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第二十一話 新たな発見

 外はまだ明るい。王城から出るといつも眩しいと思うのは、王城内がいつも暗いからかもしれない。


「ごはん食べようか」


 少し前を歩くニグリスが振り向いた。金色の髪の毛がキラキラと輝いている。そうだった。ここからは二人だけだ。


「うん」


 私は眩しさを理由にニグリスから目を逸らした。


「何か食べたいものある?」


「何でもいいよ」


 女子としてあまりよくない回答をした気がする。


「じゃあ俺が良く行くお店に行こうか」


 ニグリスはすぐに行き先を決めた。こういうところ、男らしいんだよな。


 私はニグリスに着いて街を歩く。ニグリスが連れて行ってくれたのはオシャレなバーといった雰囲気のお店だ。私達はテラス席に座った。


「ここはお酒も飲めるよ」


 ニグリスがメニューを渡してくれた。そうだ。私は初めて会った時に昼から酒を要望したんだった。なんて女の子らしくないことを……。私は過去の自分を恨んだ。


 しかし、ニグリスが気を利かせてお酒の置いてあるお店に連れて来てくれたのだから、ここで飲まないのもおかしなものだろう。私はお酒のページを開いた。


 食事はよくわからなかったのでニグリスと同じものを、お酒は水のような口当たりだというフリー酒というのを注文した。


「座標設定室はすごかったなぁ」


 注文が終わるとニグリスはそう言って改めて瞳を輝かせた。


「そういえばニグリスは座標設定はやらないの?」


「俺はできないんだよね。習ったこともないし」


 ニグリスは少し表情を曇らせた。


「日本研究学校では習わないの?」


 私は不思議に思った。習いそうなものなのに。


「俺は日本研究学校じゃないんだよ」


「え?初等科の後、学校通ったんじゃないの?」


 日本語の仕事につくには初等科の授業だけじゃ足りないから日本研究学校に行くのが必須だと思っていたのだけど。


「通ったよ。でも、俺が通ったのは日本語学校なんだ」


「日本語学校」


 私はその言葉を繰り返した。


「そんな学校もあるんだ?」


「うん。むしろ日本研究学校より学生数は多いよ。日本研究学校は卒業後、王城に勤めるために通うような学校だけど、日本語学校は父さんみたいな新聞社とか日本語を使って仕事をする人が通うんだよ。後は初等科に通えない人が通ったりとか」


「初等科に通えない人が?」


 私は聞き返した。それって貧しい人達ってことだよね?


「そう。日本語学校はカリキュラムが選べるから、日本語基礎だけ受けるなら貧しい家庭でも可能なんだよ。奨学金制度もあるし」


「奨学金制度!?」


 私は身を乗り出した。


「うん。保証人がいないとダメだから、卒業後の進路を決めて、その雇い主に保証人になってもらえれば可能なんだ」


「なるほど」


 それならリプロートでも通える。卒業後の進路を決めてさえしまえば。

 先ほどスニロッサから聞いた外部研究員。そして奨学金で日本語学校。可能性がいろいろ見えてくる。


 料理とお酒が運ばれてきた。料理はお肉を野菜で巻いて食べるような手軽なものだ。何肉なのかは考えないようにしておこう。お酒を口にすると本当に水のような口当たりでお酒だとは思えない程だ。


「さっきスニロッサさんにも聞いてたけど、何か悩みでもあるの?」


 黙りこんでしまった私にニグリスが声をかけてくれた。


「あ、うん。保健室登校してる七年生、知ってる?」


「リプロート、だっけ?」


「うん。その子が日本研究員になりたいんだけど、異世界召喚能力が発現しなかったんだ。だから、どうしたら日本研究員になれるか考えてて」


「なるほどね」


 ニグリスは何故かふふっと笑った。私が首をかしげると、


「やっぱり佳菜は先生に向いてるよ」


 と、言ってくれた。ニグリスにそう言われると嬉しい。


「でも、あんまり一人で抱え込まないようにね」


「うん」


 一人で抱え込むと日本での職場みたいなことになるかもしれない。今まで私は誰かに頼るということをしてこなかったけれど、今は少し変わり始めていることを感じている。


「でも……そうかぁ、召喚能力がなくても日本研究員に、ねぇ」


 ニグリスは表情を真剣なものにして頭を捻らせた。


「リプロートは日本研究の何をやりたいんだろうね?」


「何を?」


「例えば鏡を見て日本の姿を見てそこから研究したいのか、それとも召喚したものを研究していきたいのか、さっき話が出たみたいに作物の種子などを育てる研究をしたりとか」


 日本研究の何をしたいか、何て考えたこともなかった。確かにリプロートは日本の何に魅力を感じて研究員になりたいと思ったんだろう。


「今度聞いてみる。ありがとう」


 ニグリスのおかげで気がつくことができた。一人で考えるより大人数で考えたほうが良い。私はリーダーになってから特に仕事で誰かに相談したことがあっただろうか。自分の考えがいつも正しいと信じて周りを振り回してきただけだったのかもしれない。


「リプロートの興味関心が他の仕事で補えることなら進路を考えなおした方がいいかもね。もし王城に行くことができても召喚能力がなくて辛い思いをし続けることになるかもしれないから」


 確かにそうだ。王城で日本研究をするなら召喚能力がないことがネックになってくる。それを日々感じながら仕事を続けるのは精神的に辛いものがあるだろう。


 あんまり何も考えていないように見えるニグリスなのに、こんなに広い視野で物事を見ることができる人なんだな。一緒にいるとどんどん魅力が見えてくる。キラキラして眩しくて直視できない。こんな素敵な人とどうにかなろう、なんて私に希望はあるんだろうか。

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