第二十話 まずはお仕事!
私とニグリスは言葉少なく歩いて王城へ着いた。王城では今回の課外授業をサポートしてくれる研究員が待っていた。褐色の肌の男性が愛想よく出迎えてくれてまずは会議室に案内してくれた。そこでスニロッサと名乗った褐色の研究員に私とニグリスは課外授業の流れを聞く。
まずは広間で挨拶と当日の流れを説明し、図書館に移動。そこで一時間の自由行動。生徒達は思い思いに本を見ることができる。そして最後に鏡の座標設定をする部屋に移動。日本研究員による座標設定の様子を見学して終了だ。
私が聞いてもなかなか面白そうなプログラムだ。
「それではこれから図書館と座標設定室を見ていただきたいと思います」
私達は連れ立ってまずは図書館に入った。そこは日本のそれと遜色ないくらいの広さだった。たくさんの本が置いてある。私達は少し図書館内を歩いた。
置いてある本は様々だ。小説やライトノベル、専門書。日本の図書館と違うのは漫画の充実っぷりだろう。私でも知っている漫画もたくさんある。ただ、やはり召喚してきているので続き物の漫画は途中が欠けていたり、逆に一巻が三冊くらいあるものもある。
雑誌もたくさん置いてある。週刊誌、ファッション誌、旅行の雑誌など多種多様だ。ずいぶん古いものまで大切に保管されている。
新聞も量が多く保管されている。異世界召喚は大きい物が取りにくいと聞いているし、ゴミ捨て場から取るのであれば新聞が多いのもうなずける。
逆に分厚い図鑑などは数えるほどしかなかった。
リプロートがここに来たら喜ぶだろうな、と思う。一時間じゃ時間が足りないくらい魅力的な場所だろう。
図書館の視察を終えて、次は座標設定室に移動した。そこでは何人もの研究員が大きな鏡の前の椅子に座っている。そこには様々な場所が映しだされている。そこから物を召喚できそうな場所(=ゴミ捨て場など)を探して座標設定するらしい。ここではニグリスが興味深そうに瞳を輝かせていた。
「佳菜」
そこで私に声をかけてきたのは美人でお馴染み、ピュオーラだった。まさか出会うと思っていなかったが、よく考えたらここは王城なのだから当たり前だ。
スニロッサも慌てて頭を下げている。さすが大物。
「ちょうど良かった。この前指定された場所の座標設定が終わりました」
世間話はすっ飛ばしてピュオーラはやはり要件をすぐに切り出してきた。
「ありがとうございます」
私はピュオーラから鏡を受け取った。
「ここは京都というのですね。この辺りの研究は進んでいなかったので研究対象としても大変貴重な座標の情報をいただきました」
ピュオーラから頭を下げられた。
「新たに設置した座標に異世界送還を行いますか?」
「そうですね……」
私は鏡を見た。一応会社には親宛の手紙を残しておいた。それで十分だとは思うが、少し様子が見たいのでお願いしたのだ。
「もしかしたらお願いするかもしれませんが、その時はまたご連絡しますね」
「わかりました」
ピュオーラは一礼して私達の前から去っていった。
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「本日はありがとうございました」
私達は王城の出口でスニロッサと挨拶を交わした。
「最後に何か質問等ありますか?」
スニロッサに笑顔で尋ねられた。研究員の割に愛想の良い人だ。だからこそ担当に選ばれたのだろうけど。私は少し悩んでこう尋ねた。
「今回のこととは関係がないんですが、スニロッサさんは異世界召喚の能力があるんですか?」
ニグリスがチラッと私を見た。
「はい、もちろんです」
スニロッサは笑顔だ。もちろん、ね。
「王城には異世界召喚のできない研究員はいないのですか?」
「異世界召喚のできない研究員ですか……」
スニロッサは少し首を捻らせてから、
「思いつく限りはいないですね」
と、答えた。
「そうですか」
やっぱり難しいんだろうか。
「ただ、外部研究員ならおりますが。例えば初めて見る種が召喚できた時に外部研究員の農家に預けて育成の研究をしていただいたりとか」
「なるほど」
確かにそれなら異世界召喚の能力は必要なさそうだ。外部研究員、か。そういう手があったか。
「ありがとうございました」
私は不思議そうな顔をするスニロッサにお礼を言った。
「当日宜しくお願い致します」
私達は挨拶を交わして王城を後にした。




