに従ってやる道理はないのだ。


 いつでも甘い物が食べられて、自分はベッドでゴロゴロしていられる生活。

 石の塊に膨大な怨念と共に刻まれた初代皇帝の遺言はミレーユの理想郷、思い描く自分ファーストの未来と明らかに逆行する、断頭台(ギロチン)への片道切符。


 その存在が知られるだけでも、国内外に面倒ごとを振り撒くことは明々白々だ。

 周囲の国々やオルレアン神教会からは今現在も王家と『這い寄る混沌の蛇』と繋がっているのではないかと疑われかねない。そして、その疑惑を正しく晴らすことは不可能だろう。

 「ないことの証明」、即ち「悪魔の証明」は困難を極めることである。それに、実際四大公爵家の中に『這い寄る混沌の蛇』との繋がりがあること圓は証言しているのだ。疑惑の証拠がしっかりと揃っているのだから弁解は不可能に限りなく近い。

 それでも、リズフィーナ達はきっと信じてくれるだろうが。

 それとは別に厄介な問題もある。


 ミレーユにとって、自分の身の回りのものがどのような理由で作られたのかなどという歴史はあまり重要なものではない。

 例え、それがどのような理由で作られていても、それが自分にとって有用なもので問題ないというスタンスだ。


 例え宿敵の断頭台(ギロチン)であったとしても、それが新品で自分に牙を剥かないのであれば固い果実を割って、甘いジュースを得るために使うなんてことを思いつくかもしれない。

 重要なのはなんのために作られたかではない。今、何に使うのが一番役に立つかだ。


 だが、誰しもがそう考えられる訳ではない。

 特にエメラルダを筆頭にダイアモンド帝国の歴史と伝統を尊ぶ貴族達――彼らはダイアモンド帝国の源流にある思想を知ったとして一体どのような考えを抱くだろうか?

 少なくとも、ミレーユのように「こんな害悪な代物、海の中に沈めてしまうのが一番ですわ!」なんてことは考えもしないだろう。


 ミレーユは知っている。エメラルダは貴族の伝統や親の言いつけに縛られがちな人間である。

 それに何よりエメラルダは変なところでチョロいところがある。もしかしたら初代皇帝の権威でコロッと影響を受けてしまうかもしれない。


「そんな……そんなことを、初代の陛下が……。私達の帝国が、このようなことを? 初代陛下の御心を行うために……」


 ふるふると震えつつ石板の文字をじっと読み、虚ろな目でぶつぶつと呟くエメラルダ。

 案の定、権威主義的なところのあるエメラルダは初代皇帝の思想の影響を如実に受けているらしい。

 ミレーユの声もエメラルダの耳には届いていないようだ。


(……ぐぬぬ、わたくしと初代皇帝では、些か不利かもしれませんわね)


 確かにミレーユは皇帝の娘であって至尊の皇帝自身ではない。しかも、エメラルダとは血の繋がりもある、いわゆる親戚の娘なのである。

 「ありがたみ」としては、どう考えても初代皇帝の言葉の方が上だ。


(……ううう、これは、なんとかしなければ。エメラルダさんまで、蛇に傾倒していきそうですわ!)


 ミレーユは今のところエメラルダやグリーンダイアモンド公爵家が『這い寄る混沌の蛇』と親密な関係にあるとは考えていない。

 恐らく、グリーンダイアモンド公爵家と『這い寄る混沌の蛇』の因縁とはティ=ア=マット一族を巡る因縁だろう。


 海の蛇の一族に確かにグリーンダイアモンド公爵家は関わりを持っていた。……ティ=ア=マット一族とは恐らく敵対関係にあるのだろうが、それでも全くの無関係ではない。

 この初代皇帝の極めて迷惑かつ悪質な想いを律義に汲んでいるのは、きっと別の公爵家の者だろう。


 「そもそも、皇女たるわたくしや、お父様さえ継承していないであろうものを、勝手に実現しようとか思わないでもらいたいですわ!」と悪趣味な思想を綿々と受け継ぐ公爵家に一言物申したいところだが、それはさておき……。


 そんな現在は無害なエメラルダであるが、このまま初代皇帝の言葉に影響されてしまうと極めて厄介なことになる。

 オルレアン神教会とエメラルダ達グリーンダイアモンド公爵家の敵対……あるいは、それを火種にしたダイアモンド帝国をも巻き込む争い、勿論あの革命を想起させる地獄も恐ろしいが、それ以上に恐ろしいのは百合薗圓の存在だ。


(……あの方は、「残念だよ。ミレーユ、君ならエメラルダをしっかりと説得してくれると思ったんだけどねぇ」なんて言いつつ、グリーンダイアモンド公爵家の人間を平然と皆殺しにしてしまいそうなんですわよね)


 圓はミレーユ達を愛している。それは、確かに真なのだろう。

 だが、圓は愛しているこの世界の人々であっても敵対するのであれば、後々に自分達にとって不都合な存在になるなら躊躇なく殺してしまう程度には倫理観が壊れている。


 なるべく圓はミレーユの意に沿うように動いてくれるかもしれない。ミレーユ達の幸せを願ってくれるかもしれない。

 だが、エメラルダが闇に堕ちたなら、それが圓達にとって大きな不都合を生じさせるなら圓は確実にエメラルダを殺すだろう。彼女()には彼女()なりの優先順位があるのだから。


 ミレーユは考えなければならない。必死に思考を続けなければならない。

 ミレーユは期待されているのだろう。エメラルダが悪の道に、『這い寄る混沌の蛇』と共に進む未来を選ばないように引き止めることを。

 その期待に応えられなければ……想像するのも悍ましい未来がやってくる。


 どうすべきか。しばしの黙考……直後、ミレーユの脳裏に電流走る。要するに……閃いた!


 ――そうですわ! わたくしの、皇女の言葉が軽いというのならばもっと重要度ステータスを盛ってやればいいのですわ!


 確かに権威では勝てない。けれども、ミレーユには初代皇帝に勝るものがある。

 ――即ち、それはっ!


「ねぇ、エメラルダさん……」


 ミレーユはエメラルダの正面に立ち、そっとその瞳を覗き込む。


「確かに初代皇帝陛下のお言葉は、とても重いかもしれませんわ。わたくしの言葉では……到底敵うものではございません。ですから、言い直しますわ! エメラルダさん、耳を傾けて頂けないかしら? 貴女の……親友であるこのわたくしの言葉に」


 ミレーユの選択、それは自身の皇女という立場に上積みするというものだった。

 「親友(・・)」という要素を。


 確かに、エメラルダは普段からミレーユの親友を公言している人物ではある。しかし、ミレーユはそれを認めたことは一度も無かった。


 別にミレーユはエメラルダのことを親友だと思ってなかったのだから、当然、それを認める言葉を口にする筈が無かったのである。


 けれど、今ここにミレーユは正式に言うのだ。

 「貴女をわたくしの親友ポジションに認定して差し上げてもよろしくってよ?」、と。


 なるほど、確かに初代皇帝の言葉は重い。

 初代皇帝を大切にし、その言葉を守ることは帝国貴族として当然の姿勢なのかもしれない。

 しかし、初代皇帝の言葉に接した時、それをするのは別にエメラルダだけではない。

 他の貴族達もきっと初代皇帝の言葉を尊び、忠実に守ろうとするだろう。……特に保守派の貴族達は。


 故に、初代皇帝の言葉を忠実に守る忠臣というのは別に美味しいステータスではないのだ。至極当然のものに価値などはないのだから。

 しかし、「皇女の親友」というポジション――これは美味しい。


 ミレーユの親友を公言できる人間というのは、物理的にはそう多くはない。

 茶飲み友達は何人もできるかもしれないが、親友は百人できないのだ。

 となれば、どちらのレアリティが上かは考えるまでもなく明らか。


 その上で、ミレーユは言うのだ。

 親友としての言葉の重みを、エメラルダに突きつけるのである。


「初代皇帝陛下がどのような思惑で、帝国を建て上げられたのであろうとそれは些細なこと。それよりも大切なことがございますわ」


「た、大切な……こと?」


「民を安んじて治めることですわ」


 食べたい時に甘い物を食べられる環境を維持する。

 ゴロゴロとベッドに横になっていても、あまり文句を言われずに済む環境を維持するということ。


 自分ファーストなミレーユの理想――黄金郷のヴィジョンにして、真に価値ある未来。

 その未来のためには、民を安んじて治め、平和を維持し、誰からも不平不満が出ない、そんな幸せな国を目指す必要がある。

 自分だけが幸せを維持しても、あの革命のような地獄がフレンドリーな断頭台(ギロチン)の顔をしてミレーユの方へと歩いてくるのだから。


「もしも、ダイアモンド帝国が、そのような悪しき目的のために作られたのだとしたら……今、この瞬間、わたくしがそれを破棄致しますわ!! ……ねぇ、エメラルダさん、初代の皇帝陛下ではなく、わたくしの言葉に耳を傾けて頂けないかしら? 過去の盟約に縛られて初代皇帝に忠義を尽くすのではなく、親友であるわたくしとの友誼を選んで頂けないかしら?」


 そうすれば公式に皇女の親友と名乗ってもいいのよ? と、ゲスいことを考える、やっぱり皇女と呼ぶにはどこか小物臭のするミレーユだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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