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青き馬、三冠馬の意地を見る

そして時は流れ、JC当日。

【さあ、史上最強のJC出走馬達の本馬場入場です】

そのアナウンスの直後に本馬場入場が始まる。

【一枠一番、ドラグーンレイト。単勝オッズ15倍の三番人気。本来であれば間違いなく、一番人気のプレッシャーを背負っており、打倒レジェンド達の筆頭候補です。】

ドラグーンレイトが入場するだけでも既に東京競馬場にいる大観衆の声が響く。それだけドラグーンレイトのファンは多いのだ。

『15倍……! 去年の年度代表馬がそんなに期待されていないのか? いや、あいつらのせいか。』

【その隣に一枠二番、アブソルート。無敗で欧州三冠を制した欧州史上最強馬の君臨です。単勝オッズは2.5倍。現在二番人気です。】

あいつらその一、アブソルート。欧州競馬史に残る伝説が態々JCに出走してきた。JCは一時期海外馬が勝てなかったがカルシオが勝って以来連対に入るようになった為にJCの舞台で一流の外国馬達が出走するようになった。

【更に歓声の声が響き、入場するのは二枠三番リセット。僅か5戦で日本史上最強馬となった伝説。果たして止められるものはいるのでしょうか!? 単勝オッズは脅威の1.5倍。一番人気です!】

あいつらその二、リセット。牝馬がダービーを制したのは三冠馬よりも少ない上に牡馬三冠はおろか牝馬三冠すらも無敗で制している牝馬はいなかった。そんな状況の中でリセットが制した。それも全て大差勝ちというおまけ付きでだ。故に観客達がこの史上最強馬を見に来るのは必然の事である。


そしてリセットの登場後に現れたのはボルトの相棒が騎乗している馬であった。

【無敗の三冠馬二頭の登場の後にやってくるのはかつてのダービー馬。ラストダンジョン。今年のJCでは穴馬扱いですが例年通りならば有力馬の一頭になっていた事でしょう。単勝オッズは47倍の5番人気です】

『……47倍ってアホか? 何をどうしたらそうなるんだ?』

ボルトが思わずそう毒づいた。このラストダンジョンという馬は時代が違っていたら三冠馬になっていたかもしれないほどの名馬であり、去年の古馬中距離路線ではマジソンを凌いでいた。それだけにこの穴馬扱いにボルトは納得がいかなかったが、7番人気よりも人気がない他の馬達が万馬券となっていたのでダンジョンが穴馬になってしまうことに理解をしてしまった。


そしてしばらく間が空き、白い馬体が姿を見せる。

【白く美しい馬体を見せてくれるのは6枠11番。マジソンティーケイ。去年この舞台を制し去年度の最優秀四歳以上牡馬に輝いた芦毛の魔術師はどんなレースを魅せてくれるのでしょうか? 単勝オッズ39倍。4番人気です】

ボルトの同厩舎のマジソンは天皇賞秋をステップレースにしてこのJCに挑んだ。それ故に無駄なものは剃り落とし馬体を光らせており、筋肉がみなぎっている。パドックの時に気づいた馬券師達が慌てて駆け出していたが後の祭りである。

『マジソンの野郎、このJCがベストレースになるんじゃねえのか?』

ボルトの呟きと共に次の馬が入場してきた。その馬はドラグーンレイトが菊花賞に出ていたとしても勝てなかっただろう言わしめる程強い競馬をしたクラビウス。その菊花賞以後は大阪杯と京都大賞典しか勝っておらず、得意距離であった天皇賞春はマジソンやダンジョンに負け、宝塚記念や天皇賞秋ではその二頭に加え3歳馬にも負けてしまう有り様だった。クラビウスを破った3歳馬達はいないが代わりにいるのはその遥か格上のリセットである。

【6枠12番は最後のステマ配合、クラビウス。ドラグーンレイト世代の菊花賞馬がどのようなレースをするのでしょうか? 単勝オッズ68倍。6番人気です】

『おいおい、メルボルンカップとかに出走した方が良かったんじゃないのか?』

メルボルンカップ。それは海外で行われる長距離レースの一つであり天皇賞春ほどではないが格が高く、世界でも最強のステイヤー達が集まるレースでもある。クラビウスは去年の菊花賞を勝っているため出走登録してそちらに遠征した方が良いと考える者も多くボルトもそのうちの一人であった。


【さあ各馬ゲートに入り狂気の大歓声が鳴り響くこのレース、一体誰が勝つのでしょうか。JCスタート!】

『何っ!?』

ボルト、いやそのレースを見ていた全員が騒然とした。その多数は悲鳴を挙げ、馬券を投げ捨て残りの少数は武田と同じように笑みを浮かべた。

【何とリセットとアブソルートが出遅れ、場内に悲鳴が響く! 逆に好スタートを切ったドラグーンレイトがハナに立っています】

『アブソルートはともかくリセットが出遅れた?』

リセットが出遅れる。この事態に観衆が阿鼻叫喚し、馬券を捨てるものが多数。それだけ逃げ馬が出遅れることは致命的だ。

【続いて二番手にマジソンティーケイが後方との差を離し、先行集団。そしてクラビウスが一頭続いて差し集団。最後に追い込み勢のラストダンジョン、アブソルート、リセットと続いています】

『リセットとアブソルートがあそこにいたんじゃ奴等は徹底的に勝つ戦法よりも負かす戦法に切り替えるな』

ボルトがそう評価すると差し集団がリセットとアブソルートを覆うようにペースを落とし、後退していく。だがその瞬間リセットの走りが徒歩に変わった。

【あーっと! リセットに故障発生か!? ズルズルと後退していきます!】

『なんだと!?』

そしてリセットの脚が完全に止まった。

【リセットに故障発生! さあ現在の先頭はドラグーンレイト】

リセットが故障発生した。そのアナウンスが流れ次の実況をしようとした瞬間、別の歓声が響いた。

【おっとこの歓声はなんだ? ……なんと言うことだ! リセットが大外で走っています!!】

『なにいっ!?』

【リセット復活、復活! 物凄い勢いで後方集団を交わし、先頭から五番手あたりまで戻りました!】

『オルフェーヴルかマルゼンスキーかお前は!?』

かつての三冠馬オルフェーヴルは阪神大賞典の最中引っ掛かり過ぎて走るのを途中でやめてしまい、外ラチに寄っていってしまったが他の馬を見かけるやいなやすぐさま元に戻り、遅れを取り戻そうとし、二番手まで上がっていった。当然負けてしまったがあのハンデがありながら二番手のままゴールしたという強さを見せつけた。

マルゼンスキーも似たようなことをしており、逃げていたにもかかわらず何故か失速し、その後また加速し一着でゴール。マルゼンスキーが何をしたかったのかは不明だがその強さを証明した。


つまりリセットも同じようなことをしたのだ。当然騎手である柴又は注意を受ける。リセットにとってもかなり不利な状況であることには違いない。


【残り600mを切って、ここで仕掛けて行ったマジソンティーケイ、そしてそれに合わせるようにリセットが上がっていく! そして先行集団を掻い潜ってきたクラビウス、ラストダンジョン、そしてアブソルートがゴール目掛けて飛んできた!】

『役者が揃ったか……』

【去年の有馬記念とは違うぞ、違うぞ。マジソン来た、マジソン来た! マジソンティーケイが先頭に立ってリセットとクラビウスが襲いかかってきた! 大外にはラストダンジョンとアブソルートが来ている】

『なるほど、アブソルートをマークしていたのはラストダンジョン。ドラグーンレイトはいつも通りのレース。それ以外はリセットをマークしていたってことか……』

【残り300mを切ってドラグーンレイトとラストダンジョンが失速して四頭のサバイバル、いやマジソンが失速したか?】

『くそっ、マジソンいけや! あの二頭はともかくクラビウス相手に負けるてめえじゃねえだろうが!』

【マジソンは脱落、リセット、アブソルート、クラビウース、三頭の叩き合いだ。マジソンもラストダンジョンもドラグーンレイトも来ないまま三頭並んでゴールイン! 四着争いにマジソンティーケイ! レコードの決着となりました……】


『マジソンがあの二頭はともかくクラビウスに負けるなんてな……何があった……!?』

ボルトがTVを見るとドラグーンレイトの騎手が下馬し、ドラグーンレイトを労っていた。

【おっとドラグーンレイトに故障でもあったのでしょうか? 織田騎手が不安そうにドラグーンレイトの様子をうかがっています】

『その上、6着に入ったドラグーンレイトも故障。後は写真判定でラストダンジョンに先着していることを祈るだけだ』

ボルトがそう祈り、15分経過するとその結果が返ってきた。

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