表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/49

青き馬、GⅠの舞台にて

今回は短めで掲示板要素あります

『マオウが勝ってしまったか……』

朝日杯FS──阪神1600m──を1分28秒1という世界レコードを遥かに上回るタイムで駆け抜けた勝者マオウ。そのタイムを見た競馬関係者達は震えていた。

「も、モンスターだよ。砲丸投げで一人だけソフトボール投げをしているような化け物だ」

「朝日杯FSにでなくて良かった」

関係者達から次々とそのような声が上がる理由はマオウが出したタイムにある。この1分28秒1というタイムはどれだけ異常かというと、それまでの世界レコードが1分30秒台後半であり、もし一緒に走っていたとしても大差をつけられている。つまり全世代の競走馬達が束になっても敵わないタイムを、高校生くらいの年齢に相当する馬が出してしまったということだ。

もっと具体的な例えだと、高校野球の投手が球速175km──ちなみに世界最速は球速170km──を出すようなものである。

ぶっ飛び過ぎて何を言っているのかわからない。それだけのことをマオウはしてしまったのだ。


『あんなのに弱点なんてねえぞ? 強いて言うならマイルに適性があるとしか推測出来ない。それも希望的観測だからスタミナがあったら……無理だ』

弱気になってしまったボルトに襲いかかるのは、マオウの姿をした大魔王がボルトを踏み潰すイメージだった。

『ダメだダメだ! 俺はマジソンにも勝てる。だからあいつにスタミナで負けることはねえ!』

現役の最強ステイヤーと言えば、マジソンティーケイと答える競馬関係者は多い。春の天皇賞連覇に加え、2400m以上のGⅠは5勝もしている。そんな馬にボルトは3000mの模擬レースで先着しているのだ。スタミナがない訳がないと自負して、打倒マオウに向け思考する。

『マオウの恐ろしさはどんなところからでも追い込んで豪脚一閃、つまり並ばせる暇を与えないことにある訳だ。逆に言ってしまえば並走すればマオウは怖がるんじゃないのか?』

「馬鹿なこと言ってるなお前は」

ボルトの独り言に反応したのは武田だった。

『おっさん……』

「ついさっき、マオウの併せ馬で並走しているところを見てきたんだが、闘争心が凄すぎて逆に併せ馬の相手になった古馬がパンクしたよ」

『パンクって……故障か!?』

「いや今度の馬はアイアンホースと呼ばれる馬達、それも短距離の馬三頭がマオウに対してリレー方式で併せ馬したから、ただ全力で走り過ぎて倒れただけだ。しばらくしたら疲労も回復したから競走馬としてやっていく分には問題ない」

『それでもそんな風になるのか』

「まあな。そのくらいのことを仕出かす馬だ。ベネチアライトのことを忘れたのか?」

ベネチアライト。かつてマオウが潰した馬の一頭で、弥生賞に出走したが、マオウと併せ馬をしたことによる疲労が原因で大惨敗して引退してしまった馬だ。トロピカルターボと共にクラシック最有力候補の一頭だった。

『確かに……』

「まあそういうことだ。あいつの相手をするのはアイアンホースでもキツいってことだ。だけどお前だってマジソンやミドル相手に似たようなことをしているんだ。自信を持て」

『そう言えばそうだったな』

武田によってボルトが励まされ、ホープフルSを迎えた。



ホープフルS当日


中山競馬場。かつてこのレースはラジオたんぱ杯と呼ばれる重賞レースだった。マジソンの母父メジロブライトや、マジソンの父シンキングアルザオの最大のライバルであるアグネスタキオン等後にGⅠを勝つ馬がここを勝利した。

だがしかし朝日杯FSは無敗の二冠馬であるトキノミノルとミホノブルボン、ボルトの父アイグリーンスキーの同期の三冠馬ナリタブライアン等、現三歳クラシックを二勝以上あげる馬が多数いるのに対して、ホープフルSはドラグーンレイトのみであった。


【さあボルトチェンジ、独走体勢に入った! もう言葉はいらない、もう言葉はいらないぞ】

そのレースの最中、ボルトは非常に苦しめられた。

『わ、笑い死ぬ……』

そう、ボルトと同じ出走馬であるディープブリブリテが原因だった。ディープブリブリテという名前がツボに入り、大爆笑してしまい以降笑わないようにしていたが我慢するほど笑ってしまい、全力を出せないでいた。しかしそれでも独走するあたりボルトもマオウ同様に優れた競走馬である。

【ボルトチェンジ一着でゴールイン! お見事、一番人気に答えました……おっと、そのボルトチェンジですが何かあったのでしょうか?】

実況がボルトを見ると、ボルトがウイニングランを止め横たわっていた。

「どうした!?」

騎手の橘がボルトの異変に気がつき、その場を降りる。そしてボルトの声を聞いて安堵した。

『お、可笑しすぎて腹が捩れそうだ……なんだよ、ディープブリブリテって』

「なんだ……そういうことか。表彰式に出られるか?」

『それまでに戻す……くくく』

「表彰式までにはそれ止めておけよ?」

ボルトはそれに頷いた。


「いやぁ、お見事でした。橘騎手。今回は強い競馬を見せてくれましたね」

「いやいやまだまだ課題があります。今回のボルトはさほど調子が良いとは言えませんでした。先日のマオウと今日のボルトどちらか強いかと言われたら間違いなくマオウですね」

「調子が良ければ?」

「聞くまでもないでしょう」

「ソノ通リダ」

ボルトが京王杯二歳Sのように割り込み、答える。京王杯二歳Sと違うところがあるとするならボルトがさらに饒舌に答えているところだろう。

「え?」

「待ッテイロ、マオウ。オ前ニハ絶対ニ負ケネエ」

ボルトが立ち去り、唖然とする取材陣。

しばらくして硬直がなくなると取材陣があわただしく動いた。

「な、なんとぉーっ! 文字通りボルトチェンジがマオウに宣戦布告しました!」

この事態に各メディアやインターネット上では大騒然する事態となった。




【ヤラセ?】ボルトチェンジ氏、インタビューで割り込みマオウ氏に口頭で挑戦状を叩きつけた


1:お前らこれ信じられる?



2:いやいやないでしょ? 馬の体の構造上喋るのは無理だぞ? 声優かなんか雇っていたに違いない



12: ≫2 声優だけど同業者の中であんな声聞いたことない。あんな特徴的な声だったら覚えている



21: ≫12 ファッ!?



22:ところでボルトチェンジってどんな馬なん?



25:父がアイグリーンスキー、母アルパナ、母父キングカメハメハの超良血馬やで。



29: ≫25 改めて見るとすげえな。父親はちと古くさいステイヤーだが



36: ≫29 リーディングサイアーのシンキングアルザオはコテコテのステイヤーやけど



56:ボルチェンの強さわからんから、誰かボルチェンの動画貼ってクレイジー



62:つ『ボルトチェンジ京王杯二歳S、インタビュー込み』『ボルトチェンジホープフルS、インタビュー込み』



65: ≫62 サンガツ



73:ホープフルSもそうだが京王杯も強くね? あんなラストスパート早くて最後まで持つ馬ってゴルシくらいじゃない?



78: ≫73 マジだ。スパートがめちゃくちゃ早えw



82: 結局ボルチェンの声はどうなん? ヤラセなん?



86: ≫82 今、ボルチェンの関係者達全ての声を解析したけど違かった



89: ≫86 有能すぎワロタw





以降も掲示板は続く……

ブックマーク登録、評価をしていただけると作者のモチベーションがうなぎ登りになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ