青き馬、取材を受ける2
ようやく更新出来ました……しかし凱旋門賞も天皇賞秋も美味しかったです。
有馬記念。リセット等多数の有力馬がいないグランプリレースだが、それでもまだ有力馬は残っていた。
ラストダンジョンとクラビウスの二頭に、三歳クラシックのトライアルのレースを勝ち抜いてきた馬達だった。有馬記念直線でも二頭が叩きあいが繰り広げられる。それはかつて1977年の有馬記念のトウショウボーイとテンポイントの二頭を再現しているようだった。
【二頭の一騎討ちだ、サードメンタルとクラビウス、クラビウスが迫る、サードが逃げる、大外からラストダンジョンっ! 一着はサードメンタル! 二着は半馬身遅れてクラビウス、三着はラストダンジョンです!】
一着は三歳馬サードメンタル、二着は去年の菊花賞馬クラビウス、三着はラストランのラストダンジョンが入り有馬記念と今年の競馬は終わった。
そして年末。
最優秀二歳牡馬 マオウ(BCジュヴナイル、朝日杯FS)
最優秀二歳牝馬 ミドルチェンジ(阪神JF)
最優秀三歳牡馬 トーマ(NHKマイルC、安田記念、香港マイル)
最優秀三歳牝馬 リセット(牡馬三冠、JC)
最優秀四歳以上牡馬 ドラグーンレイト(ドバイシーマクラシック)
最優秀四歳以上牝馬 ガールズハート(ヴィクトリアマイル)
最優秀短距離馬 トーマ(NHKマイル、安田記念、香港マイル)
最優秀ダート馬 マオウ(BCジュヴナイル、朝日杯FS)
年度代表馬 リセット(牡馬三冠、JC)
年度代表馬を決める表彰式が行われ、マオウは2歳馬ということとGⅠ勝利数が2勝ということもあり、年度代表馬には選ばれなかったがボルトを押さえての最優秀二歳牡馬に選出された。そんなマオウに立ち塞がるのは三歳古馬混合のGⅠレースを食いつくしたリセット達20世代であった。
しかしあることが原因で話題は大きく変わった。スポーツ新聞はおろか、特番が組まれボルトチェンジは大きな話題になっていた。遠近感が狂ってしまう程に雄大な馬格──体重が国内GⅠ勝者としては最高体重──に加え、ボルトチェンジが不特定多数の人間と意志疎通が出来るということ、そしてそのボルトチェンジがマオウに挑戦状を叩きつけたことが原因だった。
「こちらがそのボルトチェンジになります」
「ドーモ、宜シク」
「さてボルトチェンジさん。宣戦布告したマオウについてですが今アメリカのクラシックレースに出走する予定らしいのですがどう思われますか?」
「奴ガ米国三冠ヲ制シヨウガカマワネエ。その時ハJCヤ有馬記念デ決着ダ」
「もしその前に引退してしまったときは?」
「GⅠノ勝利数やレコードノ数デ勝負スル。奴ガ作ッタレコードも俺ガ塗リ替エル」
「そう言えばボルトチェンジさんの今後のレースはどうするのですか?」
「基本的ニハ日本ノ三冠レース、皐月賞、日本ダービー、菊花賞ト、ソノトライアルレースダガ状況ニヨッテ変ワルト聞イテイル」
「聞いている?」
「テキ──調教師のこと、この場合武田晴則こと武田調教師──ノ方カラ聞イタカラソッチデ詳シク聞ケル」
「JCや有馬記念で決着を着けるとのことですが、現役最強のリセットやアブソルート等多数の競走馬も蹴散らすということで違いないんですか?」
「当タリ前ダ。ダガ、マオウハ現時点デ世界最強ダト俺ハ思ッテイル。マオウサエ倒セバ自然ト蹴散ラセルダケノ話」
「それでは最後にボルトチェンジさん、視聴者の皆さんに向けて一言お願いします」
「他ノ皆サンニハ申し訳ナイガ、俺ハ勝ツ。ソシテ三冠馬ニナッテ、マオウニモ勝つ!」
「ボルトチェンジさん、ありがとうございました。それではまた次回お会いしましょう」
取材が終わると、そこに現れたのは諏訪だった。
「諏訪チャン、何か用カ?」
「お前、俺のことをそんな風に呼んでいたのか……それにしてもこうしてコミュニケーションが取れるのは嬉しい限りだ」
「諏訪チャン、インタビューはアレで良カッタノカ?」
「まあいいと思うぞ。それでだ。お前の食事について何か要望ないか?」
「たんぱく質ノ多イ大豆ヲ大盛頼ム」
「ダメだ。スプリンターならともかくクラシックを歩む以上お前が無駄に筋肉つける必要はない」
スプリンターつまり短距離馬は速筋が発達しており、筋骨隆々である。タニノギムレットがスプリンターのような体型と言われたのもここに由来している。
「シービー、ルドルフ、マックイーン……イズレモマイラーと言ワレタ馬ダガ?」
ボルトの言う三頭はミスターシービー、シンボリルドルフ、メジロマックイーンのことであり三頭共に1600mの二倍弱の距離である菊花賞を制している。つまり彼らはマイラーでありながら長距離の菊花賞を制するスタミナを持っていた。
「お前は既にスピードはあるんだ。これ以上スピードを上げても史上最強の短距離馬にしかなり得ない。マオウがいない以上2400m以下の変則三冠レース──皐月賞、NHKマイルカップ、日本ダービー──はスピードを上げるまでもなく楽勝だ」
「……本当ダロウな?」
「ああ、少し気になるのはいるが余程のことがあっても鼻差で勝てる」
「鼻差ハ少し不安ダ」
「なら俺の言うことを聞いておけ。俺は自分自身の減量は下手くそだが馬に関する調整には自信がある。マジソンやミドル共に万全だっただろ?」
「ソレデモ勝てナイ時ハあるケドナ」
「マジソンはともかくミドルは仕方ない。マオウは桁違いだ。競走馬時代全盛期のディープインパクトに種牡馬生活を送っているフェノーメノと競走させるようなものだ」
「八百長ジャネエカ!」
「だろ? それくらい差があったんだ。マオウ陣営以外が朝日杯FSに出走する決意をしたのが不可解な位だ」
「……」
「でだ、調教が終わった後はこの動画を見ることになった」
「動画?」
「歴代の名馬達のベストレース特集だ。クリフジからリセットまである。この動画を見てお前のレースを確立させる」
「ソレハ武田ノオッサンノ役割ダロウ?」
「あの人にもある程度報告している。後はお前がやるだけだ」
「面倒ナコトヲ……ダガ、レコードを更新スル為ノスピードも速クシタイカラ頼ムゾ」
「善処する。ほら左前脚を出せ、掃除してやる」
この後ボルトは諏訪に滅茶苦茶綺麗にさせられた。
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